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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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日本ものづくりワールド2023が開催された

2023 年 06 月 28 日

 RX Japanが主催する展示会「日本 ものづくり ワールド 2023」が6月 21 日から 23 日まで東京ビッグサイト東展示場で開催された。この展示会は日本のものづくりに関係する下記の 10 タイトルの展示会で構成されている。「サブ」と表記してあるのは、その展示会テーマのエリアに表記されているサブテーマを意味する。
本展を構成する 10 タイトルの展示会
①第6回 工場設備・備品展「Fac Tex」
サブ:「バリ取り・洗浄」「脱炭素・省エネ工場」
②第6回 次世代3Dプリンタ展「AM Japan」
サブ:「CAE」「設計・製造アウトソーシング」
③第 35 回 設計・製造ソリューション展「DMS」
サブ:「CAD/CAM&PLM/PDM」「SCM・ERP・生産管理システム」
④第6回 ものづくりAI/IoT展「Aio Tex」
サブ:「3次元測定」
⑤第1回 製造業DX展「MDX」
⑥第5回 計測・検査・センサ展「Measure Tech」
⑦第 14 回 ヘルスケア・医療機器 開発展「MEDIX」
⑧第6回 航空・宇宙機器 開発展「Aero Tech」
⑨第1回 ものづくりODM/EMS展「ODM」
⑩第 28 回 機械要素技術展「M-Tech」
サブ:「加工技術・機械材料」「表面処理・改質」「機構部品」「モーション技術・モータ」「ねじ・ばね」「油空圧機器・配管部品」
以上の合計 10 テーマである。
 RX Japanは展示会事業の専門家で、日本では公共団体や報道機関が主催することの多い展示会を、プロフェッショナルとして運営しており、毎回、多くの来場者を集めて出展者の満足感を保証している。

東ホールに向かう入口に事前登録コーナー

 「ものづくり」とは何だ、という議論があるが、この記事の目的ではないのでここでは触れないが、ご覧の通り、10 個のテーマをフワリと包み込む不思議な響きを持っている。しかし、一昔前の“博覧会”のように「ごった煮」感が拭えない。それを増幅するのが、アジアを中心とした海外パビリオンの存在だ。
海外パビリオンは 11 ヵ所
アジアから参加の 11 パビリオンは以下の通り。
 また東4~6ホールにはアジア勢が 11 のグループに分かれて出展していた。
【東4ホール】中国パビリオン①、ベトナムパビリオン
【東5ホール】台湾パビリオン(TMDIA/TBTA)①、台湾パビリオン(TMDIA/TBTA)②、中国パビリオン②
【東6ホール】台湾パビリオン(TMBA)③、中国パビリオン③、韓国パビリオン、中国パビリオン④、タイパビリオン
【東7ホール】中国パビリオン⑤

