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ことラボ・レポート

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日工会の月例記者会見(6月)

2023 年 07 月 12 日

 (一社)日本工作機械工業会は、6月 20 日に5月分の受注額確定値を発表した。

【稲葉会長の挨拶】

 6月7日にOECDは最新の経済見通しを発表した。2023 年の世界全体の実質成長率については、ゼロコロナ政策を解除した中国経済の活性化と新興国の経済拡大が世界経済を下支えするとの分析のもと、前回3月のレポートより 0.1 ポイント高い 2.7 %、また 2024 年については前回発表の据え置きの 2.9 %との推定値を示した。6月 15 日には米国FRBが政策金利の据え置きを発表した。FRBは昨年3月以降、急ピッチで利上げを進め激しいインフラ抑制に効果が出る一方で、累計の利率は5%以上に達している。その結果、企業の資金調達に少なからざる影響が出ている。この春以降は、一部銀行の経営が悪化し、景気後退の懸念が生じたことから政策金利の据え置きを決めたと思われる。もっともFRBは年内2回の追加利上げを行う可能性も示唆している。今回の据え置きが利上げの明確な転換点になるか見極めにはまだ時間がかかると思われる。また欧州銀行でも同日 0.25 %の利上げを発表した。引き続き各国のインフレと利上げの動向に注視していく。
 一方、日経平均株価は5月以降上昇が続き、このところ連日、バブル経済崩壊後の最高値を更新している。業種や企業により差はあるものの総じて日本企業の 22 年度の業績や資本効率の改善が評価されている。今後も我が国製造業の強みを発揮するとの予測が広く共有されているものと思われる(日本の工作機械業界の収益構造は別途配布予定)。

工作機械の受注状況【5月確報】※速報値は6月 12 日発表
1.概況(5月の受注):
受注総額 受注総額は、1,195.2億円
(前月比△ 9.9 %:2ヵ月連続減少、前年同月比△ 22.1 %:5ヵ月連続減少)
受注総額は、 2021 年2月(1,056 億円)以来、27 ヵ月ぶりの 1,200 億円割れ。
GWの稼働日数減や大型受注の剥落が影響。しかし 1,000 億円超は 28 カ⽉連続。
内外需とも減少したが、これまでの市況に大きな変化は見られず、今後の動向に注意。
(1)内需 378.1 億円(前⽉⽐ △ 9.4 % 前年同⽉⽐ △ 23.6 %)
3ヵ月ぶりの 400 億円割れ

■一般機械(産業機械等・金型)向け受注
・⼀般機械計は、3カ⽉ぶりの 180 億円割れ。産業機械等は、2カ⽉連続の 160 億円割れ
・建設機械は、11 カ月ぶりの 15 億円超。金型は5カ月ぶりの 20 億円割れ。
・⾦型が大きく減少した一方、産業機械等は前月比微増で横ばい圏の動き

■自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注
・⾃動⾞計は、3カ⽉ぶりの 80 億円割れ。100 億円割れは5ヵ月連続。
・⾃動⾞部品は、2カ⽉連続に 60 億円割れ。完成⾞は4カ⽉連続の 20 億円超
・⾃動⾞関連需要は、部品、完成⾞とも盛り上がりに⽋ける状況が継続

(2)外需 817.2 億円(前⽉⽐ △ 10.2 % 前年同⽉⽐ △ 21.3 %)
3カ⽉ぶりの 900 億円割れ。2021 年8月(813 億円)以来、21 カ月ぶりの 850 億円割れ。
前月比:2ヵ月連続減少   前年同月比:5ヵ月連続減少。
大型受注の剥落もあり主要3極すべてで前月比減少も、800 億円超の水準を維持。

■主要3極別受注
①アジア  360.1 億円(前月比△ 12.4、前年同月比△ 25.5)
 アジア計は、中国、インド等で前月比減少し、3ヵ月ぶりの 400 億円割れで本年最低額。
 東アジアの減少をその他アジアがカバーし、 堅調⽔準持続
-東アジアは、2カ⽉連続の 300 億円割れ
 -中国は、4ヵ月ぶりの 250 億円割れ
 -韓国は、7ヵ月ぶりの 30 億円超
-その他アジアは、インドの反動減が寄与し、 2カ⽉ぶりの 100 億円割れ
 -インドは、大型受注の反動減で前月比半減も、2カ月連続の 30 億円超
②欧州 179.0 億円(前月比△ 13.8、前年同月比△ 12.7)
欧州計は、EUのほか、イギリスやトルコなどで前月比減少し、9カ月ぶりの 180 億円割れ
-EU計は7カ月ぶりの 140 億円割れ
 -ドイツは、9カ⽉連続の 40 億円超と堅調持続
 -イタリアは、3カ⽉連続の 30 億円超
 -イギリス(26.5 億円)は、9カ⽉ぶりの 25 億円超
 -スイス(16.9 億円)は、4カ⽉ぶりの 15 億円超
③北⽶ 258 億円(前月比△ 4.9、前年同月比△ 23.3)
北⽶計は、3カ⽉連続の 250 億円超と堅調持続
-アメリカは、24 カ⽉連続の 200 億円超(222.1 億円)
-メキシコは、4カ⽉連続の 10 億円超(15.1 億円)

■主要国・地域の金属加工機械(切削型+成形型)生産額(GARDNER INTELLIGENCEより)
(1)世界の生産額(45 ヵ国計、2022 年見込み) 825.8 億ドル(前年比△ 3.0 %)
(2)日本の生産額(2022 年見込み) 104.6 億ドル(前年比△ 0.8 %)
 2年ぶりの減少。2年連続の世界第2位。
(3)中国は2年連続増加。10 年ぶりの 270 億ドル超。14 年連続で世界1位。
(4)東アジア勢(中国、日本、韓国、台湾)で世界全体の 55.7 %のシェア

《2022 年世界の金属加工機械(切削型+成形型)生産額》

■新型コロナ禍で長らく中止されていた、記者会見後の稲葉会長への“ぶら下がり取材”が復活した。飲食を伴わない形での開催はあったが、軽食をつまみながらの“談笑”スタイルは久しぶりだ。畏まった記者会見とは趣を異にして、他愛もないことも交えながらの数十分は、貴重な情報収集の場。目下、足りない部材はケーブル類との話が印象に残った。