ことラボ・レポート
《OPIE‘26》が開催された
光技術に関する総合展《OPIE(OPTICS & PHOTONICS International Exhibition)’26》が『パシフィコ横浜』で4月 22 日から 24 日に開催された。「ことラボSTI」は、工作機械などの金属加工技術よりもより高精度な世界を追求する“光技術”に注目してきたが《OPIE》展は重要なイベントの一つだ。しかし展示会の構成は複雑だ。
資料によると同展示会は8つのサブテーマで構成されている。①《レーザーEXPO》(主催:一般社団法人レーザー学会)、②《レンズ設計・製造展》(主催:NPO法人日本フォトニクス協議会)、③《ポジショニングEXPO》(主催:OPTRONICSメディア)、④《宇宙・天文光学EXPO》(主催:NPO法人日本フォトニクス協議会)、⑤《光源・光学素子EXPO》(主催:株式会社オプトロニクス社)、⑥《光と画像のセンサ&イメージングEXPO》(主催:株式会社オプトロニクス社)、⑦《光通信・要素技術&応用EXPO》(主催:株式会社オプトロニクス社)、⑧[新規]《量子イノベーションフェア》(主催:一般社団法人量子フォーラム/株式会社オプトロニクス社)
いま展示会ビジネスは隆盛期にあるといえる。かつては地方公共団体、工業会、新聞社や雑誌社などが主催者として活躍していた。展示会のテーマは明確で守備範囲は限定されていた。しかし近年、展示会規模が大きく多くの来場者が見込める展示会が選ばれる時代がきた。すると展示会のテーマは《ものづくり展》などと曖昧なものとなり、それでも出展者は来場者数の多さにひかれて出展しているのが最近の傾向だ。《OPIE》展のポジショニングも微妙だ。

高市政権の重点投資対象の17分野
《量子イノベーションフェア》
《OPIE》展は、その意味では守備範囲が現時点では明確な従来型の展示会といえる。上記のように今回は8つのサブテーマを掲げているが、その中で今回加えられたテーマが《量子イノベーションフェア》だ。“量子”という言葉のついた展示会は初めて見た。アインシュタインが認めなかったという“量子もつれ”など、一般的な工学的世界では縁がない言葉に強くひかれたので少し紹介する。
同展の資料によると「高市政権は、量子技術やレーザー核融合をはじめとした先端的な光技術を成長戦略の柱のひとつとして位置づけ、産業競争力の強化に向けた支援を積極的に進めている。こうした動向を受け、OPIEでは量子分野に焦点を当てた特別企画「量子イノベーション」を、一般社団法人・量子フォーラムとの共催により開催した」とある。
量子技術とは、原子や電子、光子といった極微の世界で現れる量子の性質を利用し、従来の技術では実現が難しかった性能や機能を引き出す先端技術群だ。近年は実用に向けた開発・投資が加速しており、社会インフラや産業競争力に直結する技術として注目を集めている。
量子技術は大きく①量子計算(Quantum Computing)、②量子通信(Quantum Communication)、③量子センシング(Qiantum Sensing)、④量子材料・デバイス(Quantum Device/Materials)に整理できる。これらに共通する重要な要素が「光」だ。レーザーによる精密制御、単一光子の生成・検出、光学共振器や導波路などのフォトニクス技術は、量子状態を“作る・保つ・測る”のための中核を担う。
光は波の性質と粒子の性質を持つといわれている。量子の性格についても理解が困難だが光についても一般人には理解は易しくない。しかし《OPIE》展の常連出展者の一社『浜松ホトニクス』の製品に空間光位相変調器『LCOS-SLM』がある。この製品を知ったとき、簡単に“光”と口に出しているが、光にも“品質”があることに気が付いた。「粒子と波」といわれても切削工具でワークを削るようには「見える化」できない。しかし波動であるなら“波”の波長や高さを整えればパワーを集中できるだろう。またIT技術が急速に進化した 1990 年代に普及が進んだ光ファイバーのコネクタとして“フェルール加工”が話題になった。このときは1μmの加工精度が求められた。このように、光については、いずれは本格的に取り組まなければいけないものとして準備するべきだ。

