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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

ことラボ・レポート

ものづくりワールド2025が開催された

2025 年 07 月 16 日

 RX Japanが主催する展示会《ものづくり ワールド 2025》が7月9日から 11 日まで幕張メッセ(千葉県)で開催された。例年は東京ビッグサイトで開催されているが今年は会場の都合で幕張となった。次回の会場はビッグサイトに戻ると言う。
 この展示会は“ものづくり”という守備範囲の広い言葉のもとにいくつかの企画が順次追加されつつ拡大していく展示会だ。かつては日刊工業新聞社が《インターメックス》と《オートテック》という工作機械と周辺機器類を対象として展示会を開催していたが、洗浄機が話題となると《洗浄機展》などあとから関連展示会を追加していき最後は何の展示会だか判らなくなり、消滅してしまった。RX Japanと日刊工業新聞との違いはどこにあるのか、関心を持って見ている。
 本展を特徴づけているのは2つの大きなグループの存在だ。(1)地方公共団体の出展、と(2)アジアを中心にした海外出展である。が、それはいわば“横糸”で“縦糸”として本展を構成する企画がある。それをホール1からホール 11 まで紹介すると、
①第 30 回「機械要素技術展」:最も大きな規模の企画でかつ歴史も二番目に古い。
②第 16 回「ヘルスケア・医療機器開発展」:次の③、④、⑤と合わせて規模は小さい。
③第3回「ものづくりODM/EMS展」:客先ブランドでの製造に関連する企画。
④第7回「計測・検査・センサ展」:“計測”と“検査”“センサ”は似て非なるもの。
⑤第8回「次世代3Dプリンタ展」:約 30 年以上前に始まったラピッドプロトタイプの最新状況。
⑥第1回「スマートメンテナンス展」:最小規模でエンジニアリング大手の参加はない。
⑦第8回「工場設備・備品展」:“工場運営の必需品”的な出展は少なく主催者の意欲不足。
⑧第3回「製造業DX展」:ここからは少し離れた9~ 11 ホール。猛暑の中行けなかった。
⑨第1回「製造業サイバーセキュリティ展」:企画の趣旨が判らなかった。
⑩第 37 回「設計・製造ソリューション展」:この“合同展”の原点。この頃は判り易かったが。

団体出典の抽出(地方公共団体編)
★の出展者は《ヘルスケア・医療機器開発展》参加企業で、残りは《機械要素技術展》への参加。

 こちらもホール1から順に以下に列記した。丸内の数字は小間番号に替わる、地方公共団体小間の通し番号。
①やまぐち産業振興財団/②岐阜県・各務原市/③いわて産業振興センター/④栃木県/⑤やまがた産業支援機構/⑥かがわ産業支援財団/⑦高崎市産業支援機構/⑧上越ものづくり協議会/⑨SABAE TECHNOLOGY/⑩坂城町出品者協会/⑪柏崎技術開発振興協会/⑫丹後機械工業共同組合/⑬とくしま産業振興機構/⑭駒ヶ根テクノシティ/⑮東京中小企業振興公社/⑯板橋区産業振興公社/⑰品川区/⑱会津地域ものづくり企業/⑲葛飾区/⑳荒川区/㉑足立ブランド/㉒江戸川区/㉓長岡ものづくりゾーン/㉔高知県産業振興センター/㉕江東ブランド/㉖おおさき産業振興機構/㉗わかやま産業振興財団/㉘しまね産業振興財団/㉙鳥取県産業振興機構/㉚群馬県伊勢崎市/㉛福井県機械工業共同組合/㉜静岡県産業振興財団/㉝石川県産業創出支援機構/㉞静岡市/㉟東大阪市・東大阪商業会議所/㊱富山県見本市共同出展実行委員会/㊲岡山県産業振興財団/㊳燕三条地場産業振興センター/㊴にいがた産業創造機構/㊵愛媛県/㊶安曇野市商工会工業部会/㊷みやぎ高度電子機械産業振興協議会/㊸福岡県中小企業振興センター/㊹千曲市産業支援センター/㊺次世代医療システム産業化フォーラム(大阪商工会議所)★/㊻ふくしま医療機器開発支援センター★/㊼ふくい産業支援センター★/㊽かごしま産業支援センター/㊾こおりやま広域圏(郡山市および近隣 16 市町村)。

