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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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日工会の月例記者会見(2025年4月)

2025 年 05 月 07 日

 (一社)日本工作機械工業会は、4月 24 日に3月分の受注額確報値を発表した。

【稲葉会長のコメント】
 4月 13 日に大阪市夢洲で「2025 大阪・関西万国博覧会」が開幕した。過去最大級の 158 ヵ国・地域が参加し、10 月 13 日の会期末までに 2,800 万人の来場者が見込まれている。思い返すとわが国初の万博だった 1970 年の「大阪万博」は規格大量生産型の近代社会をコンセプトとし、まだ情報源の少なかったなかで豊かな未来を視覚的にイメージするうえで、大変企画的なイベントだった。私も行ったが頭に残っているのは岡本太郎の『太陽の家』だけ。当時に出品されたハイライトのリストを見てみたが何一つ覚えていない。それでも子供たちの心に残る万博になれば良いなと願っている。今回の万博のコンセプトは「未来社会の実験場」となっている。情報技術が発達した今日、未来をイメージする機会はたくさんあるが、個々の製品や技術については断片的な情報にとどまりがちで、未来を社会全体で有機的にイメージするうえで、万博が多くの人々、とりわけ若い世代にとって良い体験の機会となることを期待している。
 さて世界経済では2月以降、米国の関税措置が台風の目になっている。4月は、当業界にも深く関係する措置が相次ぎ実行に移された。まず4月2日には、自動車の輸入に関する追加関税が発動され、日本から輸入される乗用車の関税がこれまでの 2.5 %から 27.5 %へ、またトラックに関しては最大 50 %と、大きく引き上げられた。自動車及びその部品は対米輸出額全体の約 35 %を占めている。日本経済全体への影響が懸念される。
 さらに4月5日には相互関税も発動された。金融市場での混乱や米国製造業界からの反発を受けて、現時点では中国向けを除き、ベースライン課税の 10 %のみが一律に課されているが 90 日間の停止期間が明けた後、各国ごとに決められた税率が適応され、日本からの輸入に関しては 24 %が掛かることになる。
 米国の一方的な措置が世界経済に急激な対応を迫った例として 1971 年のニクソンショックが有名だが、今回の全面的な関税処置はこれに匹敵しあるいはこれを大きく上回る影響を引き起こす恐れがある。4月 17 日にワシントンDCで開かれた日米関税交渉の初顔合わせには、トランプ大統領自身が出席して、早速日本側に対応を強く迫った。今月中にも予定される第2回会合以降でも大変厳しい交渉が予想される。石破総理、交渉代表の赤沢経済再生担当相はじめ日本政府は自由貿易経済と国益の確保に向けて全力で取り組むようお願いしたい。
 こうした中で3月の受注総額は
1,511 億円(前⽉⽐+ 27.8 %(2⽉連続増加前年同⽉⽐+ 11.4 %(6連続増加
で、30 カ⽉ぶりの 1,500 億円超え。
(1)内需が6億円(前⽉⽐+ 45.9 % 前年同⽉⽐+ 0.0 %)
前⽉⽐で2カ⽉連続増加、6カ⽉ぶりの 400 億超え。
(2)外需は 1018.4 億円(前⽉⽐+ 20.6 % 前年同⽉⽐+ 17.9 %
前⽉⽐は2カ⽉連続、前年同⽉⽐で6カ⽉連続増加で、3カ⽉ぶりの 1,000 億円超え。

Ⅰ.マクロ経済の概況
1.全体経済
足元の国内経済は、緩やかに回復するものも、米国の通商政策などに対する不透明感がみられる。
・月例経済報告(4月 18 日):景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感が見られる【表現変更】
・日銀短観(3月調査・4月1日):業況判断(最近、製造業)
大企業 :+ 12(変化幅△2Pt)四半期ぶりの「悪化」
中小企業:+ 2(同 +1Pt)4半期連続の「改善」
先行きは、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっている。
・月例経済報告(4月):先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっている。加えて、物価上昇の継続が消費マインドの下振れなど通じて個人消費に及ぼす影響なども。我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要がある。
・日銀短観(3月調査):業況判断(先行き、製造業)
大企業 :+ 12(変化幅+0Pt)
中小企業:△1(同 △3Pt)

