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ー 科学と技術で産業を考える ー

優れたことづくり例

技術者のバトン

有限会社スワコーポレーション 諏訪康彦 専務取締役/ インタビュー

2022 年 12 月 21 日

有限会社スワコーポレーション
専務取締役
諏訪 康彦

生年月日 :1979 年6月 20 日生まれ
出身地 : 群馬県
入社日 : 2005 年  11 月 1日
専務取締役就任日 : 2015 年 12 月
家族構成 : 妻、長女、次女、長男、うさぎ
趣味 : スパイスカレー作り
【団体などの公的な活動の履歴】
群馬県中小企業家同友会 伊勢崎支部 副支部長


Q.最初に御社(スワコーポレーション)について教えてください。

 当社は 1988 年 7 月に個人会社として設立しました。創業者は、現在も代表取締役社長を務める、私の父 諏訪悟です。最初の社名は「インテリア諏訪」という社名で、主に「座いす」の製造委託を行っていました。
 社長が事業を始めたきっかけですが、父の実家はもともと農家でしたので、学校を卒業と同時に農業を父が継いでいました。父は次男でしたので、本来は長男の伯父が農業を継ぐのでしょうが、伯父は農業を継ぐことなく自動車メーカーに就職をしたため、父が継ぐことになったのだと聞いています。
 父が農業を継いでから 4 年くらい経った頃、当時はこの地域での農業が厳しかったこともあり、悩んでいたそうです。この地域は養蚕業が盛んで、父も農業と養蚕業もやっていたのですが、どちらも厳しい状況でした。支援金などを受けながら継続するかどうかということを悩んだそうですが、結局は支援金を受ける事なく、新しい事業へと舵を切ったことになります。残念ながらこの地域でとても盛んだった養蚕業も、現在は見かけなくなりました。
 実は父もいろいろなことをやってみたいという考えがあったようで、一時は販売員や架線工などをやったりもしていましたが、そういう経緯の中で「ものづくりのおもしろさ」に触れる機会があり、自分で工場経営をするという方向に進みました。
 このタイミングで、知人から当時かなり忙しくなっていた「座いす」の組立を手伝ってもらえないかという話があり、これがきっかけとなりました。場所は養蚕業をしていましたので、その倉庫を利用するという形でスタートしました。
 この「座いす」の製造委託が順調に伸び、手伝ってもらうパートさんたちも増えていき、私が小学生だった 1995 年に、現在の群馬県伊勢崎市国定町に新しく工場を設立しました。
 この時に社名を「有限会社スワコーポレーション」へと変更しました。
 自宅が工場の隣りでしたので、私も学校の帰りに「ものづくり」の現場が楽しくてよく顔を出していました。パートさんの中には、同級生のお母さんもいましたので、同級生と一緒に帰ってきてそのまま工場に行っていたのをよく覚えています。
 その「座いす」の部品としてポリウレタンフォーム(以下、ウレタン)が使われていたこともあり、製造委託から発展する形でウレタン加工までを行う様になり現在に至ります。
 現在の主な事業ですが、このウレタンの切断・接着加工を中心とした事業と、創業時からの製造委託の延長的な委託業務も請け負っています。ウレタンの加工については本社工場で行っており、委託業務は主に梱包委託を請け負っており、こちらは第2工場で行っています。

本社工場

第2工場

 ウレタンは、素材としては実は様々な種類があります。その使用用途によって、硬さ(反発性)・重さ・難燃性・色などが異なり、その価格にも大きな差があります。当社では、発注先からの依頼内容に合わせて、最適な材料を使った提案を行うようにしています。
 製造しているのは、主にベッドやソファーなどの家具関係から、体育用具などの衝撃吸収や緩衝材などの備品まで、幅広いものを作っています。

Q.諏訪専務の経歴をお聞かせください。

 私自身は最初から父の会社で働くということを決めていたわけではありませんが、頭の片隅にはいつもありました。小学生の頃から工場に出入りしていましたし、中学生以上になると忙しい時には手伝ったりもしていました。
 大学は英文学部だったので、2002 年に大学を卒業した時は教員を目指していました。最初は臨時教員だったのですが、小中学生が相手と言っても自分が気づかされることや発見はたくさんありましたね。そういう意味では刺激も多く、とても充実していた職場でした。教員は小学校 2 年間、中学校 1 年間の 3 年間勤めましたが、その頃に父のサポートをするということで会社に入ることにしました。当時は教員を続けていくか、会社に入るかを非常に悩みました。相談した家族の意見も分かれ、教員を続けて欲しいという声もありましたが、父は何も言いませんでしたね。悩んだ末に自分の結論として、父の家業を手伝うということを決めました。今でもその時の自分の判断は間違っていなかったと思っています。
 その後、父の会社に入る前にウレタンを製造している取引先から「ウチで少し学んでいってはどうか?」という声をかけていただき、大手メーカーで半年間ウレタン全般についての勉強をさせていただくことができました。
 こうしてウレタン加工をきちんと知ることができ、スワコーポレーションに入社したのが 2005 年になります。

