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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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《テクニカルショウヨコハマ2024》が開催された

2024 年 02 月 21 日

展示会ビジネスの新潮流

2024 年2月7日(水)から9日(金)までの3日間、「パシフィコ横浜」において《テクニカルショウヨコハマ2024》(第45回工業技術見本市)が開催された。主催は公益財団法人神奈川産業振興センター、一般社団法人横浜市工業会連合会、神奈川県、横浜市の共同主催。開催規模はリアル展示で807社・団体、653小間。主催者特別コーナーでは①環境をテーマとしてペロブスカイト太陽電池・低CO2排出・DX推進事例などの最新取組み事例を紹介する。さらに②経産省「ミカタプロジェクト」による県内自動車部品サプライヤーの技能を紹介する展示コーナーや③ドローン実演・体験コーナーでは来場者がドローン操縦体験ができる。その他にDXセミナー、脱炭素セミナー、SDGsマッチングイベントなどがあり中堅展示会だが企画は盛りだくさんだった。

主催者特別展示コーナー

 メディアに配布された資料によれば「首都圏最大の工業技術・製品の総合見本市」で、県内産業の発展と経済の活性化に貢献するために毎年2月に開催されている。パシフィコ横浜は、JR桜木町駅から徒歩12分、みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩5分とロケーションは至便だ。近年、この会場で開催される展示会は、この展示会もさることながら「画像機器展」(毎年末開催)、「人と車のテクノロジー展」(毎年初夏開催)、「OPIE展(光学機器展)」など中型だが息の長い展示会が着々と規模を拡大しているようだ。
 “総合見本市” という表現には懐かしい響きがある。いまでこそ展示会は、工作機械(JIMTOF)、ロボット(iREXなど)、電子機器(CEATECなど)テーマを絞った企画で開催されるものが多くなっているが、日本の産業規模が小さい頃は「総合見本市」として開催されていた。日本で近代的な見本市・展示会は明治維新前後に、“内国博覧会”などが上野公園他で開催されていたが“富国強兵”や“殖産興業”が全面的に押し出されていた。展示会とはもともとそのようなものだと思う。戦後復興を目指した展示会は、いまは五輪選手村からベイエリアのマンション群となり面影もないが「晴海国際貿易センター」がメイン会場になっていた。ここは戦前に“万国博覧会”の会場に予定されていたという。大阪には1954年4月に《日本国際見本市》が開催された歴史を持つ「国際見本市会館」と「港会場」があった。いずれにしてもこの頃の“見本市”は、総合産業見本市だった。
 新型コロナ禍の自粛期に、展示会ビジネスがリセットされた。昨年年央から開催された展示会を、主に首都圏で取材したが、それまでのうっ憤を晴らすかのように活気に溢れていたのと同時に感じたのが“間接出展”が増えたということ。《テクニカルショウヨコハマ2024》は、そのような中で主催者が地方公共団体の合同委員会だから、地方公共団体などの間接出展が山盛りだった。少し長くなるが全体像を紹介する。

主催者:九都県市合同商談会実行委員会は以下で構成される。
埼玉県/千葉県/東京都/神奈川県/横浜市/川崎市/千葉市/さいたま市/相模原市/(公益財団法人)埼玉県産業振興公社/(同)千葉県産業振興公社/(同)東京都中小企業振興公社/(同)神奈川産業振興センター/(同)横浜企業経営支援財団/(同)川崎市産業振興財団/(同)千葉市産業振興財団/(同)さいたま市産業創造財団/(同)相模原市産業振興財団

会場内に集結した地方公共団体による出展の実情。“/”の前後は「小間数」と「参加企業数」

「横浜市・横浜ものづくりゾーン」70小間/80社

「神奈川県中小企業団体中央会」8小間/27社

「伊勢原市商工会」4小間/5社
「海老名商工会議所」2小間/4社
「小田原市箱根商工会議所工業ものづくり部会」4小間/6社
「平塚商工会議所工業部会」7小間/9社
「川崎市展示会出展実行委員会」14小間
 この中にはさらに「協働組合高津工友会」:5小間/10社、「下野毛工業協同組合」:2小間/2社、「川崎ものづくりブランド推薦協議会」:5小間/6社、他2小間が参加。
「辰野町役場・辰野町商工会」3小間/5社
「松本ものづくり産業支援センター」4小間/4社
「千曲市産業支援センター」4小間/5社
「多摩異業種交流会」5小間/5社
「南陽市商工会工業部会」2小間/6社
「燕商工会議所工業部会」32小間/31社