 公共機関が民間企業の展示会に大挙して出展していることは小間図面を見れば一目瞭然だが、よく考えると展示会の来場者には不親切だ。しかし主催者の立場からすれば、ある程度まとまった規模で参加するので営業的に大歓迎だろう。そうした公的団体の中にはホームページを構えていて自らの努力で出展者を募集している団体もある。しかし募集時に、この展示会の趣旨が伝わっているようには思えない。“ものづくり”という射程距離の長い言葉を利用している好例だ。“地方創成”が叫ばれている時代なので、産業育成には予算がつくのだろうが、私には不勉強な公務員が“丸投げ”しているように見える。かき集めた税金の使い道として取りあえず展示会に参加する、というのは安直だ。
 さらに地域的マッピングしてみたが、東京都と品川区、荒川区、葛飾区、板橋区、江戸川区、足立と江東ブランドなどの重複、静岡県と静岡市などの重複は、何も考えずただ出展している、ように見える。これでは地方創成は空手形だと思う。

参加地方公共団体の分布:
【北海道】
参加なし

【東北地方】
③いわて産業振興センター
⑤やまがた産業支援機構
⑱会津地域ものづくり企業
㉖おおさき産業推進機構
㊷みやぎ高度電子機械産業振興協議会
㊻ふくしま医療機器開発支援センター
㊾こおりやま広域圏(郡山市及び近隣16市町村)

【関東地方】
④栃木県
⑦高崎市産業支援機構
⑮東京中小企業振興公社
⑯板橋区産業振興公社
⑰品川区
⑲葛飾区
⑳荒川区
㉑足立ブランド
㉒江戸川区
㉕江東ブランド
㉚群馬県伊勢崎市

【北陸地方】
⑧上越ものづくり協議会
⑨SABAE TECHNOLOGY
㉓長岡ものづくりゾーン
㉛福井県機械工業共同組合
㉝石川県産業創出支援機構
㊱富山県見本市共同出展実行委員会
㊳燕三条地場産業振興センター
㊴にいがた産業創造機構
㊼ふくい産業支援センター★

【中部地方】
②岐阜県・各務原市
⑩坂城町出品者協会
⑪柏崎技術開発振興協会
⑭駒ヶ根テクノシティ
㉜静岡県産業振興財団
㉞静岡市
㊶安曇野市商工会工業部会
㊹千曲市産業支援センター

【関西地方】
⑫丹後機械工業共同組合
㉗わかやま産業振興財団
㉟東大阪市・東大阪商業会議所
㊺次世代医療システム産業化フォーラム(大阪商工会議所)★

【中国・四国地方】
①やまぐち産業振興財団
⑥かがわ産業支援財団
⑬とくしま産業振興機構
㉔高知県産業振興センター
㉘しまね産業振興財団
㉙鳥取県産業振興機構
㊲岡山県産業振興財団
㊵愛媛県

【九州地方】
㊸福岡県中小企業振興センター
㊽かごしま産業支援センター

 これらの小間に何が出ているのかは判らない。必要があってきた人は探し出すのに苦労するだろう。しかしフラリときて“掘り出し物”を見つけようという人には探し甲斐のある展示会だ。

海外パビリオンは大幅増

 近隣諸国から、とりあえず日本市場を目指すなら《ものづくりワールド》は最適な展示会だと思う。
 中国を中心に海外勢の出展も前回より増えている。
①中国パビリオン(30 小間)
②中国パビリオン(10 小間)
③中国パビリオン(24 小間)
④中国パビリオン(12 小間)
⑤中国遼寧省パビリオン(12 小間)
⑥中国パビリオン(10 小間)
⑦中国ねじパビリオン(20 小間)
⑧2025年中国広西商品博覧会「桂品海外展」(40 小間)
⑨中国パビリオン(6小間)
⑩中国モーション・モーターパビリオン(18 小間)
⑪中国AMパビリオン(9小間)
⑫中国パビリオン(11 小間)

 台湾、韓国、タイからも参加した。
①台湾部品パビリオン(5小間)
②台湾部品パビリオン(36 小間)

