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日工会の月例記者会見(2024年5月)
(一社)日本工作機械工業会は、5月 23 日に4月分の受注額確報値を発表した。
【稲葉会長のコメント】
OECDは5月2日に世界経済全体の成長率について 2024 年は 3.1 %、2025 年は 3.2 %になるとの最新の見通しを発表した。インフレが従来の想定より早期に収束するとの観測から、それぞれ2月の発表から比較して上方修正された。米国やインドをはじめとする新興国の好調が持続・拡大すると見られるほか、中国も財政刺激策や投資の増加により一定の成長が見込めると分析している。
わが国については、2024 年は前回調査の1%から今回は 0.5 %と下方修正されたが、所得の増加や金融緩和、一時的な減税などにより 2025 年は 1.0 %のプラスが見込まれている。
為替相場は、連休前に開かれた日銀の金融政策決定会合で政策金利の現状維持が決まり、追加的な利上げの時期が遠のいたとの見方から、4月 29 日に一時 34 年ぶりの円安水準となる1ドル= 160 円台に達した。また対ユーロでも、単一通貨導入以来の最安値となる 171 円台につけた。現在は若干円高方向に戻しているが、日本政府による為替介入や各国当局の金利動向をにらみ神経質な展開が続いている。
株式では米国の利下げ観測を受けてダウ平均株価が5月 17 日に史上初めて 40,000 ドルを超えた。通商関連では、米国政府が中国から輸入する電気自動車に対する関税を現行税率の4倍となる 100 %に引き上げると発表したほか、中国製のコネクティッド・カーを国家安全保障上の重大な脅威として規制する方針を表明した。一方、中国政府も 19 日に、日米欧から輸入される工業用樹脂について、不当廉売の疑いで調査に着手したと発表しており、再び大国間で保護主義的な動きが始まった印象がある。
そうした中で、本年4月の工作機械受注について報告する。
工作機械の受注額【4月確報】 ※速報値は5月 14 日発表
1.概況【4月受注】:
受注総額:
1,209.0 億円(前月比△ 10.9 %(3ヵ月ぶり減少)、前年同月比△ 8.9 %(16 ヵ月連続減少))
受注総額は、内需で3⽉の期末効果の反動減がみられるも、2カ⽉連続の 1,200 億円超。慎重姿勢は続くも、年初の⽔準から⼀段⾼いレベル
(1)内需 363.7 億円(前月比 △ 26.2 % 前年同月比 △ 12.8 %)
期末効果の反動減で、2カ⽉ぶりの 400 億円割れも、350 億円超を確保 前年同⽉⽐は全 11 業種中8業種で増加も、⼀般機械、⾃動⾞は弱含み
(2)外需 845.3 億円(前月比 △ 2.2 % 前年同月比 △ 7.1 %)
主要3極では欧州、北⽶が減少も、アジアが増加し、850 億円に迫る受注を維持。6カ⽉連続で 800 億円超と横ばい圏内の動きが継続
⇒内需は底打ちの気配がある⼀⽅、欧⽶はやや⼒強さに⽋ける展開で、 受注の回復時期等について、今後の動向を注視
2.内需【4⽉分】
内需 363.7 億円(前月比 △ 26.2 % 前年同月比 △ 12.8 %)
(1)内需総額
・2カ⽉ぶりの 400 億円割れ 2カ⽉連続の 350 億円超
・前⽉⽐ 3カ⽉ぶり減少 前年同⽉⽐ 20 カ⽉連続減少
・期末効果の反動減も、本年 1,2 ⽉より⾼い⽔準。⼀⽅、主要業種は⼒強さに⽋ける
(2)業種別受注
・主要4業種:「一般機械」「自動車」「電気・精密」「航空・造船・搬送用機械」
前月比 :「航空・造船・輸送用機械」のみ増加
前年同月比:「一般機械」を除きすべて増加
・全 11 業種中
前月比 : 減少9業種(「官公需・学校」「航空・造船・輸送用機械」以外)
前年同月比 : 増加 8業種 (「官公需・学校」「精密機械」等)
「航空・造船・輸送用機械」は4カ⽉ぶりの 25 億円超
主要4業種
(3)一般機械(産業機械等・金型)向け受注
・⼀般機械計は、3カ⽉ぶりの 130 億円割れ
・産業機械等は、3カ⽉ぶりの 120 億円割れ。⾦型は、2カ⽉連続の 15 億円割れ
・前⽉の期末効果の反動で⼤幅減。本年 1,2 ⽉とほぼ同⽔準で、慎重姿勢が続く
(4)自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注
