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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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日工会の月例記者会見(9月)

2023 年 10 月 11 日

 (一社)日本工作機械工業会は、9月 27 日に8月分の受注額確定値を発表した。

【稲葉会長の挨拶】
 OECDは今月(9月)19 日に最新の世界経済見通しを発表した。
 本年のここまでの経済状況は激しい物価高で欧州経済はやや弱含んでいるものの、全体的には当初の予想以上に力強く推移している。欧州経済がやや弱含んでいるが、2023 年の世界全体の成長率は、前回6月時点より 0.3 ポイント高い 3.0 %になると見込む。しかし同時に中国については、不動産の構造問題や消費の低迷が深刻化し、年前半に見られた回復の動きはすでに失われつつあると分析している。中国以外の国や地域についてもインフレが高止まり、これまで続けられていた急激な金融引き締めの影響が顕在化する、と警戒している。2024 年の予想成長率を 2.7 %と、6月の予測より 0.2 ポイント引き下げた。
 我が国の経済動向に関しては同じく、19 日に内閣府より4‐6月期のGDPの改定値について前期比、年率で速報値から 1.2 ポイント低い 4.8 %と発表があった。他方、供給力と需要との差である“需給ギャップ”は、+0.1 %となり、2019 年7-9月期以来、14 四半期ぶりに需要不足が解消した。今後は供給力をいかに高めていくかが、経済を成長させていくうえで、一段と重要になってきた。
 一昨日の 25 日には岸田総理より経済対策の柱が示された。
 中小企業の賃上げや物価対策に加えて、DXやGX、サプライチェーンの強靭化、イノベーションを促す方針も盛り込まれており、今後明らかにされる詳細内容に注目していきたいと思う。
 一方米国では、FRBが政策金利の据え置きを発表した。物価水準は依然として高く、賃上げ交渉の不調から、米国の自動車労組は大規模なストライキを実施しており、今後の自動車生産への影響が懸念される。

以下、8月の受注総額について詳細な説明に移るが、その前に「マクロ経済の概況」
マクロ経済の概況
全体経済
●足元の国内景気は、緩やかな回復の動き
・GDP統計(4~6月)
 2次速報 実質GDP  前期比+1.2 %(年率:+4.8 %)
 1次速報(同+1.5 %)から下方修正 3四半期連続プラス
・月例経済報告(8月):景気は、緩やかに回復している【据え置き】
●先行きは、世界的な金融引き締めの動き、海外景気の下振れリスクがあるものの、景気は緩やかな回復が続くものと期待
・月例経済報告(8月)
 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動などの影響に十分注意する必要がある。

工作機械の受注状況【8月確報】※速報値は9月 11 日発表
1.概況(8月の受注):
受注総額: 1,147.6 億円(前月比+0.4 %:2ヵ月ぶり増加、前年同月比△ 17.6 %:8ヵ月連続減少)
受注総額は、外需で前⽉から増加したものの、内需で減少し、2カ⽉連続の 1,200 億円割れ。1,000 億円超は 31 カ⽉連続。調整局⾯が継続
内需:357.2 億円(前月比△ 9.3 %、前年同月比△ 31.0 %)
2カ⽉連続の 400 億円割れ。電気・精密で増加が⾒られたものの、 調整局⾯が続く中、季節要因もあり本年最低
外需:790.4 億円(前月比+5.5 %、前年同月比△ 9.7 %)
前⽉⽐が5カ⽉ぶり増加も、2カ⽉連続の 800 億円割れ 夏季休暇等で欧州は減少も、中国をはじめアジア、⽶国で前⽉⽐増加

8⽉の受注は、内外需ともに調整局⾯が続く
今後の持ち直しの時期等について、内外経済動向を注視

(1)内需 357.2 億円(前月比△ 9.3 %、前年同月比△ 31.0 %)

■一般機械(産業機械等・金型)向け受注

・⼀般機械計は、2021 年5⽉(132.9 億円)以来、27 カ⽉ぶりの 150 億円割れ
・産業機械等は 27 カ⽉ぶりの 130 億円割れ。⾦型は、2カ⽉連続の 20 億円割れ
・8⽉は、季節要因もあり産業機械等が減少し、本年最低額。次⽉以降の動向を注視

