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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

ことラボ・レポート

OPIE’24開催される

2024 年 05 月 15 日

 光技術総合展示会《OPIE(Optics & Photonics International Exhibition)’24》(主催・オプトニクス社、レーザー学会など合計5団体)が、2024 年4月 24 日(水)から 26 日(金)まで、パシフィコ横浜で開催された。レーザー技術や画像処理技術が対象で、出展社数は 417 社(前回比 98.3 %)、小間数は 558 小間(前回比 104.1 %)だった。3日間の会期で初日は雨だったが、あとは好天に恵まれ来場者数は以下のようだった。

来場者数(主催者発表)

2024 年 4/24(水)曇り/雨 4/25(木)晴れ 4/26(金)晴れ 合計
来場者数 5,051 5,130 4,868 15,049
昨年度比 106.99% 116.25% 106.94% 109.96%

《OPIE》とは

 画像処理技術やレーザー技術などを対象にした専門展示会としての歴史は長く、ヴァーチャル・リアリティやホログラムなど視覚から入る技術情報の発信源のひとつだ。
 技術の進化とともに光技術の応用分野が広がり《OPIE》でも、サブテーマを設けている。今年も前回同様に7つのテーマが設けられた。各企画は小間図面では色分けで明示されているが、一見して《レーザーEXPO》が最大勢力だとわかる。7つのテーマとは、
①レーザーEXPO/②レンズ設計・製造展/③ポジショニンングEXPO/④宇宙・天文光学EXPO/⑤光源・光学素子EXPO/⑥光と画像のセンサ&イメージングEXPO/⑦光通信・要素技術&応用EXPO の企画だ。

 “光“の正体は「光子(フォトン)」という面と「波動」という面があると言われるが、普通人の感覚では理解は難しい。しかし、身の回りに溢れる“光”の、エネルギーを使って加工に利用したり、緻密に測定したり、情報処理に利用したり、科学の力は素晴らしいと思う。わかる範囲で「レーザー利用技術」を列記すると…、
【レーザー応用技術】
 レーザー測長システムで長さを測り
 DVDなどの情報を処理したり
 バーコードリーディングなどの読み取りをしたり
 レーザーメスなど医療分野で活用したり
 レーザー分光技術で物性を解析したり
 ホログラム立体画像を記録したり
 レーザー加工技術(切断/穴あけ/マーキング/溶接/表面処理)に使われたり
 など。《OPIE》展の面白さが判るとおもう。

板橋区パビリオン参加企業

 今回も板橋区パビリオンのもとに8社が参加している。板橋区には光学機器系の企業が、戦前から立地しており、双眼鏡などの軍需用光学機器の一大生産地だった。一眼レフカメラ“ペンタックス”の旭光学工業(現リコーイメージング㈱)、測量機・双眼鏡の“トプコン”などの工場が立地していた。それゆえ《OPIE》展に板橋区のパビリオンがあるのは自然な流れだ。参加企業は昨年より1社減り、ジーフロイデ㈱、ユニオン光学、㈱システムエンジニアリング、㈱ユーカリ光学研究所、㈱オルサ、日本特殊光学樹脂㈱、㈱ルケオ、㈱目白ゲノッセンの8社だった。

