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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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MECT2023 開催された

2023 年 10 月 25 日

テープカットの様子

 JIMTOFの開催されない西暦の奇数年に、名古屋で開催される工作機械関連展示会としては最大の展示会《メカトロテック ジャパン:MECT2023》が、10 月 18 日(水)から4日間、名古屋市国際展示場「ポートメッセなごや」で開催された。念願だった展示ホールの新1号館が、昨年完成し、広くなった会場で初めてMECTが開催された。
 会場となるポートメッセなごやは、1973 年 11 月にオープンしたので今年は 50 周年にあたる。当時は「東洋一の無柱円形展示場(ドーム館)」として有名だったが、その展示場は長らくドーム館のみの展示場として使われていた。しかし、耐震性に問題があり建て替えが急がれたが名古屋市側が首を縦に振らなかった。このたびやっと新1号館が完成した。
 旧1号館は会場内のピットが少なく、展示会では電気や水、エアの配管が床に露出して、来場者の転倒防止に最新の注意を払うなど、利用者には使い勝手の悪い会場だった。その1号館だけの時代が長く続いたが 1987 年に2号館とイベント館の杮落し(こけら落し)でスタートしたのが《メカトロテック ジャパン》だった。その後3号館と交流センターが完成して、旧1号館の建て替えが待たれたが昨秋ようやく完成した。しかし、従来の展示場敷地内と道路を挟んだ反対側にあり不便の立地で、逆にあおなみ線「金城ふ頭駅」の目の前にあり、2号館、3号館などへのアクセスは悪い。展示会としての一体感を損なわないような配慮が必要となりそうだ。しかし、あおなみ線で来場する人たちには会場へのアプローチが格段に良くなったと思う。クルマ社会の名古屋では、会場北側の駐車場からの来場者に意識が向いていて、金城ふ頭駅からのアクセスは、港の倉庫街を通り抜けるような小道が続いていて、これから家1軒が買えるくらいの投資を考える人を迎える仕掛けを用意しているとはとても言えなかった。新しいルートは、改札口からペデストリアンデッキを進み、クルマを見ることなく会場にアプローチできる。少なくともこのアプローチは「東京ビッグサイト」、「幕張メッセ」、「インテックス大阪」などのまとまりのある展示場にそん色はないと、言えるようになったのではないか。
 またMECTは、始めこそ5日間の開催だったが、いまは水曜日に始まり土曜日までの4日間開催が固定化している。初日の水曜日は、開会式もあり業界幹部や企業トップの来場があり賑やかで、木曜日が少し減るが金曜日は大手のエンジニアが、そして土曜日には町工場の経営者が来場する。奥様が経理部長で、お子さんをベビーカーに載せて来場する。働き方改革の一貫で、東京の展示会は金曜日までの3日間になってきたが、MECTの土曜日は“風物詩”と言える。ある工機メーカーの担当者が「東京の展示会にも子供は来るけど、こちらの子供は機械を怖がらない」と語っていた。中部圏の強さを物語るエピソードだ。
 展示場が拡大して、FA業界も高止まり状態という追い風もあり出展者数は 492 社と過去最高になった。また日本の産業集積地中部を反映して毎回開催されるセミナーは、今回も自動車(10 月 18 日にトヨタ自動車と日産自動車)、航空機(10 月 19 日にボーイングジャパンとIHI)、さらに自動化とロボット(川崎重工業とヤマハ発動機)と、充実している。恒例の主催者企画展示(コンセプトゾーン)は「驚きのスゴ技」~加工のヒントがここに、と題して①「大判セラミックス板を均一に平らに」、②「アクリルで昆虫を忠実に再現」、③「工具を工夫し、5軸加工を劇的に時短」をテーマに第3号館に展示される。
 新1号館には原則として、マシニングセンタ、旋盤、複合加工機、研削盤、放電加工機、プレス・板金機械、その他工作機械、CAD/CAM、各種ソフトウェアなど。2号館には原則として、切削工具、研削砥石、のこ刃、作業工具、工具ホルダーなど。3号館には原則として、機械要素部品、工作物保持具、産業用ロボット、物流・搬送機器、精密測定機器、油圧・空圧機器、環境対応機器、試験機、洗浄機、コンセプトゾーン、中小企業支援ブースなどが展示された。
 毎回、知恵を絞って考え出されるキャッチフレーズは今回「FEELIT! 工作機械の迫力をさあ、会場」を掲げ、出展者数は過去最高の 492 社・団体(前回 426 社・団体)。そのうち 64 社が初出展。前回が 50 社だったので2割強の増加だった。展示規模も過去最高となる 2,103 社で前回(1,795 社)の2割4分強の増加になった。また会場に展示された工作機械、鍛圧板金機械は 285 台になった模様。世界 25 ヵ国・地域が参加していた。
 主催者として来場者に示したい「コンセプトゾーン」は、「驚きのスゴ技 加工のヒントがここに」をテーマに門外不出の加工技術の一端を披露した。また主催者企画セミナーでは、自動車(トヨタと日産)、航空機(ボーイング、IHI)、自動化(川崎重工、ヤマハ発動機)がものづくりの現状とこれからについて講演した。

来場者数と出展コスト
18 日(水)18,084 人、19 日(木)20,108 人、20 日(金)24,731 人、21 日(土)14,302 人
4日間合計 77,225 人

 展示会の主催者は来場者目標を掲げるし、出展者も来場者は何人かを気にしている。主催者発表の目標人数 70,000 人を1割以上も超えたのは喜ばしい。出展者は昨日の自社の小間に来た人数(集めた名刺数)で、来場数を割って会場に来たうちの何割に自社製品をPRできたか計算する。あるいは小間で集めた名刺の数で、出展経費を割ってみると1枚の名刺を集めるのにいくらかかった判明する。これも一つの指標になるが、こうした指標がまかり通っていることに安心している人が多い。
 「出展の成果」を問うと、これから集めた引き合いをフォローして営業に繋げるのでそれまでは判らない、と応えるのがせいぜいだ。その「引き合い」をランク付けして、成約見込みをランク分けできないだろうか。デジタル時代のいま、展示会ビジネスはアナログのままだ。各社のIT技術のより中身のある活用を期待する。

 具体的な出展内容については次回のレポートでお届けする。