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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

ことラボ・レポート

第2回「3社合同メカトロニクスショー」開催される

2023 年 09 月 13 日

 8月 31 日、9月1日の2日間、SMC㈱、THK㈱、㈱ハーモニック・ドライブ・システムズの3社が共同開催する「3社合同メカトロニクスショー」が開催された。上掲のイラストは本企画のアイキャッチで3社のコーポレートカラーを使用している。昨年に続く2回目の開催だが、昨年(8月 30 日、31 日開催)は新型コロナや初の企画ということもあり仲間内の“内覧会”的な趣旨で開催され、広く告知・集客したのは今回が初めてだった。
 会場は「東京都立産業貿易センター浜松町館」の2階展示場。JR浜松町駅の北口改札を出て右側へ、竹芝桟橋側に向かい約 350 m先、海岸通りを渡った右角の「計量検定所」跡地に 2020 年9月にリニューアルオープンした「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」内の2階から5階までが産業貿易センターで、展示場や会議室が利用できる。JR浜松町駅からバリアフリーの歩行者デッキを使うと会場までは快適にアクセスできる。

 展示会に参加した3社はいずれも各分野で存在感の強いエクセレントカンパニーだ。
 SMC(高田芳樹社長)は、圧縮空気を動力源として自動化を行う空気圧制御機器のトップメーカーで、空圧機器の分野ではドイツのフエスト社と並んで世界市場を二分していると言われる。様々な産業界のオートメーション化を支え、自動車・IT・医療などさまざまな産業に貢献している。
 THK(寺町彰博社長)は、世界で初めて直動機器を「“すべり”から“転がり化”」した「LMガイド」の開発に成功した企業で、その後もモーションエンジニアリング機器を開発して、産業システムの省エネ化を実現した企業だ。
 ハーモニック・ドライブ・システムズ(以下HDS)(長井 啓社長)は、産業用ロボットや半導体製造装置に組み込まれるメカトロニクス製品、および減速装置の製造販売で大きなシェアを占めている。特にロボットの関節部に使われる波動歯車装置「ハーモニックドライブ」は軽量堅固で宇宙開発の分野でも活躍している。
 上記の3社の組み合わせは不思議な魅力を醸し出している。製品分野は空調機器、直動機器、減速機器と直接的な競合関係にはないが、FA分野の“動き”を守備範囲にしている点は共通している。どこかで関り合って、全く新しい機能や製品が誕生するのではないか、と期待が膨らむ。「タテ社会」と言われてきた日本では、複数の組織が出会うと上下関係が発生する傾向があり、今回のように“対等関係”の結びつきは珍しい。しかも各分野でトップを走る3社である。昨年からスタートした“3社合同”だが、今日現在で何か具体的なコラボレーションの動きは見受けられない。しかし、来年も開催の方向で検討が進んでいるという。今後が楽しみな企画だ。今年は2日間で 1,000 人を超える招待客が来場した。

初日に開催された「3社社長座談会」

 各社の出展製品を紹介するのは本稿の趣旨ではない。初日の午前中に3社の社長が軽妙な座談会が開かれた。テーマは「最先端の自働化」。その時の雰囲気を伝えたい。壇上に左はから右へSMC、THK、HDSの各社長が着席し、司会進行はレポーターの東ふき氏だった。

SMC株式会社代表取締役社長・高田芳樹

Q:自己紹介と趣味について
高田:お二人のお話を聞くことを楽しみにしています。
寺町:事前相談していないのでどんな話になるか楽しみです。
長井:テーマは「最先端の自働化」ということで、この3社はその分野で貢献をしているので両社長からのお話が楽しみです。
※お互いに謙遜してスタートはジャブで探り合い。進行役の東ふき氏が3社をしっかりと紹介した。
:SMCは、自動制御機器の総合メーカーとして世界シェア4割、国内シェア6割をしめ、世界 80 ヵ国約 500 カ所の拠点を持つ企業です。SMCの商品はさまざまな産業の自動化・省力化に貢献するとともにお客様の工場全体のCO2排出量を削減するトータルソリューションを提供している。製品の基本型は 12,000 個、70 万品目を揃え、ワンストップショップでお客様に提供している。世界中のお客様に商品を提供する供給責任を果たすため、事業継続計画(BCP)の進化を図ると共に将来のお客様の需要の高まりに応えるために積極的な投資を行っている。

