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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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日工会の月例記者会見(10 月)

2023 年 11 月 08 日

 (一社)日本工作機械工業会は、10 月 25 日に9月分の受注額確報値を発表した。

【稲葉会長の挨拶】
 ウクライナにおいては東部南部の要衝で激しい攻防が続いていますが、今月はイスラエルに対するハマスの奇襲攻撃をきっかけに大規模な攻防が始まり大変緊迫した事態となっている。イスラエルは近日中に大規模な地上攻撃を開始してガザにおけるハマスの大規模な掃討作戦に踏み切る構えですが、市街戦で住民に大きな被害が及ぶことが懸念されています。国際機関や関連各国が双方に自制を働きかけており、期待を込めて状態を見守りたいと思う。パレスチナ情勢を受けて原油のWTI先物価格が1バレル 90 ドル前後と上昇しており、もとより高値のガソリンの小売価格のさらなる影響が懸念される。
 また米国では、金融の引き締めが今後もしばらく続くとの見通しから、長期国債の利回りが 16 年ぶりに5%を超え、ドル円相場が再び1ドル 150 円近辺の円安水準となっている。
 一方、景気低迷の続く中国では、18 日に本年7-9月期のGDP成長率が、前年比で+4.9 %と発表された。第4四半期の+6.3 %から鈍化しており、有識者から先行きの厳しさを指摘する意見ある一方で、調査機関の事前予測を上回ったことから、景気の底入れする兆しととらえる見方もある。
 日本経済に目を移すと、今月 12 日に日銀が発表した9月の企業物価指数は、前年同月比が+2.0 %で、前月比が-1.3 %となった。ガソリン補助金の拡充などが奏功し、このところ伸びが鈍化している。また総務省が 20 日に発表した9月の消費者物価指数も、同様に鈍化の傾向が見られるものの、食料品は依然として高めに推移している。
 こうした状況を踏まえ岸田総理は臨時国会の所信表明演説で、物価対策の一環として所得減税の検討を進めるとともに、今後3年程度を持続的な賃上げや設備投資の拡大を実現するための変革期間と位置付けて、集中的な支援を行うとの考えを発表した。
 今回発表された経済対策により、是非とも経済成長を実現する実行力を発揮してもらいたい。
(以下、9月の需通実績の分析に入る)

マクロ経済の概況
1.全体経済
●足元の国内景気は、緩やかな回復の動き
・月例経済報告(9月):景気は、緩やかに回復している 【据え置き】
・日銀短観(9月調査):業況判断(最近、製造業)
 大企業 :+9(前期比+4Pt) 11 四半期連続の「良い」超
 中小企業:△5(同  ±0Pt)18 四半期連続の「悪い」超
●先行きは、世界的な金融引き締めの動き、海外景気の下振れリスクがあるものの、景気は緩やかな回復が続くものと期待
・月例経済報告(9月)
 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動などの影響に十分注意する必要がある。
・日銀短観(9月調査):業況判断(先行き、製造業)
 大企業  :+10(前期比+1Pt)
 中小企業 :△2( 同 +3Pt)

2.製造業の動き
●足元の設備投資は、持ち直している
・月例経済報告(9月):設備投資は、持ち直している 【据え置き】
・日銀短観(9月調査):設備投資(製造業)

2023 年度(計画)
・鉱工業生産(8月):生産は一進一退で推移している 【据え置き】
 鉱工業生産指数(8月確報):103.1:(前月比:△0.7 %) 2ヵ月連続低下
・機械受注(8月):機械受注は、足踏みがみられる 【据え置き】

 

工作機械の受注状況【9月確報】※速報値は 10 月 11 日発表
1.概況(9月の受注):
受注総額: 1,339.4 億円(前月比+16.7 %:2ヵ月連続増加、前年同月比△11.2 %:9ヵ月連続減少)
受注総額は、内需の年度半期末効果や、外需の⼤型受注等により、 ぶりの 1,300 億円超も調整局⾯は継続。1,000 億円超は 32 カ⽉連続
内需:450.5 億円(前月比+26.1 %、前年同月比△ 14.1 %)
年度半期末効果により6カ⽉ぶりの 450 億円超。全 11 業種中 10 業種で 前⽉⽐増加したものの、前年同⽉⽐は9業種で減少と調整局⾯が続く
外需:889.0 億円(前月比+12.55 %、前年同月比△ 9.7 %)
夏季休暇明けの欧州や、過去最⾼額となった北⽶が外需を押し上げ、 5カ⽉ぶりの 850 億円超。アジアでは中国が横ばい、インドは好調持続
9⽉の受注は、季節要因等で増加したものの、過去のピークに⽐べ、 受注総額のレベルはやや低く、持ち直しの時期等、今後の動向を注視