2.製造業の動き
足元の設備投資は、持ち直しの動きがみられる
・月例経済報告(4月):設備投資は、持ち直しの動きが見られる。【据え置き】
・日銀短観(3月調査):設備投資額(製造業)
*土地投資額を含み、ソフトウェア投資額、研究開発投資額は含まない
・鉱工業生産(2月):基調判断は、「一進一退」に据え置き
鉱工業生産指数(2月速報):102.2(前月比:+ 2.3 %) 4カ月ぶり上昇
・機械受注(2月):機械受注は、持ち直しの動きが見られる【据え置き】

Ⅱ.工作機械の受注額【3月確報】 ※速報値は4月9日発表

1.概況【3月受注】:
受注総額:
 1,511 億円(前⽉⽐+ 27.8 %(2⽉連続増加前年同⽉⽐+ 11.4 %(6連続増加))
受注総額は、30 カ⽉ぶりの 1,500 億円超え。
この受注増は、内需及び外需(中国、インド)が貢献
(1)内需 492.6 億円(前⽉⽐+ 45.9 % 前年同⽉⽐+ 0.0 %)
前⽉⽐で2カ⽉連続増加、6カ⽉ぶりの 400 億超え。
(2)外需 1018.4 億円(前⽉⽐+ 20.6 % 前年同⽉⽐+ 17.9 %
前⽉⽐は2カ⽉連続、前年同⽉⽐で6カ⽉連続増加、3カ⽉ぶりの 1,000 億円超え。
⇒3⽉の受注は、内外需で前⽉⽐・前年同⽉⽐ともに増加するも、期末効果や 特需の寄与⼤。⽶国関税措置の影響拡⼤も懸念され、今後の動向を注視。

.内需【3分】
内需 492.6 億円(前⽉⽐+ 45.9 % 前年同⽉⽐+ 0.0 %)
(1)内需総額
・6カ⽉ぶり 400 億円超え。490 億円超えは 12 カ⽉ぶり。
・前⽉⽐で2カ⽉連続、前年同⽉⽐で5カ⽉連続増加。
・年度末効果で増加するもこの先継続的に改善が進むか不透明な状況。

(2)業種別受注
・主要4業種
前⽉⽐:「航空・造船・輸送⽤機械」以外増加
前年同⽉⽐:「⾃動⾞」と「航空・造船・輸送⽤機械」が増加
全 11 業種中
前⽉⽐:増加8業種(「⼀般機械」「⾃動⾞」等)
前年同⽉⽐:増加2業種(「⾃動⾞」「航空・造船・輸送⽤機械」)
・「航空・造船・輸送⽤機械」は前年同⽉⽐+ 76 %と⼤幅増加。

主要4業種

(3)一般機械(産業機械等・金型)向け受注
・⼀般機械計は、12 カ⽉ぶりの 190 億円超え。建設機械は 22 カ⽉ぶりの 15 億円超え。
・⾦型は前⽉⽐で2カ⽉連続増加するも、10 億円台で低迷が続く。

(4)自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注
・⾃動⾞部品は、12 カ⽉ぶりの 70 億円超え。
・完成⾞は3カ⽉ぶりの 30 億円超え。
・3⽉は⼤幅増加も、国内での新⾞開発⽅針が定まらない中、22 年4Q以降弱い動きが続く。

3.外需【3月分】
(1)外需 1018.4 億円(前⽉⽐:+ 20.6 %、 前年同⽉⽐:+ 17.9 %)
・3カ⽉ぶりの 1,000 億円超え。7カ⽉連続の 800 億円超え。
・前⽉⽐ 2カ⽉連続増加。 前年同⽉⽐6カ⽉連続増加。
・全地域で前⽉⽐増加。 状況に⼤きな変化は⾒られない。

(2)主要3極別受注
①アジア
アジアの受注額

アジア計は、3カ⽉ぶりの 500 億円超え、12 カ⽉ 連続の 400 億円超と堅調持続
-東アジアは、3カ⽉ぶりの 400 億円超え。
-中国は⾃動⾞の好調や全⼈代に合わせた政策の 動き等から3カ⽉ぶりの 360 億円超え。
-その他アジアも 146.5 億円で、5カ⽉ぶりの 140 億 円越え。
‐インドは5カ⽉ぶりの 90 億円超えで、過去最⾼額を記録