Q:高田社長の趣味を社員の方に伺うと「ラグビー観戦」とのこと。どんなところがお好きですか?
高田社長:フェアなところ。サッカーファンの方には申し訳ないけどサッカーはケガしてなくてもケガしたふりをするでしょ? ラグビーはケガしていてもしてないように続けてプレーするところ、と。
:THKは、直動案内「LMガイド」のパイオニアで、その世界シェアは5割以上、国内では7割を占めている。工作機械や半導体製造装置など様々な機械の高精度化、省エネ化に貢献してきました。近年では「ものづくりサービス業」として産業界全体の価値向上を目指し、その応用製品を広げていきながら様々な分野の自動化・省エネ化に取り組んでいます。
寺町社長の趣味はゴルフと野球観戦。今年はWBCの球場でTHKさんの看板を見ない日は無かったですネ。世界中に知れ渡りました。
寺町:WBCに関しては東京ドームと米国ではヤンキースとエンゼルスのホームグランドにTHKの看板を出させてもらっています。BtoBなのに効果があるのか、との声もありましたが、チャンスがあったので思い切って出しました。また慶応高校が甲子園で 107 年ぶりに優勝したときは応援に行って校歌、応援歌を歌いたかったのですが別件があり見送りました。
:続いてハーモニック・ドライブ・システムズです。精密減速機の中でも波動歯車装置では圧倒的なシェアを占めています。長野県安曇野工場で使われる電力は全て安曇野の水力発電で作られた電力を使用しており、CO2削減に向けた取り組みを進めている。お客様をパートナーとして巻き込んだ活動を実施していて、5年ごとに国際シンポジウムを開催している。長井社長の趣味はご自身もずっとやっていたアメリカンフットボールとバンド演奏。
長井:アメリカンフットボールはフィジカルも大事だが、頭も使う。何よりも準備のスポーツ。試合に向けて準備をし、終われば必ず反省会をする。そして次の試合に備える。これで知らないうちにPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)をマスターします。アメリカンフットボールにちゃんと取り組んできた人なら、すぐ採用します。

Q:最新の足り組みは?昨年から今年にかけてこんな部分で取り組んだ、ということがあれば発表を。
高田:一番おおきな問題は「空気は漏れる」という点。その対策として設備を使っていないときはエアーの圧力を下げて、工場全体の低圧化を実現できるような製品(エアマネジメントシステム)を発表し、今回展示しています。使用電力を削減できるのでいまのような電力不足の時代に対応できるし、CO2削減にもなる。

Q:事業継続(BCP)のために大きな投資をされたとのことですが、具体的にはどういったことでしょうか?
高田:SMCがサプライヤーでもあるスイスの著名な企業に行ったときに、世界の人口が 80 億人を超えたいま、その人達を食べさせる問題を、だれか優れた人が現れて一気に解決してくれると考えている人が多い。「解決するのは貴方たちですよ!」と言われました。そのとき「あっ」と思い、しっかりしたサプライヤーにならないといけない、と思い直したからです。津波、地震、台風。何があっても供給力を絶やさないような企業にならないといけない、と。