Q.ウレタン加工についてお聞かせください。

 ウレタンというのは、石油製品の一つである「ナフサ」が原材料です。
 このウレタンを製造する工程がウレタン発泡です。様々な加工物の配合を行い、用途に応じた硬さ(反発性)、重さなどのウレタンがつくられます。そしてここで製造されたウレタンを仕入れ、カット・接着・成形(一部)を行って使用目的に応じた製品の形にしていくのが私たちの仕事となります。
 納品されるウレタンは、ブロック状態のものやロール状態のものなどがありますが、どちらもとても大きいので場所をとります。そのため、工場内では仕掛品の状態で保管する期間をできるだけ短くし、加工後はできるだけ速やかに製品の形にして出荷する必要があります。

ブロック状態のウレタン

 先ほどもお話させていただきましたが、ポリウレタンフォームは用途に応じて様々な硬さ(反発性)・重さ・難燃性・色があります。その素材によって当然価格も異なりますし、素材の扱いも異なります。一般的には、密度が高くしっかりとして重量のあるものが高価格の素材で、端材などを溶剤で溶かして接着した柔らかい再利用材は低価格となり、型崩れが起きやすくなります。ウレタンは長時間ブロックの状態のままで置いておくと自重で変形してしまいます。納品時の屋外作業では、雨なども禁物です。だからこそ、仕入れから加工・出荷までを短時間で行い、できるだけ工場内に滞留させないように工夫しています。
 また、ブロックの状態で納品されたウレタン素材の周囲には、発泡加工時の固い部分が残っています。食パンの耳と同じようなイメージと考えてください。その部分を最初にカットするのですが、その部分が端材として残ってしまいます。この端材を捨てることなく細かく裁断し、溶剤で固めて再利用素材とすることでムダをなくし、環境に配慮した活動を業界全体で行っています。

ウレタンの端材

端材を再利用した素材

 加工製品がマットなどのシート状の場合は、主に 5.0mm 以上のものが中心で、その他のクッションやソファーの場合には、その目的に応じた形に加工していきます。
 ここで主に使用するのは、必要な厚さや形状にカットする「バーチカルカッター」と、同じ厚さに必要な枚数を連続してカットしていく「サーキュラーカッター」です。
 当社では、「バーチカルカッター」を 3 台、大型の「サーキュラーカッター」を 1 台保有しています。また目的に応じて自由な形状に加工を行うことができるベテラン技術者も所属していますので、難しい要望にも対応することが可能です。

バーチカルカッター

サーキュラーカッター

 この他に、切断したウレタンを接着する工程があります。これは切断した材料を組み合わせて接着することで、複雑な立体形状を作ったり、硬さの異なるシート材を貼り合わせることで、製品の用途や目的に応じた硬さや色を作り上げることができます。

接着作業

接着したウレタン

 また当社では、組立作業も行っています。創業当時からの商品である「座いす」から、現在ではクッションやソファーなどの組立までを行っている製品もあります。

組立が終了した製品

Q.2023 年に社長になられると伺いました。

代表取締役 諏訪悟 氏

 これはまず、私からお話しましょうか。代表取締役の諏訪悟です。
 私自身は、これまでいろいろなことをやってきて、その上で現在のウレタン加工にたどり着いたという話は専務が先ほどお話した通りです。その上でやはり考えてきたのは、どのタイミングで次の人に引き渡すかということでした。ただ、強制はしたくなかった。次の候補は専務でしたので、専務が自分からやりたいと言える会社であるということが重要だと思っていました。
 ただ、タイミングとして考えていたのは、自分が創業した時の年齢(38 歳)くらいで引き渡したいという思いはありました。そういう意味では少し遅かったかもしれないと思っています。この考えに至ったのは、自分がこの先 10 年まだ社長を続けていた場合、専務も50 代になってしまいます。そうなる前に次の社長にはまだ 40 代のうちに引き渡して、仕事の楽しさやチャレンジするということを残しておきたかった。そんな中、このタイミングで専務が覚悟を決めてくれたのは正直、嬉しかったですね。次の社長には私のことを気にせずに自分を活かしていってもらいたいです。仕事は何よりも「楽しさ」が一番だと思っていますし、楽しければ続けていくことができます。そして楽しければ、エネルギーも湧いてくるというのが私の考えです。