①Hyndaiパビリオン(20 小間)
②韓国パビリオン(華城市)(6小間)
③韓国パビリオン(始興市)(8小間)
④韓国パビリオン(8小間)

①タイパビリオン(10 小間)

 アジア諸国がアジアで最初に近代産業化を実現した日本をターゲットにしているのは当たり前だが、いつのまにか油断のならないライバルになりつつある。大昔に韓国のエンジニアリング・ブローカーが八王子のオリンパスを訪ねて、マイクロレコーダの技術供与を求めるドキュメンタリーがあった。技術レベルを診断するためにオリンパスが課した金型加工の宿題の完成度が低く、これでは入口から技術が身に付かないと契約に至らなかった。しかしあれから、コストカットばかりを求めた日本社会は、韓国、台湾そして中国にまで技術を水面下で提供し、追い上げに苦しめられている。アジアの中でどのように振舞うのか「日本のグランドデザイン」が問われている。

さて会場で見つけた商品群を紹介する。

フジムラ製作所(3-1)

 デジタル技術を駆使して精密板金の世界に新風を吹き込んでいるフジムラ製作所(〒332-0004 埼玉県川口市領家3-12-10/代表取締役社長 藤村智広)は、デザイン性の高い高精度・高品質な板金製品を展示していた。通路に面した小間のコーナーには「インフィニティミラー」を置き来場者にアピール。中のライトは青、緑、赤と変化していき、ネオンのように人を引き付ける。
 小間の中には、意匠性の高いオリジナル和風照明。置物タイプと吊り下げタイプがある。喫茶店とか夜のお酒のお店などにお似合いだ。

 下の作品は平面図では正方形だが対角線の位置から割り開くと4つの多段の棚が現れる。修理などに使う道具やねじなどの消耗品などを整理して保管できるし、片付けるときには中心に集めれば元の正方形の柱のようになり場所を取らない。

 コストや納期に追われる製造業が、こうしたアイデアを生み出すことで、ゆとりを持てる時代が早く来て欲しい。

THK 動剛性測定システム『DYNAS』(ダイナス)をサンプル展示

 直動案内「LMガイド」で圧倒的シェアを持つTHK(〒108-8506 東京都港区芝浦2-12-10/代表取締役社長CEO 寺町崇史)は、近年“ものづくりサービス業”を標榜している。機械の駆動部は経時変化で消耗し、動きの精度が劣化するし破壊される。それをセンサによって状態を把握して故障する前に把握するのが初代OMNI edgeだった。その後、守備範囲は拡大しSDGs(持続可能な開発目標)から展開してきたGX(グリーントランスフォメーション)に対応するシステムに成長して、工場全体の電力消費量をモニタリングする機能まで持つようになった。
 今回開発中の新たなシステムは動剛性測定システム『DYNAS』(ダイナス)と呼ぶ。動剛性(ダイナミックスティフネス)からきた言葉だ。
 工作機械などを設計するときにセンサをとりつけて装置の振動特性を把握し、開発品質の向上・性能向上に貢献する。さらに同特性を設計段階でシミュレーションし、事前課題を潰しこむ。まだ開発途上だというが、THKの“ものづくりサービス産業化”が進んでいる。

ボッシュ・レックスロス㈱のトランスファーシステム「TS plus

 1990 年代の欧州の油圧業界の大再編時にレックス・ロスとボッシュが合併した。日本の内田油圧も傘下に入った。DMGはまだ「日本DMG」だった。内田油圧は土浦工場の工作機械をDMGから調達しようとしたが、ドイツからやってきたエンジニアは、自分たちが使うドイツ製工作機械には拘らず、まず切削油の交換から始めた。それはドイツ人のエンジニアリング力の高さを感じた出来事だった。レックス・ロスもそのときにボッシュと合併した。
 写真に写る小間内の右側に置いてあるのがトランスファーシステム『TS 2plus』だ。1パレットあたりに最大 240 kgのワークの搬送用に開発した。コンベアメディアとしてポリアミドベルト、歯付きベルト、フラットトップチェーンさらにアキュムレーションローラーチェーンが選択可能だ。同社のトランスファーシステムには可搬重量最大3kgまでの『TS 1』、同 400 kgの『TS 5』もある。ドイツの技術に触れる良い機会だった。