THK株式会社代表取締役社長・寺町彰博

Q:最近のTHKの取組はこんな部分がかわったというところがあれば教えて下さい。
寺町:IT技術を使ってビジネスを推進するOmniTHKに取り組んでいる。ビジネスに人が介在するとそこでミスが起き易い。人は残念なことにシングルタスクです。コンピュータを使えば瞬時に仕事が進むし、ソフトやデータを共有すれば一瞬にして何人もの人と仕事を進めることができる。そこはかなわない。しかし人には人にしかできない仕事がある。数年かけて、出来るだけ人が介在しなくても仕事が進む仕組みを作ってきた。工場のほうでも自動化を進めてきた。昔、ファナックの稲葉清右衛門名誉会長(故人)が、365 日× 24 時間連続で仕事ができないといけない、と仰っていたが、当社の現状ではまだ3合目。ブロック単位では自動化出来てきたが、全体的には実現できていない。それを全体に繋げるようにしている。
また自動化すると問題になるのが“チョコ停”。ライン全体が停まってしまわないように、事前にメンテナンスできるようにする。そんな取り組みです。

株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ・代表取締役社長・長井啓

Q:ハーモニック・ドライブ・システムズはいかがでしょうか?
長井:当社の製品は 99.9 %がテーラーメイドの歯車です。最後は人の手で組み立てています。お客様の仕様に合わせて組み立てる、そういうものづくりを行っているのでなかなか自動化に進めない。そうは言っても人手不足で、自動化してよいことは標準化と同時に、一定した品質が継続して得られること。穂高に工場があるが同じ安曇野市内に有明工場を、月産 10 万個を作れる工場を2年前に建設しました。穂高と同じものを作っているのですが、かなり自動化を進めた。どうすれば自分なりの自動化ができるか、ということにみな取り組んで、それはできる。ところが、工場全体にAGVを走らせるときに、運行ダイヤを作るが、作業中に「バリ取りが上手くいかない」などの、予定外のことが発生して、時刻表通りに出来上がらない。そんなことがあって、自動化は永遠のテーマなのだが「できること」と「できないこと」が判ってきて、それを解決するためにロボットにAIを載せるのではなく生産技術にAIを導入しています。新入社員でも一定の品質を維持できるように引き続き進めていきます。

ハーモニックドライブはこの3点のシンプルな構造

Q:自動化を進めるために気をつけなければならないことはどのようなことですか? 均質化・同質化ということは自動化にとり必要なことですが、開発などではいかに異質なものを取り込むか、が大事だと思います。DX時代にはどのように分けていかなければならないか、興味があります。
寺町:自動化する前に重要なのは、製品精度を正確に測定することです。いま一番取り組んでいるのが測定の所で、いかに製品を作りこめられるか、ということです。均質なものができるようになって初めて自動化が出来ます。製品はそれでいいのですが人というものはもっと個性的です。企業文化としては一つの方向性をもって進んでいってもらいたいですが、その中でどうやって個性を伸ばしていけるか、それと同時に日本は、人の問題ではまさに危機的な状況にあります。8割の若い人が責任を取らされるような役職に就きたくない、と回答しています。「なりたい職業ベスト 10」から「経営者」とか「役員」とかがついに無くなりました。これからの社会は、多様化してくるとバラエティに富んだものになります。高額な収入を得るプレーヤーも出て来るし、一定の賃金しかもらえない人も出てくる。こういう世界の中で、どうやって前に進むか。昔のような人をかき分けてでも前に進みたいという人を作るか、ということで悩んでいる。そういう仕組みをどうやったら作れるか、ということを考えています。頑張ったら頑張っただけの価値を提供できるだけの仕組みが必要だと思います。いろいろ工夫しているが、あちらが立てばこちらが立たないような関係になっています。海外では、そのような圧力を持つ人が頑張っています。そのような圧力を日本で発揮できる仕組みを探しています。

Q:8割の人が責任を取りたくないという時代にはどのような人材が必要ですか?
高田:国内での人材確保は難しいが海外では活力を感じます。スイスのネスレ本社に行くと、世界 87 ヵ国から集まってきた社員が鎬を削っている。そうした環境が日本で整うまでには時間がかかるでしょう。