さらに展示化を複雑にして判りにくくしているのが、地方公共団体からの出展ブースだ。

地方公共団体は多数の参加
〇内の数字は参加企業数で()内は小間番号
 いばらき宇宙ビジネス創造コンソーシアム⑤(31-21)/ふくしま医療機器開発支援センター⑦(32-32)/ふくい産業支援センター⑨(32-44)/石川県産業創出支援機構⑩(33-6)/岐阜県・各務原市⑦(33-22)/愛媛県・新居浜市・西条市・えひめ東予産業創造センター⑦(33-44)/ 燕三条地場産業振興センター㉒(34-6)【新潟県】/とくしま産業振興機構⑨(34-20)/くまもと産業支援財団⑤(34-48)/上越ものづくり協議会⑥(35-1)/東京都中小企業支援公社⑰(35-6)/にいがた産業創造機構⑮(35-18)/長岡ものづくりゾーン⑫(36-6)【新潟県】/会津地区ものづくり企業④(37-11)/福岡県中小企業振興センター⑲(37-4)/SABAE TECHNOLOGY⑧(38-6)【福井県】/柏崎技術開発振興協会⑧(38-24)【新潟県】/埼玉県産業振興公社⑩(39-6)/山形県企業振興公社㊶(40-6)/板橋区産業振興公社⑧(42-2)/大崎市(宮城県)⑥(43-26)/坂城町出品者協会⑥(44-1)【長野県】/江戸川区⑨(45-20)/みやぎ高度電子機械産業振興協議会⑨(45-32)/荒川区⑥(46-4)/駒ケ根テクノワールド⑦(46-32)【長野県】/福井県機械工業協同組合③(46-36)/群馬県伊勢崎市⑤(47-32)/千曲市産業支援センター⑤(47-48)/高崎市中小企業振興協議会⑨(48-24)/静岡県④(48-32)/SUWAものづくりグループ⑬(49-6)/ものづくり支援センターしもすわ④(49-18)/日立地区産業支援センター⑨(50-24)/わかやま産業振興財団⑩(50-32)/しまね産業振興財団⑪(50-44)/福島県しらかわパビリオン④(50-55)/品川区⑩(51-6)/葛飾区⑪(51-18)/富山県見本市共同出展実行委員会⑳(51-32)/浦安鉄鋼団地協同組合⑤(51-55)/いばらき中小企業グローバル推進⑯(52-6)/鳥取県産業振興機構⑨(53-6)/静岡県産業振興財団⑫(53-22)/足立ブランド⑫(54-32)/東大阪商工会議所⑫(54-6)/香川県・かがわ産業支援財団(かがわ次世代ものづくり研究会)⑩(54-22)/習志野商工会議所③(55-16)/かごしま産業支援センター(61-64)/やまぐち産業振興財団④(63-62)/東京都企業立地相談センター(67-71)
 以上、地方公共団体の出展者数は数え上げてはいないが、初めに紹介した 10 タイトルの展示会との関係が判らない。それぞれの小間には自社製品のPRを目指して3日間の会期中の商談に期待している出展者が待ち受けている。来場者は上記の 10 タイトルのテーマから、自身が必要とするアイテムを探しに来る。すると「看板」と「中身」が結びつかない現実に直面する。
 主催者もその辺の事情を分かっているのか、会場内で配布していた「会場案内図」には左端に「出展企業の探し方」が示されている。「1 スマホで下記から「出展社検索サイト」へアクセス→2 お目当ての会社を検索して小間番号を確認→3小間番号から右記の図でブースの位置をお探しください」とある。その努力は良しとするが、主催者は詰め込み過ぎではないか、と率直に思う。

東4ホールの入り口付近

THKはモーション技術コーナー

展示会ビジネスの明暗
 1980 年代後半のバブル経済真っ盛りの頃、都内の工場を郊外に移転させて、跡地にマンションを建てたほうが土地の有効活用になると、工業新聞までが論陣を張ったことがある。区から海側に工場アパートを作るから移転するように圧力をかけられている町工場のオヤジさんを取材したことがある。私の記憶では故・小渕首相が「ものづくり」という言葉を使って製造業にスポットを当ててくれたが、大勢は変わらなかった。それは農協に気を遣うほうが、製造業より票になるからだ、と長老が言っていたが、その通りだと思う。
 時代が変わり、これからは“産業振興”だと舵を切り、国の産業政策としては“補助金”をばら撒き、地方公共団体はエリア内の企業に呼び掛けて展示会出展を促す。その結果が上記のような、我も我もと、闇雲に補助金を使っているように見える。

安易な産業支援
 記者は最近の補助金行政の行き過ぎに危機感を持っている。それが“当たり前”“前提”となった、産業界が自助努力を忘れていくのが恐ろしい。上記の地方公共団体は出展社を、会場に並べるだけで、それ以上に踏み込んだ取り組みはしていない。中には地元を紹介するパンフットを置いていた小間もあったが、たくさん人がくる展示会で「ものづくり」がテーマなら、そこに参加することに補助金を出しても問題はない、と判断しているのだろうか?
 出展者の中にはAMATERAS(32-2)、NCネットワーク(43-6)、MACHICOCOなどのように自社の責任で複数の企業を束ねて参加している小間が見られた。このように、ある目的のもとに結集しているグループなら、それは良いが、県や市区町村が「ものづくりワールド」に戦略的な出展をしているとは思えなかった。
 さらにここまで詰め込み過ぎて、開会時間中に大きな地震が来たら来場者は避難できるのか? 事前に管轄消防署のチェックは受けているのだろうか、と心配しながら会場を後にした。