「かながわ自動車部品サプライヤー共同出展ゾーン」10小間/10社
「群馬県産業支援機構」3小間/3社
「長野県産業振興機構」50小間/53社

「藤沢商工会議所」12小間/11社

「厚木商工会議所」8小間/14社

「秦野市/秦野商工会議所工業部会」6小間/15社
「青森県」8小間/9社
「岡山県産業振興財団」8小間/8社
「神奈川県よろず支援拠点」4小間/6社
「KIPベンチャーイノベーション」14小間/13社(☆)
「KIPビジネスチャンス開拓研究会」13小間/13社
☆:KIPとは神奈川県産業振興センターが県内で事業活動をしている人、事業展開を目指している人を対象とした会員組織「KIP会」のこと。各種勉強会や会員交流会、講演会などを開催している。
「豊田ものづくりブランド」4小間/5社
「長岡ものづくりゾーン」5小間/8社
「横浜青年経営者会」12小間/9社
「神奈川県メッキ工業組合」6小間/6社
「事業協同組合薩摩川内市企業連携協議会」2小間/3社
「SAPPOROものづくり企業出展ブース」10小間/11社
「日本工作機械輸入協会共同出展ブース」12小間/11社

 日本工作機械輸入協会の勝又峰行専務理事は「《テクニカルショウヨコハマ》には2018年から参加している。JIMTOFに比べれば規模は小さいが、関東圏でのユーザー開拓にちょうど良い規模だし、参加者の負担は軽いので評判もよいです」と好感触を得ている。協会としては横浜に続く新たな展示会を探し、会員企業の販促活動をサポートしていくと語る。

「座間市商工会工業部会」4小間/4社
「相模原市産業振興財団/相模原市トライアル発注認定製品」8小間/9社
「SKYビジネスカンファレンス」13小間/13社(*)
 この中にはさらに「甲斐市商工会」:1小間/1社、「南アルプス市商工会」:1小間/1社、「御殿場市商工会」:4小間/4社、「湖西市商工会」:3小間/3社、「山梨市商工会」:4小間/4社が参加している。
「綾瀬市商工会」4小間/4社
「大和市・大和商工会議所工業部会」4小間/8社
「姫路市産業振興課共同出展ブース」2小間/2社
「横浜市『AI・IoTゾーン』」28小間/24社
*SKYビジネスカンファレンスとは、御殿場市商工会工業部会の提案で始められた。その趣旨は、製造業を中心とする「ものづくり企業」は、商圏が日本全国、世界というのが当たり前のことという前提にたった場合、同一市内の情報だけをもって活動していたのでは、製造業の持続的発展に貢献できない。そこで、御殿場市商工会工業部が提案者となり、中京圏を相手にしている静岡県中西部地域、信州・越州を相手にしている山梨県、関東圏を相手にしている神奈川県の3県のものづくりが盛んな16商工会に下記の3点を主目的に声をかけ、S(静岡)K(神奈川)Y(山梨)-ビジネスカンファレンスとして広域連携(アライアンス)を展開することで合意を得た。
・商工会傘下会員を通じての展示会情報、取引情報の共有化
・商工会傘下会員の取引促進のための視察実施による企業間交流の促進
・「IoT」「AI」という国の中小製造業向けの支援策の研究、活用
(SKYホームページより)

ロボット新時代に相応しく中古ロボット販売の「ロボイチ」も出展

 さて、出展者と主催者の間に第三者組織が介在する“間接出展”小間数を小間図面から拾うと合計で409小間になった。全小間数が653小間だから約63%が間接出展となり、主催者が掲げる「工業技術・製品の総合見本市」として大きな存在感を発揮している。
 展示会とはテーマがあり、課題を抱える人がその展示会のテーマの中に解決策があると思いやってくるのが基本だと思う。「総合展」や「物産展」は明確な目的のない人を対象にしている。そこで参加企業のバリエーションが豊富なほうが価値は高くなる。とはいえ「テクニカルショウ」に“ハム工房”や“菓子工房”が参加しているのは守備範囲を広げ過ぎとは思うが‥。
 それにしても団体の種類も数も多いことに驚く。“ヨコハマ”がタイトルについているので「横浜ものづくりゾーン」が最大規模(70小間)の出展は当然だが、「神奈川県中小企業団体中央会」も8小間規模で参加している。小間図面を見渡すと伊勢原市/小田原箱根商工会議所/平塚商工会議所/川崎市展示会出展実行委員会/藤沢商工会議所/厚木商工会議所/秦野商工会議所/KIP会/神奈川県よろず支援拠点/神奈川県メッキ工業組合/横浜青年経営者会/相模原市産業振興財団/座間市商工会/綾瀬市商工会などがある。
 産業は社会を構成する重要なユニットのひとつだが、公的団体が動けば当然、税金が投入される。そう考えると、この集中ぶりは効率が悪いように見えるがどうだろうか。産業界がIT技術の急速な進化やSDGsなど課題の登場で、新たな次元に進みつつある現在では、これまでの考え方では新しいステージに進めない。産業育成を支援する行政機関も何かを始めないと怠慢との批判を浴びるだろう。そして“グループ・連携”や“市・地域”さらに複数団体の“コラボ”など様々な集合体が登場してきた。見ているほうは面白いが、目的のある来場者には対象にアクセスするために、もう少しきめの細かい検索システムが必要なのでは。様々な出展製品に出会える新しい、というよりも懐かしさを感じた取材だった。