最新の業界情報
日工会の月例記者会見(2024年7月)
(一社)日本工作機械工業会は、7月 23 日に6月分の受注額確報値を発表した。
【稲葉会長のコメント】
日本銀行は7月3日、20 年ぶりに新紙幣を発行した。近年は国内でもキャッシュレス決済が普及し通あり、また海外の一部の国ではデジタル通貨の公開実験が始まるなど、決済手段としての現金の位置付けが変化しつつあるが、経済活動の信用性を担保するうえで、引き続き精巧な現金流通は不可欠だ。インクを高く盛り上げて触感を強めた特殊インク、高精細な透かし、3D方式のホログラムやコピー機では再現できないマイクロ文字など新紙幣に導入された偽造防止のための様々な技術はわが国ならではの高度な技術によるもので、海外からも大いに注目されている。
足元の市況は、引き続き活発に推移している。日経平均株価が 11 日に終値で過去最高の¥42,224-をつけたほか、米国のダウ平均株価も 15 日に過去最高額を更新した。ドル円相場は 10 日に 161 円 61 銭まで円安が進んだなかで日米の金利差縮小の動きなどから、足元では 157 円前後で取引されている
経済動向に着目すると、まず7月 10 日に日本銀行より、6月の企業物価指数について、+2.9 %と発表された。これで5カ月連続の上昇であり、電気やガスの使用量に対する補助金が縮小したほか、原油や銅などの価格高騰が影響したとみられる。
中国では 15 日に、本年4―6月期の実質GDPの成長率について前期比で+0.7 %、前年同期比で+4.7 %との発表があった。
工業生産が堅調であった一方、個人消費の低迷、構造的な不動産問題が大きな足かせとなっており、全体的に見て依然、厳しい状況がうかがわれる。
工作機械の受注額【6月確報】 ※速報値は7月9日発表
1.概況【6月受注】:
受注総額:
1,338.2 億円(前月比+7.5 %(2ヵ月連続増加)、前年同月比+9.7 %(2ヵ月連続増加))
受注総額は、3カ⽉ぶりの 1,300 億円超で2カ⽉連続の前年同⽉⽐増加
中国中⼼に増加が⾒られ、3、9⽉の期末を除くと1年以上ぶりの⾼⽔準
(1)内需 408.1 億円(前⽉⽐+17.1 % 前年同⽉⽐ △0.1 %)
主要業種を中⼼に前⽉⽐で増加した。まとまった受注が寄与し3カ⽉ ぶりの 400 億円超となるも、前年⽐で⾒ると横ばう展開となるなど、 慎重姿勢が続く
(2)外需 930.1 億円(前⽉⽐ +3.7 % 前年同⽉⽐ +14.6 %)
主要3極は北⽶のみ前⽉⽐減少も 14 カ⽉ぶりの 900 億円超
アジアのうち、中国国務院の政策投⼊効果もあってか⼤幅増加
⇒6⽉の受注は、増加傾向が⾒られるものの、局地的な増加であり、 本格的な受注の回復時期等について、今後の動向を注視
【稲葉善治会長のコメント】
各市場での大型案件が受注を押し上げた一面もあるが、これで4ヵ月連続して 1,200 億円を超えており、本格的な増加局面に向けて月を追うごとに地合いが整いつつあると感じている。
2.内需【6⽉分】
内需 408.1 億円(前月比 +17.1 % 前年同月比 △0.1 %)
(1)内需総額
・3カ⽉ぶりの 400 億円超
・前⽉⽐ 3カ⽉ぶり増加 前年同⽉⽐ 22 カ⽉連続減少
・まとまった受注により前⽉⽐増加も、全体として⼒強さに⽋ける状況が継続
(2)業種別受注
・主要4業種:「一般機械」「自動車」「電気・精密」「航空・造船・搬送用機械」
前⽉⽐ :「電気・精密」を除きすべて増加
前年同⽉⽐:「⾃動⾞」と「航空・造船・輸送⽤機械」が増加
・全 11 業種中
7業種 (「商社・代理店」「前⽉⽐ : 増加 8業種 (「官公需・学校」「商社・代理店」等)
前年同⽉⽐ : 増加航空・造船・輸送⽤機械」等
「電気・精密」は4カ⽉ぶりの 40 億円割れで、4カ⽉ぶりの前年同⽉⽐減少
主要4業種
(3)一般機械(産業機械等・金型)向け受注
・一般機械計は、3カ⽉ぶりの 160 億円超
・産業機械等は、3カ⽉ぶりの 140 億円超。⾦型は、4カ⽉ぶりの 15 億円超
・内需計に⽐べ、前年同⽉⽐の減少幅は依然⼤きく、調整局⾯が継続
(4)自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注
・⾃動⾞計は、3カ⽉ぶりの 90 億円超
・⾃動⾞部品は、2カ⽉連続の 60 億円割れで、弱含みの状況が継続
・完成⾞は、まとまった受注があり、2022 年 12 ⽉(32 億円)以来、18 カ⽉ぶりの 30 億円超
【稲葉会長のコメント】
