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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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日工会の月例記者会見(2025年2月)

2025 年 03 月 12 日

 (一社)日本工作機械工業会は、2月 25 日に1月分の受注額確報値を発表した。

【稲葉会長のコメント】
 アメリカの第2期トランプ政権は1月 20 日の発足から1カ月余りの間に従来からの方針を大きく転換するような様々な措置を打ち出し、経済関連の関税政策では世界各国の高い関心を集めている。まず2月1日にUSMCAの締約国であるカナダ、メキシコからの輸入品に対し 25 %の関税を課す方針を表明したほか中国からの輸入については 10 %の追加関税を設定した。その後カナダおよびメキシコに関しては発動が1ヵ月猶予されることになったが中国に対しては2月4日に発動している。こうした中、2月7日ワシントンDCで、日米首脳会談が開かれ両国間の投資や雇用の大幅な拡大、AIや量子コンピューティング、先端半導体など重要技術開発での協力の推進、日本が米国から輸入する液化天然ガスの増加など関係性を強化する方針が確認された。石破総理とトランプ大統領は初顔合わせだったが、終始友好的な雰囲気の中で会談が行われ日米の結束を示すことは有意義であったと思われる。しかしその後、わが国を含む全世界からの鉄鋼製品、アルミニウム、自動車の輸入に対して 25 %の関税を課す方針が明らかになったほか、相手国と同等の関税を設定する相互関税の導入が打ち出され、各国で懸念や反発が広がっている。今後、各地での設備投資や貿易に影響を及ぼす可能性があり、注意深く動向を追っていきたい。

Ⅰ.マクロ経済の概況
1.全体経済
●足元の国内景気は、穏やかな回復の動き
・GDP統計(10 月~ 12 月):1次速報 2月 17 日発表
 実質GDP 前期比 + 0.7 %(年率:+ 2.8 %) 3四半期連続プラス
・月例経済報告(2月):景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。【据え置き】
●先行きは、世界的な金融引き締めの動き、海外景気の下振れリスクがあるものの、景気は緩やかな回復が続くものと期待
・月例経済報告(2月):先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、通商政策などアメリカの政策動向、中東地域を巡る情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。

2.製造業の動き
足元の設備投資は、持ち直しの動きがみられる
・GDP統計(10 月~ 12 月):1次速報
民間企業設備 前期比 + 0.5 % (年率:1.9 %) 2四半期ぶりプラス
・月例経済報告(2月):設備投資は、持ち直しの動きがみられる【据え置き】
・鉱工業生産(12 月):生産は一進一退で推移している【据え置き】
鉱工業生産指数(12 月確報):101.6(前月比:△ 0.2 %) 2カ月連続低下
・機械受注(12 月):機械受注は、持ち直しの動きがみられる【据え置き】

Ⅱ.工作機械の受注額【1月確報】 ※速報値は2月 12 日発表

1.概況【1月受注】:
受注総額:
1,161.5 億円(前⽉⽐△ 18.8 %(2カ⽉ぶり減少) 前年同⽉⽐+ 4.7 %(4カ⽉連続増加)
受注総額は、内外需共2割弱の前⽉⽐減少で、2カ⽉ぶりの 1,200 億円割れ
前年同⽉とほぼ同⽔準で、総じて横ばい圏内の動き
(1)内需 320.0 億円(前⽉⽐△ 19.9 % 前年同⽉⽐+ 4.6 %
年末年始の営業⽇減や補助⾦待ち等の影響もあって、2カ⽉ぶりの 350 億円割れ。主要業種を中⼼に勢いは依然弱く、底這い状態
(2)外需 841.5 億円(前⽉⽐△ 18.4 % 前年同⽉⽐+ 4.7 %
2カ⽉ぶりの 850 億円割れ。前⽉の反動減もあるが、欧州は弱含み
⼀⽅、アジアは中国やインドを中⼼に堅調持続
⇒1⽉の受注は、ほぼ前年並みの受注も受注業種や国・地域に違いが⾒られ、まだら模様の状況。今後の状況を注視

.内需【1分】
内需 320.0 億円(前⽉⽐△ 19.9 % 前年同⽉⽐+ 4.6 %)
(1)内需総額
・2カ⽉ぶりの 350 億円割れ
・前⽉⽐3カ⽉ぶり減少前年同⽉⽐3カ⽉連続増加
・営業⽇減や補助⾦待ち等の影響もあって、前⽉⽐減少も総じて横ばい圏内の動き

(2)業種別受注
・主要4業種 前⽉⽐:すべて減少
前年同⽉⽐:「電気・精密」と「航空・造船・輸送用機械」が増加
・全 11 業種中 前⽉⽐:減少8業種(「官公需・学校」「鉄鋼・非鉄金属」等)
前年同⽉⽐:減少6業種(「官公需・学校」「電気機械」等)
・「その他製造業」は 10 カ⽉ぶりの 20 億円超

主要4業種

(3)一般機械(産業機械等・金型)向け受注
・⼀般機械計は、2021 年2⽉(109 億円)以来、47 カ⽉ぶりの 120 億円割れ
・うち産業機械等は、12 カ⽉ぶりの 110 億円割れ。⾦型は、2カ⽉連続の 10 億円割れ
・補助⾦待ちの影響等もあるが、⼒強さは無く底這い状態が続く