(1)内需 【9月分】
450.5 億円(前月比+26.1 %、前年同月比△ 14.1 %)
・3カ⽉ぶりの 400 億円超で、 450 億円超は6カ⽉ぶり
・前⽉⽐ 3カ⽉ぶり増加 前年同⽉⽐ 13 カ⽉連続減少
・内需は、年度半期末の効果もあって本年2番⽬の受注額も、調整局⾯が続く

■一般機械(産業機械等・金型)向け受注

・⼀般機械計は、年度半期末効果もあって、2カ⽉ぶりの 170 億円超
・産業機械等は、前⽉⽐増加も2カ⽉連続の 150 億円割れ。⾦型は、3カ⽉ぶりの 25 億円超
・9⽉は季節要因もあり前⽉⽐増加したものの、年初に⽐べ勢いは弱い

■自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注

・⾃動⾞計は、ぶりの 100 億円超で本年最
・⾃動⾞部品は、11 カ⽉ぶりの 70 億円超。完成⾞は7カ⽉ぶりの 25 億円超
・今⽉の動きが持ち直しの契機なのか、季節要因なのか、次⽉以降の動向を注視

(2)外需【9月分】
889.0 億円
(前月比+12.5 %、前年同月比△ 9.7 %)
 外需総額
・3カ⽉ぶりの 800 億円超で、850 億円超は5ぶり
・前⽉⽐ 2カ⽉連続増加    前年同⽉⽐ 9カ⽉連続減少
・主要3極では、欧州と過去最⾼額の北⽶が前⽉⽐増加し、外需は⾼⽔準

 

2023年度上半期の集計~(4~9月)の実績
受注累計
(1)受注総額:7,372.8 億円(前期△ 9.0 %、前年同期△ 17.7 %)
内需:2,405.3 億円 (前期⽐ △ 9.0 %) (前年同期⽐ △ 24.2 %)
外需:4,967.5 億円 (前期⽐ △ 9.0 %) (前年同期⽐ △ 14.1 %) (外需⽐率 67.4 %)
・受注総額は、前期⽐が2半期連続減少 前年同期⽐も2半期連続減少
 上期としては、3年ぶり減少
・4半期ぶり(上期として2年ぶり)の 8,000 億円割れ
・外需⽐率は前期(22 年度下期)から横ばい 前年同期(22 年度上期)から 2.8 Pt上昇
(2)内需累計:2,405.3 億円(前期⽐ △ 9.0 %、前年同期⽐ △ 24.2 %)
・内需累計は、5半期ぶり(上期としては3年ぶり)の 2,500 億円割れ
 前期⽐、前年同期⽐とも2半期連続減少。上期としては3年ぶり減少
・全 11 業種では、前期⽐: 減少8業種(その他需要部⾨、精密機械、電気機械、等)
 前年同期⽐:減少9業種(精密機械、商社・代理店、⾃動⾞、等)
・内需は、半導体関連、⾃動⾞を中⼼に、全体的に調整局⾯が続く
(3)外需累計:4,967.5 億円(前期⽐ △ 9.0 %、前年同期⽐ △ 14.1 %
・外需累計は、5半期ぶり(上期としては3年ぶり)の 5,000 億円割れ
 前期⽐、前年同期⽐とも2半期連続減少。上期としては3年ぶり減少
・アジアは、5半期ぶりの 2,500 億円割れ。東アジアは6半期ぶりの 1,500 億円割れも、 その他アジアは9半期ぶりの 550 億円超で、3半期ぶりの前年同期⽐増加
・欧州は、5半期連続の 1,100 億円超と横ばい圏内の動きが続き、堅調持続
・北⽶は、4半期連続の 1,600 億円超。今期はカナダ、メキシコが前期⽐増加