海外パビリオン

 さらにドイツから2つ(ベルリンパビリオン、チューリンゲンパビリオン)の、リトアニアから1つの、中国・武漢からも1つの海外パビリオンが参加した。
 リトアニアからの出展は珍しい。北海に面したバルト三国のひとつでロシア、ベラルーシと国境を接しているというだけで同国の緊張感は伝わってくる。同国はソ連崩壊に伴い 1990 年に独立を回復したが、近年バイオテクノロジーやレーザー産業が盛んになってきた。
 出展したOPTOGAMA社はリトアニアに本社を置く、レーザーに関連する製品を幅広く製造するメーカー。レーザー/フォトニックス業界での実績を上げている。スタッフの9割はレーザー物理学の技術的バックグラウンドを有しており、しっかりとした技術力を持つ。レーザービーム径を広げる「ビームエキスパンダー」や適切な振幅に減衰させる「アッテネーター」などのレーザー用デバイスを中心に生産している。
 ベルリンパビリオンに参加していたFraunhofer HHI (フラウンホーファー・ハイリンヒ・ヘルツ通信技術研究所、以下「フラウンホーファー研究所」)はこの分野で重要な存在だ。レーザー技術は、“光”という身の回りに当たり前にある自然現象を産業に利用する技術で、日本企業も研究体制、技術の製品化に余念はないが、どうも勢いはドイツ勢にありそうだ。フラウンホーファー研究所は、ドイツ国内はもとより世界中のレーザー技術を収集している、と言われる。収集するばかりではなく情報発信に熱心で日英併記のニュースレターで「Fraunhofer Newsletter」には、最新の技術情報を手に入れることができる。newsletter@zv.fraunhofer.deにアクセスすれば配信を受けられる。参考までに最新号のコンテンツを紹介すると…。
【イベント参加情報】
(1)《OPIE’24 レーザーEXPO》  Fraunhofer HHI
 フラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)がOPIE’24レーザーEXPOにて最新の研究成果を紹介する。
 日時:2024 年4月 24 日(水)~ 26 日(金) 10:00 ~ 17:00
 会場:パシフィコ横浜/ブース番号:G-02/完全事前登録制
(2)《2024 国際ウェディングショー》 Fraunhofer IPK
 フラウンホーファーIPK(生産システム・デザイン研究所)が、2024 国際ウェルディングに出展を行い、最新の研究成果を紹介する。また、AM World内で4月 26 日(金)に開催されるAM技術セミナーにてIPKのDr. Max Bieglerが「ブレード補修解析」をテーマに講演を行う。
 日時:2024 年4月 24 日(水)~ 27 日(土) 10:00 ~ 17:00 (最終日のみ 16:00 まで)
 会場:インテックス大阪/入場料:無料(要来場者登録)
Research News 4/2024 ~技術的な取り組み】
 6件のニュースが紹介されているが一部はタイトルのみを紹介する。いずれも4月 22 日から 26 日まで開催された《ハノーバメッセ》展に展示された展示の案内だが、ドイツの産業界の話題が現在進行形で判る。
(1)EUにおけるバッテリーパスポートの分散型データシステム開発により循環型社会の促進へ
Circular economy: A digital EU product passport for batteries
フラウンホーファーIPK(生産システム・デザイン技術研究所)から、
2027 年2月よりEU市場に流通する全ての走行用バッテリー、二輪車用バッテリー、産業用バッテリー(いずれも容量は2kWh以上)にデジタルプロダクトパスポート(DPP)が義務化される。それは、バッテリーのバリューチェーンにおける透明性と持続可能性を保証し、環境への負荷を軽減しバッテリーの二次利用を促進するため。フラウンホーファーIPKは、技術的な標準化のデザインを実装を担っている。会場ではバッテリーパスポートに向けた標準化技術案とすべての種類のデジタル製品パスポートを展示する(DPPについては本日の「視点“LCAとDPP~SDGsに向けたEUの経済政策”参照)。
(2)ロールエンボス法により燃料電池に用いられるバイポーラプレートの採算コストを大幅に削減
Roll embossing New system revolutionize production of bipolar plates
フラウンホーファーIWU(工作機械・成形技術研究所)から、
 将来、自動車の動力源となるとされる燃料電池システムは、生産に要する複雑な高コストの生産工程などの理由から希少で高価だ。中心となるバイポーラプレートは水素システムに必要とされる電解槽や燃料電池などに不可欠な部品だ。
(3)積層造形を用いたロケット関連部品の生産によりヨーロッパの宇宙産業を振興
Manufacturing Technologies for the Future of the European Space Industry
フラウンホーファーILT(レーザー技術研究所)
(4)振動センサが組み込まれたヘルメットにより採掘機オペレータの健康被害を軽減
Helmet with vibration sensor for excavator drivers
フラウンホーファーLBF(構造耐久性・システム信頼性研究所)
(5)AI技術展示車両を用いた実践的なワークショップにより職場におけるAI技術の普及に貢献
AI in workplace settings: a hands-on experience
フラウンホーファーIAO(労働経済・組織研究所)
(6)AIを用いた技術の信頼性を検証するツールにより、AI技術のスケールアップへ
Solution for efficient and trustworthy artificial intelligence
フラウンホーファーIAIS(インテリジェント分析・情報システム研究所)
 (3)以下はタイトルだけだが、(1)(2)(4)などは技術が社会に貢献する取り組みのように見受けた。同研究所のHPによれば、ドイツ各地に 76 の研究所・研究施設を構え、約 30,000 人のスタッフを擁する欧州最大の応用研究機関」だと紹介している。

天田財団の助成研究成果発表会

 会期初日には、公益財団法人・天田財団が、パシフィコ横浜内の「アネックスホール」において「助成研究成果発表会」を開催した。同財団が助成する「レーザプロセッシング」と「塑性加工」のうち前者だけを《OPIE》展の併催企画として毎回行われている。7回目の今回のテーマは「レーザプロッセシングの医療・バイオ分野への応用」で5件の研究成果と企業講演が行われた。助成研究の発表会を分けるのは、財団運営の趣旨に合わないと言われるかもしれないが、レーザーをテーマにする研究発表なら《OPIE》展と合わせるほうが合理的でその柔軟な発想に声援を送りたい。

国立天文台とTMTプロジェクト

 会場を回り珍しい出展者が目に入った。「国立天文台」(NAOJ)で、ブースのパネルには“TMT”とある。NAOJはNational Astronomical Observatory of Japan のイニシャルでTMTはThirty Meter Telescope(口径 30 m望遠鏡)を意味する。
 子供の頃にあこがれた天文学の世界では、天文台の望遠鏡の大きさが子供でも分かる競争に思えた。うろ覚えの記憶だが、米国のパロマ天文台の直径4m(あるいは5m)が世界一だったような。それから 60 年で天文学も大きく進化した。しかしあのころ読んだ宇宙の話にすでに“ダークマター”も“ブラックホール”も“中性子星”も出ていたことを思うと、“進化”といっても微々たるような気もする。
 「TMTプロジェクト」は、文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けている、自然科学研究機構 国立天文台のプロジェクトの一つで、TMTを日本を含む国際協力で建設し、それを用いて最先端の天文学研究を推し進めることを目指している。

国立天文台のブース

口径 30 mの天文台の完成模型

 日本ではハワイ・マウナケアに口径8mのすばる望遠鏡が活動しているが、天文学研究をさらに発展させるために口径 30 m級の次世代超大型望遠鏡(Extremely Large Telescope = ELT)を建設することを目標に活動を始めている。
 アインシュタインは「光より高速で動くモノはない」としたが、膨張する宇宙の最果てでは、光速を超える速度で宇宙は膨張していると考えられるようになっている。高性能加工を得意とする日本の科学技術が発展して 30 m級の望遠鏡を実現して、宇宙の謎の解明に貢献して欲しいと願っている。
 次回の《OPIE’25》は 2025 年4月 24 日(水)~ 26 日(金)に同じパシフィコ横浜で開催される。