依然として明確な力強さはないものの、6月は半導体製造装置や金型、油空圧機、モータなど各種産業用機械向けで幅広く受注したほか、自動車もRアクスルやアルミダイキャスト、ハイブリット車の生産増強投資から3ヵ月ぶり 90 億円を超えた。また省力性や環境対応性能の優れた機械やより大きなサイズの部品加工に適した機械に置き換える動きも見受けられる。
一方で中小企業のユーザーの間では各種補助金の採択結果が公表されるまで投資を控える姿勢が感じられる。
3.外需【6月分】
外需 930.1 億円(前月比 +3.7 % 前年同月比 +14.6 %)
(1)外需総額
・2023 年4⽉(909.7 億円)以来、14 カ⽉ぶりの 900 億円超
・前⽉⽐ 2カ⽉連続増加 前年同⽉⽐ 2カ⽉連続増加
・欧州、北⽶が横ばい圏内の動きの中、アジアの特に中国で増加傾向が顕著
(2)主要3極別受注
①アジア
アジア計は、中国の続伸により、2022 年 12 ⽉ (471 億円)以来、18 カ⽉ぶりの 450 億円超
-東アジアは、台湾、中国で前⽉⽐増加し、2022 年 10 ⽉(365 億円)以来、20 カ⽉ぶりの 350 億円
-台湾(28.7 億円)は、21 カ⽉ぶりの 25 億円超
-中国は、補助⾦効果により増加が継続し、2023 年3⽉(301 億円)以来、15 カ⽉ぶりの 300 億円超
-その他アジアは、タイやインドで前⽉⽐増加し、 2カ⽉ぶりの 100 億円超
-タイ(25.6 億円)は、10 カ⽉ぶりの 25 億円超
-インドは、8カ⽉連続の 40 億円超と堅調持続
アジアの受注額
アジアの業種別受注
・主要4業種は、すべて前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、中国等が増加し、外需業種別統計開始以来の最⾼額を記録(従来 2022 年6⽉:164 億円)
・⾃動⾞は、中国、インド等が前⽉⽐微増で、3カ⽉連続の 130 億円超
・電気・精密は、多くの国・地域で前⽉⽐減少し、2カ⽉ぶりの 80 億円割れ
・航空・造船・輸送⽤機械は、韓国や中国、インドでまとまった受注があり、2カ⽉ぶりの 15 億円超
②欧州
欧州計は、“その他の⻄欧”で前⽉⽐減少も、EU で増加し、170 億円前後の⽔準が継続
-ドイツは、3カ⽉ぶりの 40 億円超も7カ⽉連続の 前年同⽉⽐減少
-フランス(26.2 億円)は、6カ⽉ぶりの 25 億円超
-トルコ(14.0 億円)は、4カ⽉ぶりの 15 億円割れ
欧州の受注額
欧州の業種別受注
・主要4業種は、電気・精密と航空・造船・輸送⽤機械が前年同⽉⽐増加
・⼀般機械は、イタリア、フランス、イギリス等で前⽉⽐減少し、2カ⽉ぶりの 50 億円割れ
・⾃動⾞EU、トルコ等で前⽉⽐減少し、2021 年2⽉(19 億円)以来 40 カ⽉ぶりの 20 億円割れ
・電気・精密は、イタリアや“うち中欧”等で前⽉⽐減少し、2カ⽉ぶりの 20 億円割れ
・航空・造船・輸送⽤機械は、“うち中欧”やトルコ等で前⽉⽐減少し、10 カ⽉ぶりの 15 億円割れ
③北米
北⽶計は、アメリカ、カナダ、メキシコすべてで前⽉⽐減少し2カ⽉ぶりの 250 億円割れ
-アメリカは、2カ⽉ぶりの 220 億円割れ
-メキシコは、10 カ⽉ぶりの 10 億円割れ
北米の受注額
北⽶の業種別受注
・主要4業種は、すべて前年同⽉⽐減少
・⼀般機械は、メキシコ、カナダで前⽉⽐減少し、2022 年1⽉(49.2 億円)以来、29 カ⽉ぶりの 70 億円割れ
・⾃動⾞は、アメリカ、メキシコで前⽉⽐減少し、2カ⽉ぶりの 35 億円割れ
・電気・精密は、アメリカで5カ⽉ぶりの前⽉⽐減少も、3カ⽉連続の 20 億円超
・航空・造船・輸送⽤機械は、アメリカで前⽉⽐減少もカナダで増加し、2カ⽉連続の 40 億円超
AMT事務局コメント
2024 年5⽉:2024 年5⽉:3億 8,672 万ドル、前⽉⽐+21.8 % 前年同期⽐+6.5 %
「5⽉に今年初めて前年同期⽐を上回ったが、製造業者は⾦利の引下げを待てず、消費者の需要を満たすため、設備の購⼊を増やし始 めている。2024 年の切削⼯具の消費が記録的な⽔準で安定している こともこれを裏付けている。ジョブショップの動きは依然として鈍 く、⾃動⾞部⾨も過去2年に⽐べて遅いペースであるが、電気機器 メーカはCHIPS法などの恩恵を受けて⾼⽔準で推移している。」
【配布資料から】
次回、 2024 年7月次の受注額の報告は、速報が8月 13 日(火)15 時、確報値は8月 22 日(木)10 時 30 分からの記者会見で。報道解禁は同日 15 時。