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日工会の月例記者会見(7月)
(一社)日本工作機械工業会は、7月 21 日に月例記者会見を開き6月分の受注統計を発表した。当月のポイントを以下にまとめた。
マクロ経済の概況~全体経済に関するコメント
全体経済
6月に発表された「月例経済報告」も「日銀短観」もコロナの影響が緩和するにつれて持ち直しの動きが拡大している。ただし中小企業の景況判断は、13四半期連続の「悪い」が続いている。つまり中小は苦しい状況が続いている。
結論としては「先行きは、感染拡大や地政学的リスク、原材料費高騰や供給制約等の下振れリスクがあるものの、景気が持ち直していくものと期待」と結んでいる。
製造業の動き
月例経済報告(6月):設備投資は「持ち直しの動きがみられる」【据え置き】
鉱工業生産(5月):生産は弱含んでいる【下方修正】
鉱工業生産指数(5月確報):88.0(前月比:△7.5%) 2カ月連続低下。
機械受注(5月):機械受注は、持ち直しの動きがみられる 【据え置き】
※“据え置き”とされていても、「弱含み」が隠されているように感じています。
工作機械の受注状況【6月確報】
概況:受注総額1,547.1億円[前月比+0.9%(3カ月ぶり増加)、前年同月比+17.1%(20カ月連続増加)]
(1)内需586.5億円(前月比+18.5%、前年同月比+31.3%)半導体関連を中心に堅調持続。
(2)外需960.6億円(前月比△7.5%、前年同月比+9.9%)4カ月ぶりの1,000億円割れも、6月としては過去2番目の高水準。
2022年上半期の受注累計発表(外需比65,5)
2022年上期(1~6月)受注総額:9,112.2億円(前期比+8.6%、前年同期比+29.8%)
内需:3,145.8億円〔前期比+5.2%(4半期連続増加)/前年同期比+48.9%(3半期連続増加)〕
外需:5,966.4億円〔前期比+10.4%(4半期連続増加)/前年同期比+21.6%(4半期連続増加)〕
「内需は、上期として前期比、前年同期比とも2年連続増加。8半期(上期として4年)ぶりの3,000億円超。外需は、上期として前期比、前年同期比とも2年連続増加。2半期連続(上期として4年ぶり)の5,000送縁超で加工最高額を更新」
参加記者からの一問一答
①日工会の稲葉善治会長は、年初に発表した今年の受注見通し1兆6500億円を上回るのはほぼ確実だ、との見通しを表明した。それでは見通しの上方修正はあるのか、との問いには、
「毎年7、8月は夏枯れの時期で、欧州では長いバケーションに入り足踏み状態という季節要因があるので、そこを過ぎてから上方修正を考える。部品不足、円安、ロシアのウクライナ侵攻など不安定要因はあるが、大きな障害に変化する見通しは見られない。下期の受注が堅調に推移して年初の見通しを上回ることを期待したい」と述べた。
②諸物価の値上がりで、工作機械の値上げに対する動きは顕在化するのか、との質問には、
「原材料の値上がりと物流経費の値上げで、価格の上昇はやむを得ないと思うし、業界全体でも理解を得ていると認識している。それよりも大きな問題は、納期の順守で、納期の長期化で折角の設備投資案件がキャンセルされる心配が出ている」
③中国向け輸出の対象業種で「電気・精密」が△24.7%で唯一マイナス。半導体が良いというが数字が伴っていないが? との質問。(ちなみに「一般機械」は+6.0%、「自動車」は+99.0%、「航空・造船・輸送用機械」48.9%。)
中国は6月に入って急増した。上海のロックダウンが4,5月にあり、5,6月のGDPがマイナスだった。ロックダウンの影響が大きく、経済の動きがなかった。しかし「電気・精密」は、ITの生産が滞っており、設備投資に関して“満腹感”があるのだろう。IT・スマホ需要は今後もある。EMS特需は終わっているが半導体、自動車、部品はひっ迫しておりEV投資も旺盛。また中・台製設備から日本製にアップグレードする動きがみられる。
④秋のJIMTOFにはどのような展示がみられるのか、との問いに稲葉会長は、独自の表現で回答。
あの手この手で技術が披露されるとおもう。IoTを利用した個別最適化や自動化が提案されると思う。先日名古屋で開催された展示会「ロボットテクノロジージャパン」(主催ニュースダイジェスト社)には、各社のロボット化に対する考え方が提案されていた。今後は「ものづくり」を工作機械が、「ことづくり」をソリューション技術が進めていくと思われる、と。
⑤外需の金額が「円」で表記されているが、為替相場の変動が激しいので、実態と乖離しているのでは、との問いには、「おっしゃる通り。ドルだけではなくユーロ、中国元と、いまは3つの外貨との比較が重要で、事務局と対応を考える」と。
ことラボから:6月度の統計数値も“持ち直し”と表現されている。コロナ感染の急拡大を受けてJIMTOF開催への可否を問われても稲葉会長、柚原専務理事も「中止などは全く考えていない」と力強く答えた。