・⾃動⾞計は、2カ⽉ぶりの 90 億円割れ。⾃動⾞部品は、2カ⽉ぶりの 70 億円割れ
・完成⾞は前⽉からほぼ横ばいで3カ⽉連続の 20 億円超
・⾃動⾞は、前年同⽉⽐増加も受注⽔準が低い状態が⻑く継続
3.外需【4月分】
外需 845.3 億円(前月比 △ 2.2 % 前年同月比 △ 7.1 %)
(1)外需総額
・2カ⽉ぶりの 850 億円割れ 800 億円超は6カ⽉連続
・前⽉⽐ 3カ⽉ぶり減少 前年同⽉⽐ 16 カ⽉連続減少
・主要3極はアジアのみ前⽉⽐増加。欧⽶はやや⼒強さに⽋けるが、アジアは底堅い
(2)主要3極別受注
①アジア
アジア計は、12 カ⽉ぶりの 400 億円超で、前年同⽉⽐も 16 カ⽉ぶり増加
-東アジアは、韓国、台湾、中国すべてで前⽉⽐増加し、13 カ⽉ぶりの 300 億円超
-韓国は、11 カ⽉ぶりの 30 億円超
-中国は、⾃動⾞のまとまった受注もあり、2カ⽉ 連続の 250 億円超(260 億円超は 13 カ⽉ぶり)
-その他アジアは、マレーシア、ベトナム、インド等 で前⽉から増加し、2カ⽉ぶりの 100 億円超
-インドは、⾃動⾞や航空・造船・輸送⽤機械で まとまった受注があり、2カ⽉ぶりの 50 億円超
アジアの受注額
アジアの業種別受注
・主要4業種は、⾃動⾞と航空・造船・輸送⽤機械が前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、その他アジアを中⼼に前⽉⽐増加し、3カ⽉ぶりの 120 億円超
・⾃動⾞は、中国で前⽉から⼤きく増加する等、4カ⽉ぶりの 130 億円超
・航空・造船・輸送⽤機械は、インドを始め、韓国、ベトナム等でもまとまった受注があり、 2018 年 11 ⽉(29.2 億円)以来、65 カ⽉ぶりの 20 億円超
②欧州
欧州計は、ドイツ、スイス等で前⽉⽐減少し、3カ⽉ぶりの 170 億円割れと⼒強さに⽋ける
-ドイツは、36 カ⽉ぶりの 35 億円割れ
-イタリアは、7カ⽉ぶりの 25 億円超
-トルコ(20.9 億円)は、4カ⽉ぶりの 20 億円超も、 スイス(4.0 億円)は、32 カ⽉ぶりの5億円割れ
欧州の受注額
欧州の業種別受注
・主要4業種は、航空・造船・輸送⽤機械のみ前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、EUが3年ぶりに 35 億円割れとなるなど⼒強さに⽋け、2カ⽉ぶりの 50 億円割れ
・⾃動⾞は、 イタリアやトルコ等で前⽉⽐増加し、3カ⽉連続の 25 億円超
・電気・精密は、ドイツを始めEUを中⼼に前⽉⽐増加し、3カ⽉ぶりの 15 億円超
・航空・造船・輸送⽤機械は、イギリス、トルコ等でまとまった受注があり、3カ⽉連続の 20 億円超
③北米
北⽶計は、アメリカで減少し、35 カ⽉ぶりの 230 億円割れ(250 億円割れは3カ⽉ぶり)
-アメリカは、9カ⽉ぶりの 200 億円割れ
-カナダ(21.7 億円)は、4カ⽉ぶりの 20 億円超、メキシコは、6カ⽉連続の 15 億円超
北米の受注額
北⽶の業種別受注
・主要4業種は、航空・造船・輸送⽤機械を除き前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、アメリカ等で前⽉⽐減少も、前⽉からほぼ横ばいで3カ⽉連続の 80 億円超
・⾃動⾞は、アメリカ、メキシコで前⽉の反動減もあり、2カ⽉ぶりの 40 億円割れ
・電気・精密は、アメリカ、メキシコでまとまった受注があり、17 カ⽉ぶりの 30 億円超
・航空・造船・輸送⽤機械は、キャンセルの影響で 2009 年 11 ⽉(4.2 億円)以来、14 年5カ⽉ぶりの5億円割れ
AMT事務局コメント(3月分)
2024 年3⽉:4億 3,569 万ドル、前⽉⽐+ 24.9 % 前年同期⽐△ 21.3 %
「年初からの予測は、FRBが 2024 年中に3回利下げするという前提に⽴っていたが、物価が⾼どまりし、労働市場が⼒強さを維持する中で利下げの可能性が低下したことで、企業投資は若⼲躊躇している様⼦がうかがえる。そうした中でも、政府⽀出や、技術進歩に後押しされた好機がまだ残っている。」
次回、2024 年5月次の受注額の報告は速報が6月 11 日(火)15 時、確報値は6月 25 日(木)10 時 30 分からの記者会見で。報道解禁は同日 15 時。