■自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注

・⾃動⾞計は、2カ⽉ぶりの 80 億円割れ
・⾃動⾞部品は、2カ⽉連続の 60 億円超。完成⾞は2カ⽉ぶりの 20 億円割れ
・⾃動⾞関連需要は、部品、完成⾞とも前⽉⽐増加も盛り上がりに⽋ける状況が継続

(2)外需 790.4 億円(前月比+5.5 %、前年同月比△ 9.7 %)
・2カ⽉連続の 800 億円割れ
・前⽉⽐ 5カ⽉ぶり増加 前年同⽉⽐8カ⽉連続減少
・欧州は夏季休暇の影響により前⽉⽐減少も、中国をはじめアジアが増加

 

【資料】日工会配布資料から

EMO 2023 開催結果の概要

 

1.開催基本情報
(1)会 期:2023 年9月 18 日(月)~ 23 日(土)6日間
(2)会 場:ハノーファー国際見本市会場 (Hanover Fairground)
(3)主 催:ドイツ工作機械工業会(VDW)
(4)運営実務:欧州工作機械工業連盟(CECIMO)
(5)出展者数:42 カ国・地域から約 1,850 社
(6)展示場面積:524,285 ㎡
(7)来場者数:約 92,000 人(2019 年 116,706 人)

2.主な出展概要(特徴)
・欧州
・EV 関連の部品加工に適した複合加工機に AGV やロボットを組み合わせた自動化を意識した展示が目立った。
・前回ハノーファーで開催した EMO2019 に比べ、ドイツだけでも大手、中小を合わせて約 100 社が出展を見合わせた。 

・アジア:
・欧州でニーズの多い多軸機の出展が多く見られた(台湾)
・1社で広いスペースで多数の機械を展示 PR する企業が目立つ(韓国)
・小規模でコンパクトブースを有効活用し、展示機を出展(中国)
・ロボットと連携し自動化を意識した展示、環境に配慮した省電力な機種を展開した他、 EVや航空機部品向けのモデルを展示(日本)

5.トピック
(1)開会式
 Heinz-Jürgen Prokop CECIMO 会長挨拶に続き、Stephan Weil 州知事等が開会式に登壇、祝辞を述べた。
 また、Carl Martin Welcker ゼネラルコミッショナーがスピーチで EMO2023 の見どころについてふれた。要旨は以下の通り。
①EMO2023 はテクノロジー、対話、ネットワーキングに重点を置き、「ビジネスの未来」、「接続の未来」、「生産における持続可能性の未来」という3つのトピックを詳しく取り上げる。
②EMO2023 は工作機械本体の他に工作機器、ソフトウェアを含めた総合展示を行っており、会期中には 360 を超えるセミナーやイベントが開催され、製造業が直面するあらゆる課題を解決したい。
③生産設備に対する世界的な需要低迷の中で、工作機械産業は中長期的には成長が期待できる。環境対応車のコンサルである Dr.マイケル ウィトラー氏によれば、BEV と FCV の販売台数は 2040 年までに 8,500 万台に増え、市場シェアの 75 パーセントを 占めると予想している。
④今後、電気モータ・バッテリ・燃料電池は、重要なコンポーネントになりつつある。また環境への負荷を軽減する電動車の発展が工作機械産業の回復に寄与する。

(2)出展傾向
①ロボットの活用や、工具・工作物関連の自動化システムとの連携によるスマート化を意識した展示を広く展開。労働力不足等を背景に、各企業とも自動化を強く進めている模様。
②多軸・複合工作機械が引き続き増加。複合機能のラインナップも多岐にわたり、工程集約ニーズの高まりが窺われた。
③欧州メーカの自動化展示には、現地の自動化システム専業メーカが採用されている ケースが目に留まった。Hall9 に搬送用ロボットを集約した展示エリアを設け、自動化ニーズに応じた内容を展示。
(3)その他
①次回 EMO 展は 2025 年9月 22 日(月)~ 27 日(土)、ドイツ・ハノーファにて開始予定。

【参考1:EMO展 近年の開催規模】(除ミラノ開催)

【参考2:各国主要展示会との比較】
※JIMTOF、EMO、CCMT:純来場者数(会期を通して1人1回のカウント)
 IMTS:入場登録者数(実際に入場していない事前登録者数も含む)
 CIMT、SIMTOS:延べ人数(出展者含むゲート通過人数)
 (注)JIMTOF出展者数は、協働・内部出展者を含む。