SMCの小間外観

Q:人材に話が行ってしまいました。「自動化」に話を戻しますが、自動化を進めると電気代がかかると思いますが。
高田:工場の電気代の 20 %はコンプレッサー代と言われています。そうした問題には、さきほどの「エアマネジメントシステム」がコストを下げると思います。何をどのように作っているかで違いますが、20 %を 10 %に削減すれば貢献できると思います。

Q:究極に自動化された未来の社会というのはどのようなものでしょうか?
長井:SMCさんやTHKさんを始めとした自動化機器を使えばいまでも自動化された世界を作れると思う。でも私自身のイメージとしては「無人化」です。完全無人化できて自動化です。ある工場はすでに無人化されています。例えばトヨタではオペレータが一人いるだけで稼働しています。質も量も、機械が無人で達成しています。米国では「ヒューマンセントリックロボット」人間中心のロボットと言われていますが、必ずしも二足歩行は必要ではない。人間のために、人間がいまやっている仕事を置き換えられるロボット、これは必ずしも二足歩行する必要はないでしょう。米国では倉庫の荷物の出し入れに使われています。先日の米国の展示会で模擬倉庫を作り、3日間にわたり残業をいとわず仕事をするデモをやっていました。これからは、このように人がやる仕事をロボットができるようになれば自動化社会になっていくと思います。そのときに使われるいくつかの自動化のデバイスを使えるようになる。究極の自動化というのは、私の場合「工場の無人化」です。

Q:寺町社長は、究極の自動化された社会というのはどのようなものだと考えていますか?
寺町:究極的には長井社長がおっしゃったような社会になると思う。すると人の働く場所がなくなる、と言われる。社内で言っているのですが、これから残るのは3種類の人だ。まず徹底した職人技を持つ人でコストダウンは目標としない。設備の組み合わせなどを考える人。次に職人が考えた方法を生産システムへブレイクダウンする人。量産のために職人技の焼き直しをする人。そして最後はコストを考えて最適な生産技術に落とし込む人。いま名シェフが作る料理を、その名シェフが監修して彼が唸るほどの美味さでスーパーでも買えるようになっている。ですから製造現場が全く無人になることはないと思っています。そのような転換を、日本が先頭を切って進めたいと思っています。それを海外でやったら日本の強みというのはなくなってしまうと思います。

Q:高田社長はどんな未来像をお持ちですか?
高田:長井社長と寺町社長が仰っていることに尽きると思います。私としては究極の自動化というのは、全部を自動化するのではないと思います。ワープロが出てきて人は漢字を書けなくなった。それと同じで、多くのことを機械化していくと、人間は何のために生きているのか判らなくなるのでは。だからどこかで線引きをして、そこから先は、90 %は使われていないと言われる人間の脳を使うようなやり方になっていくのが究極の自動化と思っています。

Q:インフラなど一般の生活の中で、どのように変化していくのでしょうか?
長井:わが社の場合は作っているのが「ハーモニックドライブ」という波動歯車装置という減速装置だけです。あまり多くのことは出来ないが、自動化の個々の機器の精度をあげたりエネルギー効率を上げたりするものです。この減速機は小さなモータでも大きな力を出せる。省エネになるので、それを必要としていただけるところにはたくさん使われている。作っているものがひとつなので、直接自動化につながるかは判らないが、あとで会場の展示品を見て下さい。いま一番小さいのはボールペンの先くらいの減速機です。医療機器や有名なテーマパークのアニメーションロボットなどにも採用されています。製品を進化させることで工場以外でも、自動化ではないが、社会に貢献できるのではないかな、と思っています。

THK:低慣性ボールねじ・スプラインBNS-V形(新製品)

