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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・コンテンツ

岩波徹の視点

3.11に思う

2024 年 03 月 19 日

 毎年3月 11 日が近づくと“あの日”のことが蘇ってくる。2011 年の3月 11 日は金曜日だった。私は、その数日前に救急車で運び込まれた 90 歳を超える母の入院先に容態を聞くために会社を早退・帰宅して車で町田に向かう準備をしていた。大きな揺れが始まると、家の前で立ち話をしているご婦人二人が「これはおおきいわねぇ」などと呑気に話している。二人の頭上には、電柱の上に大きなトランスがゆらゆら揺れている。「そこは危ないから離れなさい」と思わず叫んだ。状況を見極めるために、急ぎ部屋に戻りテレビをつけた。当然、テレビは混乱していたがお台場が見える映像では煙が上がっている。震源地が東北地方の東の海上だとアナウンスがあり、津波が来ると緊張が走っていた。私の姉が仙台にいて、電話を掛けたが既に繋がらなかった。そして津波が白波を立てて押し寄せてきた。民放の女子アナが「まるで映画を見ているようです」と叫んで顰蹙を買ったようだが、私もそのように感じた。懸命に逃げる小型車が追いかけてきた波にのまれてしまった。多くの家が黒い濁流に破壊されていった。大自然の前では人の営みなど無力なものだ。
 私たちの社会は、さまざまな要素・ユニットが絡み合って構成されているが、産業革命からこの方、科学と技術が進化した結果、情報革命やIoTなどで、従来のやり方を見直す時期が来たと思う。私たちが暮らすこの地球も、環境が変わり気候変動が議論になっている。JICE(国土技術研究センター)にアクセスすると「国土を知る/意外と知らない日本の国土」というファイルがある。それによると①国土の面積は全世界の 0.29 %にもかかわらず全世界で起きるマグニチュード6以上の地震の 18.5 %が日本で起こり、②全世界の活火山の 7.1 %が日本にあり、全世界の災害で死亡する人の 1.5 %が日本で、被害金額の 17.5 %が日本の被害だとある。ビジネスマンとして区切りをつけてからも、多くの人に情報を届けたいと「ことラボSTI」を始めた。例えば災害時に、報道機関は有益な仕事をしていないと思う。被災者の惨状を繰り返し流すだけで、行政がどのように行動しているかは伝えられない。日曜日朝のTBS系「サンデーモーニング」のコメンテイターとして不定期的に登場する田中優子・法政大学名誉教授が「テレビは一体、何をしているのだろう」と発信している。
 いま日本だけでなくハワイやアイルランドなどでも地殻運動が活発だ。日本でも能登半島だけでなく房総半島・東京湾近辺、奄美諸島界隈、西ノ島、北海道周辺、富士山周辺など不気味な動きを見せている。南海トラフも不気味だ。「防災はできないが減災はできる」と専門家から聞いたが、いまの行政の体制は「起きたら全力で対処する」という姿勢で、減災のための努力をしているようには見えない。このままいけば、大災害が起きてから、慌てふためいて対応するのだろう。自治体の首長は「県庁にいて陣頭指揮を執っていた」と言い張るだろうが、本当だろうか? テレビカメラが現場に入り、その様子をリアルタイムに伝えれば、現在何が起きているか国民にわかるだろう。自分の仕事ぶりに自信がないのだろうか?自衛隊も“国土防衛隊”に改組して、来るべき国難に備えるべきではないか、と思い悩む今日この頃だ。