 【諏訪専務】ありがとうございます。私としては、父からいつかは引き継ぐのだろうとは考えていましたが、明確な時期が決まったことで緊張はしています。ただ、不安などは別にありません。もうすでに覚悟を決めているからということもあります。

Q.ブランドロゴが特徴的ですね。

 ありがとうございます。これは私が入社してからいろいろと活動してきた一環です。
 当時は世の中にちゃんと会社の考えなどを伝えていく必要があると考え、活動を開始しました。会社のホームページを立ち上げたり、ブランドが明確にわかるように、デザイナーの方と相談しながらロゴマークを考えていきました。
 スワコーポレーションの「ス」をイメージとしたマークなんですが、これは「人がお辞儀をしている」イメージを図案化したものです。常にお客様や従業員、関係する方々に感謝することを忘れない、そういう想いから作りました。

スワコーポレーションのロゴマーク

Q. スワコーポレーションがこれから目指そうとしていることについて教えてください。

 当社は、ウレタン素材を仕入れて加工を行う会社です。そのため、素材製造についての独自技術やノウハウはありません。ただし、素材を選び、組合せ、目的に応じた形状や硬さに仕上げるための工夫については、様々なトライを続けてきました。
 これまでも、いろいろな相談を受けて目的の製品を作りあげるというプロセスでは、家具メーカーからの依頼で作り上げた商品をはじめ、睡眠を徹底的に研究したマットレスや枕の開発に関わらせていただきました。この商品は「SLEEP BASE」というブランドで、株式会社 安田 様が開発・販売されている、こだわりぬいた最高品質のウレタン商品です。

睡眠を快適に変える「SLEEP BASE」 画像提供:株式会社安田 様

 こういった商品開発は苦労もありますが、完成した時の喜びは他には代えられないものがあります。私たちも自分で企画して、自社製品をこれからはつくっていきたいという想いを持っています。
 あとは、自分が社長になったからと言って、大きく変えていこうとは思っていません。今やっている本質的なこと、言い換えると「みそ汁の味」を変えようとは思っていないということです。いきなり変えても、しっくりとこないでしょう。
 むしろ重視していきたいのは、環境を整えることですね。設備はほとんど揃っていますので、従業員の満足度を高めていける職場環境にしたいと思っています。誰かのために何かをやっていこうと思っていれば、その想いはつながっていくと私は信じています。
 おかげさまで、コロナ禍においてウレタン関係の受注は過去最高でした。これは、外出制限などによる巣篭もり需要であったり、リモートワークにおける自宅家具の充実と言った需要が伸びたこともあったと思います。この状況も 3 年目に入り落ち着きつつありますが、私自身はあまり心配はしていないんです。先ほど社長も言っていましたが、私自身も今は仕事が楽しくて仕方ない。この想いさえあれば、必ず次につなげていけると思っています。
 そして最終的には、自分の次の人に同じ想いでバトンをつなげていけるようになればいいですね。

ありがとうございました。


有限会社スワコーポレーション 会社情報
【沿革】
・1988年
 群馬県伊勢崎市国定町 1992-1 に個人会社インテリア諏訪を設立
 主に座いすの製造加工をはじめる
 設立者 諏訪悟

・1995年
 群馬県伊勢崎市国定町 1992-4 に住所変更
 名称を有限会社スワコーポレーションに変更
 代表取締役社長 諏訪悟
 資本金 300 万円
 キャンピングカー取付マットの製造を開始
・1998 年
 パチンコ台錠部分雄加工を開始

・2002 年
 大手家具メーカー向けソファー、ベッドの製造を開始

・2005 年
 インテリア製品全般のウレタン裁断・加工・販売を開始し、業務を拡大

・2015 年
 専務取締役に諏訪康彦が就任

・2015 年
 量販店向け袋詰め等の内職業務を開始

・2018 年
 大手メーカーの建築資材部品の検査・梱包を開始

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