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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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天田財団 第6回 レーザプロセッシング助成研究成果発表会を開催

2023 年 05 月 17 日

 公益財団法人・天田財団は4月 19 日にパシフィコ横浜のアネックスホールにおいて「高付加価値製造を実現するレーザアディティブマニュファクチャリング」と題した、同財団が助成した研究の成果発表会を開催した。オンラインでも 150 名ほどの参加者があるハイブリッド方式での開催となった。また昨年に続き《OPIE’23》併設イベントとして開催された。
 開催に先立ち代表理事理事長の末岡愼弘が挨拶した。

末岡愼弘代表理事理事長

 「天田財団は 1987 年に創立され今年で 36 年目になる。金属等の塑性加工分野とレーザプロセッシング分野を対象に研究開発と国際交流の促進に対して助成を行っており、これまでの助成額は累計 37 億 1,551 万円、累計助成件数は 2,108 件になった。これらの成果を社会実装に繋げていく活動の一環として本日の発表会を位置付けている。
 パンデミックは収束の方向にあると思うが、ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過して世界経済は大きなダメージを受けており、先行きの不透明感が増している。現在の産業界にはDXやSDGsさらにカーボンニュートラルという喫緊の課題が山積しているが、私はいつの時代も、科学技術のイノベーションこそが課題を解決して次の時代を切り開く原動力となると考えている。これからも次世代を担うイノベータを応援・援助していきたい」と力強く語った。
 続いて大阪大学接合科学研究所の塚本雅裕教授が「カーボンニュートラル社会を実現するレーザアディティブマニュファクチャリング」と題する基調講演を行った。

基調講演・大阪大学接合科学研究所塚本雅裕教授

 塚本教授の講演は、これまでのカテゴリーを超えるレーザ技術の新機軸を紹介した。従来の工学的な分類では切削系工作機械を使った除去加工か金型と加圧機構をつかった成形加工が中心だったが、レーザ技術を使った「アディティブマニュファクチャリング技術」が有用だと、具体的な技術例を挙げて紹介した。ついで以下の4名が助成を受けた研究成果の発表を行った。
【助成研究成果発表会】
「X線透視法を用いたPBF-LB/Mの溶融挙動のその場観察」
 産業技術総合研究所・佐藤直子主任研究員
「選択的レーザー溶融法で造形したNi基超合金のクリープ特性劣化と後処理による改善」
 東京都立大学・筧 幸次教授
「金属AMによる高機能金型製造のためのレーザ焼結プロセスの可視化と高機能金型製造への応用」
 九州工業大学・楢原浩之教授
「雰囲気制御を利用したWC-Co超硬合金のレーザメタルデポジション技術の開発」
 大阪産業技術研究所・山口拓人主任研究員
※上記4講演の要旨は「FORM TECH REVIEW」(天田財団)の 2022 Vol.31 に掲載されている。
さらに上記に続いて2件の企業講演が行われた。

【企業講演】
「できるのかAMの実製品活用」日本AM協会・澤城俊幸専務理事
「2023 年AM動向」矢野経済研究所・小山博子上級マネージャー
【総評と質疑応答】 大阪大学 塚本雅裕教授

 発表会は基調講演に続いて助成研究成果発表会、企業講演、総評、交流会と続き、最後はヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルにおいて交流会が開催された。