メールマガジン配信中。ご登録はお問い合わせから

ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・コンテンツ

岩波徹の視点

もっと展示会を

2022 年 12 月 06 日

 東京ビッグサイトがオープンして5年目の 2001 年に、おそらく東京ビッグサイトが主催したのだと思うが、「5 周年記念イベント」としてパネルディスカッションが開催された。コンベンションを研究している3人の大学教授が参加していた。うち1人はビデオで参加だったが、2人の先生は壇上に上がって論陣をはった。JIMTOF期間中にこのことを東京ビッグサイトの方に確認すると、噂では聞いたことがあるが自分は知らない、と当時を知る人はもう少ない、と。
 さてその内容が強烈だった。当時は会場へのアクセスは新交通システム「ゆりかもめ」しかなく、臨海鉄道りんかい線は部分的に開通していたが、今日のような形ではなかった。まずそこから論戦が始まった。「(新橋駅始発の)『ゆりかもめ』、あんなのは交通機関とは言えない」~当時、大きな展示会が開催されるとJR新橋駅横の広場には「ゆりかもめ」に乗るための乗客が行列をなし溢れていた。「本気で国際的な展示会場にしたいなら、羽田空港から展示会場に直接乗り入れる交通機関を作り、海外からの来場者のためのホテルを作るべきだ」~この視点には大きく頷いた。さらに「展示会が開かれるときだけ営業するコンビニしかない不便な場所でコンベンションなどできない」~いまはいくつかのコンビニがあるが当時は、ビッグサイト内にしかなく、しかも展示会期間中しか営業しておらず、搬入出期間中は皆、困っていた。「日本の展示会場の多くは、地方公共団体の箱物行政の押し付けで、臨海部の埋め立て地に作られたために軟弱な地盤で重量物を展示できない」~なるほど東京湾に面して「東京ビッグサイト」、「幕張メッセ」、「パソフィコ横浜」がグルリと並んでいるが“小粒”過ぎて、国内的にはそれでも良いだろうが、アジアの産業振興を考えるには物足りない。国の産業政策として「展示会」は組み込まれていない。重量物を展示するために会場の床は硬くできており、その結果、来場者の足腰は疲れやすく、しかも休憩所も少ない。展示会とは必要に迫られていくところで、ときにはイヤイヤ行くところだ」~これは同感。日本では「展示会ビジネス」のノウハウが少なく、多くが新聞社などのメディアや地方公共団体が主催者になっている。
 公共団体が主催するイベントで、ここまで辛らつに展示会ビジネスの現状を批判するのは、日本では勇気がいる。世界中を見てきたわけではないがドイツにもイタリアにも中国にも、その広さに腰が抜けるような展示会場がある。パネリストの一人が「来場者に気を遣う展示場は世界中にあるが、出展者に配慮している展示会場は少ない。その点、米国のサンディエゴの展示会場は優れている。来場者には休む場所が多く、出展者には会場を抜け出すと目の前に米国海軍の艦隊が停泊しており心が洗われる」と。そして「日本の産業規模を考えると、展示会ビジネスはいまの3倍は大きくなるはずだ」と予言めいた発言で終わった。箱物行政から、もう一歩先の新たな価値を見出す時代だ。早くしないと、産業界における日本のアドバンテージが、そろそろ尽きようとしている。