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アマダスクール「第36回優秀板金製品技能フェア」の受賞作が決まる

2024 年 03 月 19 日

 職業訓練法人アマダスクール(神奈川県伊勢原市、理事長・福井幸弘)は3月9日に、第 36 回優秀板金製品技能フェア(以下、技能フェア)の受賞作品を発表すると同時にアマダ本社に隣接する「フォーラム246」で表彰式を行った。
 選考は日本塑性加工学会会員、シートメタル工業会役員や各審査委員のほか、株式会社アマ ダ(神奈川県伊勢原市)の優秀板金製品技能フェア会場見学者とオンラインによる投票で行われ、 投票総数 1960 応募総数 281 点の中から技能賞以上の優秀作品 73 点が選ばれた。

職業訓練法人アマダスクール 福井幸弘理事長

 表彰式の開催にあたり福井幸弘理事長は「板金技能者の育成と交流を図るために 1989 年から始まった“優秀板金製品技能フェア”は、今年で 36 回目となる。今年は応募総数 281 点(国内 184 点、海外 16 ヵ国 97 点)となり、過去最大の点数。投票も従来の展示してある製品を見て投票する方式に加えてWEB方式も採用して 1960 票を超えた。世界各国からの参加も増え、グローバル化が進んでいると思っている」とこれからの展望に期待を込めた。

■優秀板金製品技能フェアとは
 技能フェアの応募部門は「単体品の部」、「組立品の部」、「溶接品の部」、「造形品の部」、「学生作品の部」の5部門。それを表彰するのは上位7賞に加えて各部門グランプリと技能賞など多彩。詳細を説明することが目的ではないので、応募5部門と表彰7件+αが、縦糸と横糸の関係となって技能フェアを構成していることを指摘しておく。
 表彰は、全ての製品の中から特に優れた製品に「厚生労働大臣賞」、「経済産業大臣賞」、「神奈川県知賞」、「中央職業能力開発協会会長賞」、「日刊工業新聞社賞」、「日本塑性加工学会会長賞」、「海外最優秀作品賞」が贈られる。また、学生作品の部を除く4部門の優秀作品には「グランプリ」、学生作品の部には「金賞」、「銀賞」、「銅賞」が贈られる。特に「厚生労働大臣賞」と「経済産業大臣賞」は技能フェアの両横綱的存在で、広報も大きく扱う。

■ 応募作品の内訳
応募総数 281 点(国内 184 点、海外 97 点)
(部門別応募数)
「単体品の部」 108 点/「組立品の部」 74 点/「溶接品の部」 26 点/「造形品の部」 50 点/
「学生作品の部」 23 点
海外応募作品の国別内訳(全 15 ヵ国1地域 97 点)
中国 18 点/アメリカ 12 点/ドイツ 12 点/インド 9点/イタリア 9点/スペイン 8点/フランス 7点 /台湾 5点/韓国 5点/タイ 4点/ポーランド 2点/U.A.E 2点/スロベニア 1点/イギリス 1点/南アフリカ 1点/スウェーデン 1点

■受賞作品とその講評
 各賞の表彰のあとに運営委員会の高橋進副委員長による各受賞製品の講評が行われた。各賞の選考基準と受賞作品とその講評を紹介する。

(1)厚生労働大臣賞は「最高度な熟練技能・手法を用い、品質・精度のきわめて高い作品」に贈られる。

厚生労働大臣賞 「DNA~融合」 株式会社佐藤医科器械製作所(滋賀県)

講評:一見すると6点の部品に見えるが実は1枚の板から作られている。製品のコンセプトと技術が融合した作品。

(2)経済産業大臣賞は「最高度な加工技術・手段の開拓など、その成果が板金業界に広く貢献すると思われる作品」に贈られる。

経済産業大臣賞 「ナビ、リレー」株式会社アイキ(大阪府)

講評:指先に乗っている2mmの製品。0.1 mm厚の素材を切断して曲げ加工している高い技術が評価された。

(3)神奈川県知事賞は「将来の製品化に期待が持てるアイデアや考え方、技術・技能が含まれている作品」に贈られる。

神奈川県知事賞 「不落のバランス」ナサ工業株式会社(福岡県)