(4)自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注
・⾃動⾞計は、2カ⽉ぶりの 60 億円割れ
・⾃動⾞部品は、2カ⽉ぶりの 40 億円割れ。完成⾞は、2カ⽉ぶりの 30 億円割れ
・⾃動⾞部品、完成⾞とも2カ⽉前とほぼ同⽔準で弱めの動きが続く

3.外需【1月分】
(1)外需 841.5 億円(前⽉⽐△ 18.4 % 前年同⽉⽐+ 4.7 %)
・2カ⽉ぶりの 850 億円割れ
・前⽉⽐ 2カ⽉ぶり減少 前年同⽉⽐ 4カ⽉連続増加
・季節要因で前⽉の反動減が⾒られたが、状況に⼤きな変化は⾒られず

(2)主要3極別受注
①アジア
アジアの受注額

アジア計は、2カ⽉ぶりの 320 億円割れ
-中国は、主要業種が概ね2割超の前⽉⽐減少で、 4カ⽉ぶりの280億円割れ
-その他アジアは、インドの⼤型受注の継続等で、 3カ⽉ぶりの 130 億円超
-ベトナム(17.4 億円)は、6カ⽉ぶりの 20 億円割れ
-インドは、電気機械での⼤型受注により、 3カ⽉ぶりの 80 億円超で過去2番⽬の⾼⽔準

アジアの業種別受注
・主要4業種は、「電気・精密」と「航空・造船・輸送⽤機械」で前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、中国をはじめ東アジアで2割超の前⽉⽐減少となり、2カ⽉ぶりの 140 億円割れ
・⾃動⾞は、中国やインドで2割前後の前⽉⽐減少となり、6カ⽉ぶりの 130 億円割れ
・電気・精密は、中国で前⽉⽐減少も、インドの⼤型受注が拡⼤し、2カ⽉連続の 100 億円超
・航空・造船・輸送⽤機械は、中国とインドで前年同⽉⽐2倍以上の増加で2カ⽉連続の 10 億円超

欧州
欧州の受注額
欧州計
は、ドイツ、スイス、東欧以外の国・ 地域で前⽉⽐減少し、4カ⽉ぶりの 140 億円割れ
-ドイツは、4カ⽉ぶりの 30 億円超
-イタリアは、4カ⽉連続の 20 億円割れ
-EU(94.2 億円)は、5カ⽉ぶりの 100 億円割れ
-トルコ(9.8 億円)は、20 カ⽉ぶりの 10 億円割れ

欧州の業種別受注
・主要4業種は、「電気・精密」と「航空・造船・輸送⽤機械」で前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、EUや“その他の⻄欧”で前⽉⽐2割超の減少となり、2カ⽉ぶりの 40 億円割れ
・⾃動⾞は、EUが5カ⽉ぶりに 10 億円割れとなる等減速し、2カ⽉連続の 20 億円割れ
・電気・精密は、ドイツ、フランス等で前⽉⽐増加し、2カ⽉ぶりの 15 億円超
・航空・造船・輸送⽤機械は、前⽉の反動減も3カ⽉連続の 15 億円超で堅調⽔準持続

北米
北米の受注額
北⽶計
は、3カ⽉ぶりの 250 億円割れ
-アメリカは、航空機の⼤型受注の反動減もあって、3カ⽉ぶりの 210 億円割れ
-メキシコは、5カ⽉ぶりの 15 億円超

の業種別受注
・主要4業種は、「電気・精密」のみ前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、2カ⽉ぶりの 80 億円割れも、70 億円超を記録し、堅調⽔準持続
・⾃動⾞は、4カ⽉ぶりの 35 億円超。このところ 30 〜 40 億円レンジで横ばい推移
・電気・精密は、前年同⽉⽐⼤幅増も、前年同⽉が低⽔準であり、2カ⽉連続の 20 億円割れ
・航空・造船・輸送⽤機械は、⼤型受注のあった前⽉の反動減もあり、9カ⽉ぶりの 30 億円割れ

AMT事務局コメント
2024 年 12 ⽉(P):5億 1,380 万ドル、前⽉⽐+ 15.0 % 前年同期⽐+ 5.4 %
「2024 年累計は3年連続減少も、1998 年からの年間平均を 9.8 %上回り、 機械需要は堅調。ジョブショップ向けは、年初市場全体の⾜かせだったが、年末にかけて好転し前年⽐ 3.7 %減、航空宇宙部⾨は、ボーイン グが精彩を⽋いたものの⼤幅増、⾃動⾞は需要が正常化したが、関税 の潜在的な影響に備え受注が減少した。2024 年受注の4割はIMTS以降 のもので、2025 年も機械需要が持続することを期待している」

★次回、2025 年2月次の受注額の報告は、速報が 2025 年3月 11 日(火)15 時、確報値は 2025 年3月 19 日(水)10 時 30 分からの記者会見で。報道解禁は同日 15 時。