Q:寺町社長はお二人の話を聞いて何かありますか?
寺町:まず、自動化すると電気を無駄に使うのではないか、という意見がありました。各社はいかに消費電略を減らすかに腐心しています。THKはもともとエネルギー効率の良い製品を作ってきました。そこではいかに無駄をなくすか努力します。そうした方向で技術は進化すると思います。もう一つは自動化されていくということは、無駄をなくすことです。自動化することで電気の使用量は増えますが、同時にエネルギー効率は良くなり、最終的には減っていくと私は思っています。自動化が進めば進むほど、無駄な電気は使わなくなる。ロボットに全ての仕事を任せられるようになると、この会場のような照明もいらなくなります。電力の問題は自動化が進むと減るのだと思います。
質問があるか、ということですが、SMCさんは先端の新しい仕組みを取り入れたり、伝統的な空圧機器も開発しています。社内のどういう方が開発されているのか。そこらへんのコツを教えて下さい。
高田:新しく開発部の建物を建築中です。昭和的には許されないのでしょうが、これから若い人に興味を持ってもらうために、日本の若者だけでなく、もちろん言葉の問題や税制の問題とかもあるけれど、欧米の“意中の企業”と言われているところに行くと「えっ、これがオフィス? これが工場?」というのがあります。そういう企業に負けないようにするために、いろいろなところを見てみる。まあ、物まねですが、勉強しています。コロナの最中にも外国に積極的にいきました。米国、韓国、オーストラリア、トルコ、マレーシア、インド、インドネシア、タイ、ドイツ、イタリア、スイス、オーストリア、オランダ、スウェーデン、オーストリアなど。コロナの時は飛行機がすいていてよかったのですが、今は随分詰め込んでいます。SMCの場合は売り上げの 80 %が海外で、そこからどういう知見が通るのかを見ることも大事で、海外の市場から見ると「なんでSMCのような日本の製品を使わないといけないのか」というユーザーがいます。違う文化じゃないか、とか海の向こうから買わないといけないじゃないか、といわれたことがある。そういうことを乗り越えていかないといけないと思っています。
寺町:コロナの時にそれだけ海外を回っていたのは驚きです。私は国内で縮こまっていました。3年無駄をしたな、とつくづく思っています。

Q:長井社長はお二人に伺いことはありますか?
長井:ウチは一つのものを作っている“モノカルチャー”です。ものを作るのはロボットがやるようになりますが、作業を分析してロボットに仕事をやらせるのは人間です。人間がやらなければいけない仕事はいっぱいあります。現場は無人化されてもそのような中で人間は、どういう資質を持っていれば企業は成長して行けるのか、を伺いたい。私は非製造業からの転職組ですから、異文化を経験してきた者として、「異文化を背景に持つ者同士」はお互いに刺激を与えられるもの同士で、良いことではないかなと思います。
採用の話になりますが、最近の若い人たちは、一生同じ会社で働こうという気はなくてドンドン転職していきます。採用する際には見極めが必要ですが、これをダイバーシティと呼ぶのは抵抗があります。新しいもの、異質なものを受け入れられる体制は作っておかなければいけない。そのためのしっかりした物差しをもつことは経営者側の大事な責任です。
プライベートでもお会いして話の出来るお二人とは信頼して相談できるが、企業も良心を持たないといけない。良心がなくても金儲けは出来るが、良心をもって経営を続けることが、大事だと思っている。
 高田社長の所は売り上げの 80 %以上が海外で、ウチもドイツと米国に生産拠点があるが、必ずしも「グローバル」という言葉が好きではなくて、均一に同じものを作るのではなくて、日本のお客さんと欧州のお客さんのニーズは全く違う。売り上げの半分近くを占めるのは日本のロボットメーカーですが、米国にはロボットメーカーがないので、米国のハーモニックは全く別の仕事をやっています。それでもコアになる「ハーモニックドライブ」という製品は同じです。これをグローバル・オペレーションとは呼ばずに「トランスナショナル・オペレーション」と呼んでいます。各拠点はコア技術と資本は共通ですが、欧米市場のニーズは判らないし、そこまで御用聞きに行けません。ですから完全に任せています。各種のポレーションも責任者も現地の人間です。その意味では親の我々のほうが国際的にならないといけないのですが、高田社長のSMCさんには学ばせていただいている関係です。

