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ことラボ・レポート

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岡本工作機械製作所 2023年度PSG会支部連絡会

2024 年 03 月 06 日

 岡本工作機械製作所(石井常路社長)の販売代理店会PSG会の支部連絡会が2月に開催された。西部支部(大阪)は2月7日(水)に「東急REIホテル」で、中部支部(名古屋)は8日(木)に「メルパルク名古屋」で、東部支部(東京)は9日(金)に「ベイサイドホテルアジュール竹芝」を会場にした。
 各会場とも構成は同じで前半の「支部連絡会」は途中にコーヒーブレイクを挟んで3時間、後半は懇親会1時間 45 分の2部構成だ。支部連絡会の内容は①OKAMOTOの歴史と未来、②脆性材加工の需要とOKAMOTO、③EV産業における研削盤需要とOKAMOTO、④特別公演の構成だった。
 同社は目下 2026 年度までの中期計画「創lution 2025 GRIT & Adjust」を掲げ、「目標 研削で価値を創造する ソリューションカンパニーへ ⇒ 500 億円企業へ成長」を打ち出している。そして2月9日に発表された「2024 年3月期第3四半期決算短信」によると 2024 年3月期の業績予想では通期の売上高を 500 億円としている。つまり1年前倒しして 500 億円企業を実現する、というのだ。PSG会の力が入るのは当然だ。参加した代理店会各社は、プレッシャーとともに高揚感も感じていただろう。
 同社はさらに「Okamoto VISION 2030」を掲げており、長期目標として「世界に類のない『総合砥粒加工機メーカー』として研削盤、半導体ウェハ研磨装置でグローバルNo.1を目指す」そして連結売上高 700 億円を目標に「100 年企業に向けて大きな成長を目指す」としている。500 億円は通過点に過ぎない。以下に当日のプログラムに沿ってお伝えする。

OKAMOTOの歴史と未来

 代理店会で企業の歴史がテーマになるのは珍しいので、その趣旨を尊重してエポックとなる機種が登場した歴史を振り返る。
 岡本工作機械製作所は 1926 年に岡本覚三郎により「岡本専用工作機械製作所」として設立された。1930 年には国産初の歯車研削盤「ASG-2型」を開発した。歯車加工機は現在でも系列の岡本工機(広島県福山市)で製造されている。同社の会社案内や総合カタログに歯車がデザインされているのは同社のルーツが歯車だからだ。1953 年国産初の平面研削盤「PSG-6型」を開発。代理店会が「PSG会」というのもここからきている。1954 年には内面研削盤「IGMシリーズ」を開発。1955 年には国産初の外周刃スライシングマシン「PSG3Ge型」を開発した。
 1968 年には世界初のCNC平面・成形研削盤「NFG-5型」を開発した。1969 年には円筒研削盤「OSMシリーズ」を開発。1974 年にはロータリー平面研削盤「PRGシリーズ」を開発した。
 1986 年にはベストセラー汎用成形研削盤「PFG500シリーズ」を開発。1987 年にはベストセラー汎用平面研削盤「PSG-DXシリーズ」を開発、同シリーズは 1997 年に製造台数 5,000 台を突破した。
 2010 年にはiQソフトの開発により平面研削盤のノウハウをソフト化、iQソフト搭載機を開発。大型ワークの高精度・高能率要求に応えるためにCNC門形精密平面研削盤「PSG-CHLiシリーズ」を開発。2011 年には小物ワークの微細成形加工に応えるためにリニアモータ駆動の超精密成型研削盤「UPZ210LiⅡ」を開発。2014 年にはCNC精密複合円筒研削盤「UGM360NC」開発した。2015 年には 80 周年のテーマとして「研削革命」を発表した。
 OKAMOTOの歴史で特筆するべきは 1973 年のシンガポール工場の建設だろう。“グローバル”などという言葉も、今日ほど馴染みのない時代に、勇躍海外に進出し、これで同社は日工会メンバーでも“国際派”と認識されるようになった。

Okamoto VISION 2030への道

 700 億円企業を目指す具体的戦略がPSG支部連絡会で示された。それは「半導体産業」と「自動車のEVシフト」だ。プログラムの第2セッションは「脆性材加工需要」を解析する。
 これまで工作機械が対象とする材料は金属類が中心だったが、IT産業の拡大に伴いシリコン、SiC(炭化ケイ素)、やセラミックス、窒化アルミ、窒化ガリウム、石英ガラスなど硬くてもろい脆性材と呼ばれる素材が増えてきた。これらは切削加工ではなく研削・研磨で加工する材料になる。
 セラミックスはミクロン単位の粉末をプレス、焼成して生成する。最後に研削・ラップで平面度1ミクロンに仕上げる。SiCは高い防触性からベアリングやメカニカルシールなどの摺動面に使われたり、耐熱性・半導体特性から次世代パワー半導体に利用されている。石英ガラスは光透過性が高いために光ファイバーの光を閉じ込めるクラッドに使用されている。これらの加工には研削・研磨加工が使われる、すなわち岡本工作機械の守備範囲になる。
 脆性材の研削加工に「VRG6DX」「UGM64GC」「PRG8-iQ」などが紹介されている。脆性材は砕けやすくかつ硬度が高いのにミクロンオーダーの加工精度を要求される。これに応えるのがこれらの研削盤だ。
 各機種の概略を紹介する。
(1)グラインディングセンタ「UGM64GC」は円形の脆性材ワークを高能率かつ高精度に加工。
円テーブルを標準搭載
左右・前後・上下・回転軸の計4軸を制御できてBBT-40に対応
回転テーブルはφ600mm/MAX100min-1に標準対応
回転だけでなく割り出し機能もオプションで実装可能
ATC標準 20 本。最大でφ 150 mmの砥石を搭載可能
タッチプローブによる機上測定の自動化も可能

グラインディングセンタ「UGM64GC」

(2)粗・精・ドレスの自動研削サイクルを搭載の「PSG-SA1」(サドル型)
タッチパネル採用の汎用研削盤
自動ドレスによる作業能率の向上
機上計測ユニット『Quick Touch』採用

最新の平面研削盤「PSG-SA1」(サドル型)

(3)オーバーハングレス設計で3軸NC制御の平面研削盤「PSG-CAiQ」(コラム型)
自社製高剛性T型フレームの採用
iQソフトによる加工の効率化実現
安定した精度と剛性の維持が可能
前後左右はACサーボモータとボールねじで高精度を実現

最新鋭の平面研削盤「PSG-CAiQ」(コラム型)

PSG支部連絡会の最後のセッション

 支部連絡会は伊藤 暁・取締役常務執行役員、技術開発本部長兼営業本部長の「特別講演」でお開きとなるが、西部、中部と先行して行われた内容を修正して3回目の東部支部が決定版? 伊藤氏の講演は、抜群の情報収集力で今後の産業界を占うヒントで溢れており、ある意味では参加者はこれを楽しみに参加していると言える。要旨は①これからのEVシフトで問題となるリチウムイオンの問題点は全固体電池の実用化で改善される。そこで必要な薄膜技術はOKAMOTOが提供する。②さらに必要となる電気はペロブスカイト太陽電池で作り出される。ここでも塗膜技術が必要でOKAMOTOが提供できる。③そこで必要になる半導体もOKAMOTOの設備が使われる。と、三題噺のような展開で参加者は『Okamoto VISION 2030』の世界に吸い込まれていったようだ。