講評:この作品でイメージしたのは“金の鯱”でしょう。一点で支えているので弥次郎兵衛のようにバランスをとっているのでゆらゆらと揺れる。CADで重量計算までして、そのCADの使い方も評価された。

(4)中央職業能力開発協会会長賞は「卓越する技能を用い、独自の手法を開拓したと思われる作品」に贈られる。

中央職業能力開発協会会長賞 「瓢箪ランプシェード」 リューユウ工業株式会社(福岡県)

講評:やわらかい曲線でやさしいスリットで構成されている。1mm厚の板を5mm間隔で並べ、そのあとにスプリングバックを織り込んで成形している。

(5)日刊工業新聞社賞は「技術水準・独創性が極めて高く、業界の発展に貢献するものと思われる作品」に贈られる。
「車両用ラジエーターアッパー試作品」有限会社山内エンジニアリング(神奈川県)
※こちらの写真は都合により割愛する。

(6)日本塑性加工学会会長賞は「特に高度な曲げの技術・技能を用いた作品」に贈られる。

日本塑性加工学会会長賞 「厚板の丸め成形品」有限会社原プレスエンジニアリング(神奈川県)

講評:3.2 mmの鋼板をプレス加工で曲げたがどこが繋ぎ目なのか見ても判らない。またパイプは板の上に置いても、ピタリと隙間がないほど直進性が高い。

(7)海外最優秀作品賞は「海外出品作品の中で技術・ 技能に優れた作品」に贈られる。

海外最優秀作品賞 「CARP」 A.S.C. Franchi Laser S.n.c.(イタリア)

講評:鯉が活き活きとしている。高いデザイン性と鱗などのち密な加工が評価された。

(8)グランプリ(単体品の部)

グランプリ(単体品の部) 「三重Rのクロージング曲げ」株式会社現代工業(大阪府)

講評:これは1枚の板から2つの標準金型で成形したもので、加工法が良く考えられている。

(9)グランプリ(組立品の部)

グランプリ(組立品の部) 「CUBE」(大阪府)

講評:外側の六面体と内側の六面体(立方体)ははめ込みだがピタリと動かないほどの精度だ。

(10)グランプリ(溶接品の部)

グランプリ(溶接品の部)「クラインの壺」シンエイメタルテック株式会社(佐賀県)

講評:54 部品を溶接している。外側ばかりか、内側にも高精度の溶接が施されている。

(11)グランプリ(造形品の部)

グランプリ(造形品の部)「コーヒーカップ」株式会社晃新製作所(埼玉県)

講評:夢を与える作品だ。レバーを回すとコーヒーカップが回転するが、カップの自転と全体の公転と周囲の星の公転が別々に回る手の込んだ作品。部品点数はカップ周りが 70 点、全体で 1400 点という規模で、機械加工を使わずすべて板金加工でまとめてある。

(12)学生作品の部・金賞 「CUBIC BALL」

学生作品の部・金賞 「CUBIC BALL」 山形県庄内職業の力開発センター

講評:多くの人が集まってつくられたにも拘らず精度は同じで、一般の部に参加しても高い評価を受けるだろう。

 加工機のメーカーが、加工製品の良否を競い合う“コンテスト”や“フェア”を開催している。工作機械は精密な加工を得意とするが加工対象は主として“部品”だ。一方、板金機械が作るものは完成品に近い“製品”だ。部品は集められ組み立てられて完成品になるので、ひとつひとつの部品に要求される精度などの条件は厳しい。その点多くの板金機械は完成品に近い製品を作り出す。パソコンの筐体なら最後に基板を入れるだけで、機械カバーなら本体に被せるだけ。少し極端な言い方だが、板金製品技能フェアは工業製品として完成度の高い作品が参加するところが面白い。特に「造形品の部」などは“工芸品”“アート”のレベルの作品が登場する。今後も“技能”を競い合って欲しい。

次回の応募受付は 2024 年5月1日~10 月 31 日。
審査期間は 2024 年 11 月1日~ 2025 年1月 31 日。
表彰式は 2025 年3月初旬の予定