Q:高田社長からお二人に伺いたいことはありますか?
高田:仕事の話と直接関係しないのですが、お二人とも私より年齢が少し上なのですが、そのバイタリティの秘訣はなんですか?何を食べたらこんなに元気が出るのですか?
長井:お肉です。
寺町:基本的にはまず、仕事が好き、ということだと思います。さきほど若い人が責任を取りたくない、という傾向があるとのことでしたが、トップになればやりたいことができる、それが原動力になるのではないですか。

Q:さきほどアメフトは戦略と準備のスポーツで、ビジネスに繋がるという話がありました。ラグビーはいかがですか?
高田:米国に 30 年いたのでアメフトに接する機会も随分あった。アメフトは戦略を作って、それをやる人がいて、素晴らしいスポーツですが、ラグビーは組織論ではないですが、前回の代表チームに何ヵ国の人がいたかは把握していないけど、何ヵ国かの人が入っていて、最近ではバスケットボールもそうですが、それがベクトルが合っていて、息が合っていてありとあらゆるパスが変幻自在に出てくるような、SMCでいえばアルゼンチンの人、コロンビアの人、タイの人達がいきいきと仕事ができる、そういうような環境を社内で作れたらと思います。

Q:寺町社長、野球も仕事に通じるところがありますか?
寺町:メジャーリーグに行くと、いろいろな国から人が集まってチームが構成されています。最近は大谷君が非常に頑張って、日本全部のステイタスを上げてくれています。米国はローカル色が強く、敵対するチームに対するブーイングは凄いのですが、彼は敵地に行っても応援されている。これは「日本もそのように成れる」という証明でしょう。われわれも海外で知名度を上げたいという思いがありますが、勉強することはたくさんあります。
 日本は変わらないといけないと思います。「お客様は神様だ」とか「次工程はお客様」とか言いますが、日本には“士農工商”的なものが残っている。先日の株主総会で、日本の考え方を欧米にもっていかないのか、と質問されたのですが、欧米では発注側も受注側も“対等”なのです。日本はどうしても上下関係になってしまう。均質なものを作る、ということが重要だった時代には非常に強かったけど、新しいものを作っていこうとするときは対等の関係になっていかないと生まれない、と考えています。向こうの良い所を潰さないようにしないといけない。そのためには社会変革をしていく必要があると考えています。

Q:最後に長井社長に締めのご挨拶をお願いします。
長井:日本はお金を払うほうが上であると考えるけど、相手はその金額と同等の価値のあるものを提供するのだから立場は平等だ、と社内に言い聞かせている。
締めの言葉、ということですが、今回は2回目で、皆さん個性的な会社で、質問に対する回答もそれぞれですが、そのような考えで経営しているのだ、ということが伝わったのなら嬉しいです。みな部品メーカーですので、良い部品を作ることで社会に貢献できればと思います。今後とも、引き続き宜しくお願いします。

以上が3社社長鼎談のあらましです。

その後、下の3つのテーマで講演が行われた。
SMC㈱開発9部 佐藤俊夫部長の『「掴む」の最新動向』 ここでは 80 年代後半に話題になった「ロボットで卵を掴めるか?」の回答となるソリューションが紹介されたが、プロタイプということでスライドだけの紹介だった。近々正式発表するということなのでお楽しみに!
THK㈱産業機器統括本部技術本部応用技術統括部GE部DS課 向井篤史課長の『「省エネ化」「省人化」「自動化」を実現するTHK直動システム技術紹介』
㈱ハーモニック・ドライブ・システムズ開発・技術本部設計部黒木潤一マネージャーの『ハーモニックドライブの挑戦~産業そして宇宙開発』

寺町社長が座談会で述べていたように「対等の関係」で始まる新しいビジネスの形が花開くことを楽しみ待っている。