アジアの業種別受注
・主要4業種は、前年同⽉⽐で全て増加。前⽉⽐は「航空・造船・輸送⽤機械」が減少するも、 「⼀般機械」と「⾃動⾞」はそれぞれ3割超え、「電気・精密」は6割超え増加。
・⼀般機械は、中国の伸びが⼤きく、3カ⽉ぶりの 160 億円超え。
・⾃動⾞は、中国が 29 カ⽉ぶりに 120 億円超え、インドも3カ⽉ぶりの 25 億円超えの計 150 億円超え。
・電気・精密は、インドで 50 億円超えの⼤型受注あり、5カ⽉ぶりの 130 億円超え。

欧州
欧州の受注額
欧州計
は、2カ⽉連続 150 億円超え、160 億円超えは3カ⽉ぶり。
-ドイツは、2カ⽉ぶりの 35 億円割れ。
-イタリアは、6カ⽉ぶりの 20 億円超え。
-EU(121.3億円)は、2カ⽉連続の 100 億円超え。
-その他の⻄欧は2カ⽉連続の 40 億円超え。

欧州の業種別受注
・主要4業種は、「⾃動⾞」を除き、前年同⽉⽐で増加。
・⼀般機械は、10 カ⽉ぶりの 50 億円超え。イタリアが 10 億円以上増加。
・⾃動⾞は、電動⾞関連の投資が⾜踏みとなり、2024 年終盤から4カ⽉連続の 20 億円割れ。
・電気・精密は、各国で伸び悩み、5カ⽉連続の 20 億円割れ。
・航空・造船・輸送⽤機械は、2カ⽉ぶりの 30 億円割れではあるが、概して堅調。

北米
北米の受注額
北⽶計
は、2カ⽉ぶりの 250 億円超え
-アメリカは、「航空・造船」の前⽉⽐3割減を「⼀ 般機械」等が補い、前⽉⽐、前年同⽉⽐ともに2カ⽉連続増加。

の業種別受注
・主要4業種は、「⾃動⾞」を除いて前年同⽉⽐で増加。
・⼀般機械は、3カ⽉ぶりの 80 億円超え。
・⾃動⾞は、2カ⽉連続の 40 億円超え。前⽉⽐微増でのゆるやかな増加傾向が継続。
・電気・精密は、4カ⽉ぶりの 20 億円超え。⼀般機械と同じく前⽉⽐微増が3カ⽉連続。
・航空・造船・輸送⽤機械は、前⽉⽐減少するもエンジン部品加⼯需要が引き続き活況。

AMT事務局コメント
2025 年2⽉(P):3億 8,990 万ドル、前⽉⽐+ 9.9 % 前年同期⽐+ 12.5
「AMTが発表した⽶国製造技術受注報告によると 2025 年2⽉の⾦属加⼯機械の新規受注額は3億 8,990 万ドルで、前⽉⽐ 9.9 %増、前年同⽉⽐ 12.5 %増となった。2025 年の最初の2カ⽉を通して、⼯作機械受注の楽観的な予測は実現し始めたかのようである。機械受注額の増加に加え、販売台数も 2025 年に⼊り回復している。最⼤の需要先であるジョブショップは1⽉⽐ 25 %近く受注を伸ばしたものの、昨年暮れの レベルには届いていない。」
★次回、2025 年4月次の受注額の報告は、速報が 2025 年5月 15 日(木)15 時、確報値は 2025 年5月 22 日(木)10 時 30 分からの記者会見で発表。報道解禁は同日 15 時。
★★これまで毎月開催されていた月例記者会見は、今後3カ月に1度の開催になる。国内にある製造業系の工業会で「月例記者会見」を開催しているのは日工会だけである。自動車、電機と言った日本産業の主役たちを支えている産業界の“誇り”を感じていたが、今後は3か月ごとの開催となる。二期4年間で皆勤賞の稲葉善治会長に改めて感謝したい。お疲れ様でした。
次回の記者会見は7月 23 日(水)。