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ことラボ・レポート

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三井精機工場見学「工場見学会2024」開催された

2024 年 02 月 21 日

 三井精機工業(川上博之社長)は、2月8日(木)9日(金)に本社工場精機棟において「工場見学会2024」を開催した。コロナ禍を経験して年初に定期的に開催していたプライベートショーMTFの開催スタイルを変えた。それまでのMTFは「三井テクニカルフェア」として“工作機械”と“コンプレッサ”の2本柱の展示会だったが、昨年から工作機械とコンプレッサを分離して前者は「工場見学会」、後者を引き続き「MTF」として開催することにした。
 見学会は2日間で、午前の部(10:00~12:00)と午後の部(13:30~16:00)の二部構成で、指定された時間に到着すると、会場のテーブルには社名を記した名札があり、指定席となっていた。これまでプライベートショーは、企業を挙げてより多くの動員を目指し、多くの商材を来場者に見せ、講演会を行い、仕掛中の案件、試作中の技術をチラ見せして新規の商談を獲得しようと全社を挙げてきた。しかし「工場見学会」は三井精機スタッフがフルアテンドして、至れり尽くせりのコミュニケーションをとるスタイルだ。すると効率は悪いのではないか、と誰でもが思う。その回答は川上博之社長の言葉にある。「三井精機は工作機械を量産する企業ではない。むしろユーザーとじっくり理解し合って使いこなしていただきたい」と、工場見学会に手ごたえを感じているという。
 会場に入ると、独自の形状をしたワークの数々が展示されているコーナーがあり、三井精機製のマシンならこのような加工ができるとアピールしていた。機械精度の基礎となるキサゲのサンプルも展示してあり、高精度好きの人には嬉しい。キサゲには“流派”があり、それは職人であったり現場の伝統であったりする。三井精機では“松葉模様”が主流らしい。

ワークサンプル展示コーナー

キサゲのサンプル

展示機は3台。
プレシジョンセンタ「PJ303X」
プレシジョン・プロファイナル・センタ「PJ812」
5軸制御立形マシニングセンタ「Vertex55X Ⅲ」
とコンプレッサ展示機として、インバータコンプレッサ「ZV22AX3-R」が紹介されていた。

三井精機のカーボンニュートラルのコンセプト図

プライベートショーとしては上記の商品が並べられていたが、工場内に入ると、
ジグ研削盤「J300G」、「J350G」
ジグボーラー「J6CN」
横形マシニングセンタ「HU63EX」、「HU80A」
5軸制御横形マシニングセンタ「HU80A-5X」
5軸制御立形マシニングセンタ「Vertex55X Ⅲ」
ねじ研削盤「GSE50A」、「GSE500A」などが製造中であるとのことだった。しかし「全社を上げてプライベートショー」というスタイルでない、ということは工場では現場の方々が忙し気に動いており、こちらは気後れして近づけない。また撮影もできずサラリと“見た”だけだった。
さて展示されていたいくつかの商品で、一番興味を引かれたのは、工作機械ではなくコンプレッサだった。完成したばかり、ということで画像を見ただけだが「カーボンニュートラル実現に『i』の力で」とある新しいコンセプトだ。インバータを含めたシステムに対して、台数と配管関連を計算して、圧損軽減やエアー漏れを把握する。そしてトータル電力量の削減、無駄運転の排除をして省エネを実現する。工作機械とコンプレッサをトータルに考える、とあり少し驚いた。その基本方針をまとめたのが下のコンテンツだ。

 驚いたというのは、1990年代の初めにドイツのDMCが日本に来たとき、ドイツでは自動車製造装置関係すなわち工作機械まわりの電気系、油圧系、空圧系の製品群を標準化した「デジーナ規格」(DESINA)が定められCNC制御の共通プラットフォームで動き出したことを知った。いまの工作機械はほとんどがCNCで制御されている、ということは工作機械がどのように動くかは、あらかじめ判っている。空圧系で動かすならコンプレッサの空気圧は最適に制御できるはず。それが日本ではまだできていないのか? 個社で頑張ることは大事だが、同業者同士が歩み寄れば、長い目で見ればユーザーを含めた全員のプラスとなると思うがどうだろうか。例えば、ファナックのフィールドシステムに繋げれば、工作機械やロボットのユーザーには、省エネ効果を保証できるのではないか。

5軸制御立形マシニングセンタ「Vertex55X Ⅲ」

 私は「お客様とともに」というスローガンは言葉の射程距離が短すぎると思っている。メーカーが意地を張って歩み寄らないためにユーザーが損をしている場面が多すぎる。この空圧系コンプレッサの制御もそうだし、ロボットハンドのインターフェイスの標準化、マシニングセンタのパレットの爪の仕様など、ウチが一番だから妥協しない、という段階を早く卒業して欲しい。
 新型コロナは油断できないが、取材の大きな障害にはならなくなってきた。今回手に入れた資料に同社の「Vertexシリーズ」仕様のバリエーションがある。次回はこれをご紹介する。