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ことラボ・レポート

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ブリンクマン・ポンプ 森田 源太 代表取締役/「ブリンクマン・ポンプの挑戦」

2022 年 10 月 07 日

ブリンクマン・ポンプ・ジャパン株式会社
代表取締役
森田 源太 
1980 年 10 月 29 日生まれ 神奈川県出身
2003 年 株式会社ドウシシャ 入社
2008 年1月 ブリンクマン・ポンプ・ジャパン株式会社 入社
2014 年 4月 代表取締役就任


 あまり知られてはいないが、工作機械で使用されているクーラントポンプは、大きく分けて 2 種類のポンプがある。「ダーティ液用ポンプ」と「クリーン液用ポンプ」の2種である。
 「ダーティ液用ポンプ」は、切りくず・スラッジを含むクーラント液をフィルターなどに搬送する用途で使われ、「クリーン液用ポンプ」は、濾過されたきれいなクーラント液を工作機械に送るポンプである。当社は、この「ダーティ液用ポンプ」で世界トップシェアを誇っており、ドイツ本社は 1950 年に設立され約 70 年の歴史があるが、日本市場への参入は遅く、日本法人である当社の設立は 2008 年となる。

 驚いたことに、当社が日本に参入した際には日本市場では「クリーン液用ポンプ」がほぼすべての用途で使われており、「ダーティ液用ポンプ」はほとんど見かけることがない状況だった。お客様の多くは、クーラントポンプは消耗品として考えており、漏れ・詰まりなどのトラブル時や、破損したりするとすぐにポンプを新品に交換していた。

 「クリーン液用ポンプ」と「ダーティ液用ポンプ」は同じ渦巻式のポンプだが、その用途の違いから構造や使用する材質は全く異なる。「クリーン液用ポンプ」はメカニカルシールなどでポンプの漏れを最小化し、クリアランスを最小にしてステンレスプレスのインペラを使用する小型で軽量なポンプであるのに対し、「ダーティ液用ポンプ」はシールレス構造で、切りくず・スラッジがポンプ内部を通りやすいように内部のクリアランスを大きくし、耐久性を上げるために鋳物のボディ、鋳鋼製のインペラなどを使用した強靭なポンプとなっている。価格も「ダーティ液用ポンプ」の方が高価になる。

 欧州では、工作機械に使用される「ダーティ液用ポンプ」と「クリーン液用ポンプ」のマーケットはほぼ1対1となっており、クーラント装置もダーティ層、クリーン層がはっきりと分かれている。クーラント装置は日本の装置と比較して大型であり、ペーパーフィルターなどを使用した『全量濾過方式』が一般的となっている。

 日本では、切削加工におけるクーラント装置はコンベア内にフィルターを内蔵するなど、非常にコンパクトになっており、明確なダーティ層はなく「1 次クリーン層」、「2次クリーン層」と呼ばれるタンクにそれぞれクリーン液用ポンプが搭載されるシステムが主流となっている。
 このような背景から日本法人を設立してしばらくは、工作機械メーカーの標準機への採用が難しかったため、全国のお客様を訪問して、ポンプでお困りのお客様を徹底的に探しだしてテストを繰り返してきた。意外にも、切りくず・スラッジによるポンプのトラブルを抱えているお客様は非常に多く、当社の頑丈なポンプで寿命が何倍にも延びたり、タンクのスラッジを毎日清掃していた現場をメンテナンスフリーのタンクにするなど、多くのお客様の生産現場において、生産性向上に役立つことができた。
 その甲斐あって、徐々に工作機械メーカーの標準機への採用が増えていくことになった。

 生産性向上や自動化の波で、近年では廃液や切りくずを扱うクーラント装置も注目されている。切削加工でのクーラント装置では「1次クリーン層」、「2次クリーン層」があると前述したが、ワークの材質や切りくずの形状によっては「1次クリーン層」に切りくずやスラッジが溜まってしまうケースがある。
 これを防ぐためにクーラントタンク内にスラッジを溜めない『スラッジフリー』のクーラントタンクの開発が、近年 大手工作機械メーカーの間で始まっている。

 クーラントタンクに切りくずを溜めないということは、オペレーターの方々の清掃作業の軽減はもちろん、クーラント液の長寿命化という効果もあり、これにより環境負荷を減らすことも期待することができる。『スラッジフリー』のシステムには、切りくずを含むダーティ液を効率良く吸い上げてフィルターに供給することができる、当社の「ダーティ液用ポンプ」が効果的。当社のベストセラーシリーズ【SAL・SGL シリーズ】は『急速吸込み浸漬型ポンプ』であり、軸インペラ/セミオープン式インペラを搭載しており、タンク内に乱流を起こすことでポンプ内部に切りくずを引き込む構造のため、切りくず・スラッジの沈殿を防ぎ、確実にフィルターへと移送することができる。対象となる切りくずやスラッジの大きさに合わせ、幅広いラインナップから選定できることも当社の特徴である。

 「ポンプは切りくずを吸わないもの」から「ポンプで積極的に切りくず・スラッジ吸わせる」というパラダイムシフトにより、以前よりもクーラント装置が進化してきていると実感している。
 しかし、まだまだポンプは消耗品で「クーラント液も汚れたらどんどん交換すればいい」というお客様も多いので、今後も数多くのお客様を訪問し、当社の「ダーティ用ポンプ」で効果を実感してもらいたいと考えている。


ブリンクマン・ポンプ・ジャパン株式会社 会社情報
【沿革】
1950 年 ドイツ ベルドールにてブリンクマンポンプ 創業
1993 年 エアーの入ったクーラント液を安定的に送液する急速吸込み浸漬型ポンプ(特許:脱泡機能)の製造・販売を開始
1997 年 USAにBrinkmann Pumps Inc. (ミシガン州 Wixon)設立
2005 年 ブリンクマン自社製スクリューポンプの製造・販売を開始
2005 年 自動車産業のアルミ量産加工向けに破砕機を内蔵したカッターポンプの製造・ 販売を開始
2006 年 省スペース化に貢献する水平型エンドサクションポンプの製造・販売を開始
2008 年 ブリンクマン・ポンプ・ジャパン(神奈川県平塚市)設立
2012 年 日本国内にて高圧ポンプの組み立てを開始
2013 年 スチール用カッターポンプの製造・販売を開始
2014 年 業務拡大のため、本社を神奈川県藤沢市に移転
2014 年 代表取締役に森田源太が就任
2017 年 日本国内にて低圧ポンプ(リフティングポンプ)の組み立てを開始
2017 年 豊田営業所を開設
2020年  IoTポンプコントローラ 「bplogic」の販売を開始

ブリンクマン・ポンプ・ジャパンは、ドイツに本社のあるクーラントポンプなどを製造・ 販売するメーカーの日本法人。「お客様に最適なポンプを選定する」という使命のもと、様々 な生産現場を訪問し、お客様の要望や課題に対してドイツ本社の技術を日本式のサービス で提供している。 製品ラインナップは、工作機械で使用される低圧ポンプから高圧ポンプまで用途に合わせて幅広く、長期にわたってメンテナンスフリーで使用することができる、最適なポンプの提供体制を持つことが 特徴。 国内生産体制を拡充しており、サービス体制の万全とともに日本と東南アジア市場を担っている。従業員は 17名

ブリンクマン・ポンプ・ジャパン株式会社のホームページはこちら

※2022 年 10 月7日 サードウェア研究会よりことラボ・レポートに移動