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工作機械技術振興財団 「技術振興賞」などの贈賞式開催
公益財団法人 工作機械技術振興財団(理事長・安達俊雄)は、第 46 回「工作機械技術振興賞」と「試験研究助成」の各賞を選定し、6月 17 日都内のホテルで贈賞式を開催し懇親会を行った。
安達理事長の挨拶
本財団は株式会社牧野フライス製作所の創業者・牧野常造氏の私財を基金として 1979 年に設立された。工作機械技術の振興を目的として試験研究を助成するとともにこの分野の優れた研究成果に対して工作機械技術振興賞を表彰してきた。「論文賞」は日本機械学会、精密工学会、砥粒加工学会、電気加工学会で発表された論文の中から工作機械の発展・進歩に大きな貢献が期待できる独創的な論文の推薦をうけ審査して表彰する。学生を対象とした「奨励賞」は、この4学会の学生会卒業研究発表論文集の中から審査委員会で審査している。
今回は論文賞5題 19 名、奨励賞5題 20 名、合計 10 題 39 名に、試験研究助成については助成Aが6件、学生を対象とした助成Bが3件そしてプロジェクトを対象とした特別試験研究助成についても3件を表彰した。なお隔年に実施される人材育成賞は、今年は実施する年だったが残念ながら該当案件はなかった。
今年を含めて同財団がこれまで贈賞してきた案件は累計で 714 件(2,583 名)、試験研究助成については比較歴史の浅い特別試験研究助成の 20 件を合わせて累計 322 件。
財団の事業は地道な活動ではあるが、工作機械技術の進歩・向上に間接的ながら着実に寄与してきたものと考えている。財団を取り巻く環境、わが国経済と取り巻く環境は大きな変化を迎えているが「継続は力なり」の信念のもと引き続き社会貢献をしていく。

挨拶をする安達俊雄理事長
伊東審査委員長の審査報告
この後に行われる懇親会は財団理事、来賓が参加するので受賞者の皆さんは積極的な意見交換をして欲しい。今後の研究に役立つような情報を手に入れていただきたい。財団としては“軍資金”はたくさんある。ただ申請数が最近減っている。懇親会の交流の中から申請数が増えることを期待している。
今回の候補論文は 14 編だった。審査の結果5編が受賞したが、財団としては7編前後を想定している。昨年は3編だった。ちょっと少ない。皆さんには候補論文をどしどし出してもらいたい。
審査の過程で感じたことは、まず学会の論文審査の質が落ちてきた。推薦されてきた論文の中には推薦に値しないようなレベルのものを平然と推薦してきている。もう少し質の高い論文を推薦してもらいたい。学会に推薦をお願いするのを諦めて“一般公募”のみにするか、とも考えているくらいだ。皆さんが所属の学会で機会があれば「校閲体制を如何に見直すか」と議論して欲しい。
次に大きな問題として“オープンアクセス”の学会・論文が増えていて、これらの質が玉石混交で審査するのが怖い。逆に言うと皆さんがどこに投稿するかが重要だ。この席なので具体的に言うがオランダのエルゼビア社はいろいろな論文集を出しているが、それを見ると「ちょっと問題ではないか」というものが散見される。つまりどこに投稿するかについてを検討して欲しい。
最後に当財団は牧野フライスさんの支援を受けている。審査委員会としては工作機械の構造設計、生産システムのシステムレイアウト問題をテーマにしたものを期待しているが現時点では皆無に等しい。この分野は、ドイツに遅れを取っている分野だ(最近のドイツは少し事情が違うが)。財団のホームページに「公募プロジェクト助成」があるのでクセスして欲しい。
今年の各受賞結果
第 46 次 工作機械技術振興賞・論文賞
第 46 次 工作機械技術振興賞・奨励賞
第 46 次試験研究助成
助成A(一般研究者)
助成B(学生)
特別試験研究助成(プロジェクト研究)
各賞受賞者に贈賞が行われたのちに来賓の経済産業省製造産業局産業機械課の須賀千鶴課長が来賓の祝辞を述べた。

来賓祝辞を述べる経済産業省製造産業局産業機械課・須賀千鶴課長
日本の工作機械産業は長年にわたり世界中のユーザの多様な要請に応えることで高い信頼を獲得し、世界トップクラスのシェア、評価を獲得するまでになり、我が国製造業を代表する基盤ともいうべき産業だ。昨今の工作機械産業を取り巻く環境は大きく変化しており、諸外国との市場競争も激化している。日本が技術優位性を持つことは経済安全性上も大変重要であり、政府としては経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に工作機械と産業用ロボットを位置付けている。今後も積極的な投資や開発を行う事業者を政府としてしっかり支えていく。
工作機械はマザーマシンとして生活用品から航空宇宙までの幅広い分野の生産に不可欠な製造業の基盤だ。GXグリーントランスフォーメーションの観点では、工作機械そのものの省エネ化に加えて、例えば自動車のEV化に伴う加工精度の高度化や難削材の加工の実現、DXデジタルトランスフォーメーションの観点では工作機械の複合化や自動化、機上計測による自動補正、工作機械と周辺機器の連携などの新たな価値や市場ニーズへの対応を期待されている。
今回受賞された皆様はこうしたGXやDXに対応する内容が多かったと認識している。こうした取り組みが工作機械産業の将来にわたる競争力の強化に資するものであり、今回の受賞を一つのステップとして業界の発展をさらにけん引していくことを期待しています。