今回展の『浜松ホトニクス』~「LCOS-SLM」は不出展

(公財)板橋区産業振興公社
もうひとつの町工場集積地 板橋区
関西なら東大阪市、関東なら大田区蒲田が町工場集積地として知られているが、東京にはほかに墨田区という古くからの集積地もよく知られている。しかし「板橋区」にも町工場の集積地であることを認識したのはこの《OPIE》展だった。個人的にはフェルール加工に対応した卓上旋盤の町田鉄工所や光学系総合企業のトプコンなどを取材した経験を持っているが、イメージは膨らんではいなかった。
板橋区産業振興公社は本展の常連出展者だ。今回展の参加企業は以下の8社だ。ブースで配布されていたパンフレットに記載されていた紹介記事のキャッチフレーズとともに紹介する。
①凸レンズ1枚から衛星搭載光学系まで:(株)ユーカリ光学研究所
②測れれば作れる:ジーフロイデ株式会社
③偏光板・波長板の先駆者:株式会社ルケオ
④高精度プラスチックレンズのパイオニア:日本特殊光学樹脂(株)
⑤レンズ研磨洗浄剤の駆け込み寺:有限会社オカベ
⑥高精度3D測定・高性能ズーム観察:ユニオン光学株式会社
⑦光学設計・開発及び製造:株式会社目白ゲノッセン
⑧光測定のニーズに広くお答えします:(株)システムズエンジニアリング
やはり“光学系機器”が中心だった。小間にいた公益財団法人・板橋区産業振興公社のスタッフに声をかけると「夢そして未来~いたばしの産業歴史紀行」と題した小冊子を渡された。奥付を見ると 2016 年発行で『いたばし産業見本市 20 回記念』誌だとわかる。
1996 年に板橋区が実施した工業集積地域活性化計画検討調査をもとに『いたばし産業見本市』が企画され、翌年 10 月に第1回の見本市が開催された。たしかこの展示会を取材した記憶がある。バブル経済が崩壊して、大田区でも「大田区産業振興協会」が 1995 年に設立され、大田区産業プラザ(PiO)も翌年開設されている。
同小冊子の表紙を開くと表3対向面に「写真でたどる産業ヒストリー」「板橋の近代化を担った産業人に出会う旅」とサブタイトルがつけられていた。いま産業史をライフワークにしている「ことラボSTI」には願ってもない資料だ。それによると区内には明治初頭から軍需工場が存在していたが、大正 14 年(1925 年)に志村地区が工業地域内甲種特別地区に指定されて以降、化学工業や危険物取扱工場が次第に集積していった。
軍需の後ろ盾を得て板橋区内には多くの光学系企業が進出し双眼鏡などを生産した。時代の推移とともに各企業はカメラづくりや画像処理関係など光学技術を武器に測量機・医療機器へと展開していった。さらに光学系・印刷系に加えて伸銅産業も板橋の産業界に大きな存在感を占めていた。江戸時代中期に水車を利用して発展した埼玉県朝霞市付近の伸銅業が近代化を図る過程で川越街道に沿って板橋に伝わり地域産業として根付いていった。銅の一次加工業である伸銅業は、他産業を支える大きな役割を果たし、昭和 25 年頃には区内の伸銅業は全国一の生産量を誇った。
板橋には、食文化とも関わっている。1923 年(大正 12 年)に浅草で創業したエスビー食品(株)は 1940 年(昭和 15 年)に板橋区宮本町に移転してきた。日本初の製パン用イースト製造をおこなった会社で、製パン業・製菓業向けのイースト製造大手のオリエンタル酵母工業(株)も板橋区小豆沢にある。同社は家畜や実験動物の飼料用の酵母製品でもよく知られ、日本の研究機関における生物学やその応用分野でも活躍している。
さらに印象的なのは「PEACOCK」ブランドのダイヤルゲージで知られる高精度・高品質の精密測定器の製造・販売を行う(株)尾崎製作所や東京光学機械(現・(株)トプコン)などでは、地方から上京してきた若い社員たちに「青年學校」を設立して親元を離れて見知らぬまちで働く環境の中で学びの場を提供していたことだった。このような取り組みは板橋区の企業に特有なことではなく、不二越や三豊製作所(現ミツトヨ)でも行われていた。
1955 年頃、数か月の短期間だが板橋区大山の町に住んだことがある。今回の取材で一気に身近に感じている。これからは板橋区の動向を注視していく。