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機械と道具論 回答済み

2022 年 02 月 17 日

 英語で工作機械を「machine tool」と呼びます。これを日本語として表現するときは「工具のついた機械」なのか「動く工具」なのか、どちらがどちらを形容しているのですか。そもそも「工作機械」という言葉は誰が日本で言い出したのですか。

回答者:株式会社ことづくりラボSTI 代表 岩波 徹

 これは案外と面白い質問です。金属加工に使う工作機械は明治維新の頃、日本に入ってきました。オランダから竪削盤をはじめ18台の工作機械が輸入されました。これらは今も長崎の三菱重工長崎造船所にある史料館に展示されています。ところで、これらの機械に「工作機械」という名前を与えたのは、何時?誰が?なのか、は実は判っていません。
 さて「machine tool」ですが、多くの人に「工作機械は“機械=machine”ですか“工具=tool”ですか」と聞いてみると、大半の人が「機械」だと答えています。しかし、私の知人の大手工作機械メーカーの技術者は、
「工作機械は“tool”すなわち工具です。ノミや鋸と同じ工具(道具)なのです。
この道具を如何に上手く使うかによって、削られた結果は大きな違いが出るでしょう。
同じ機械をAさんとBさんが買って、使った結果、儲けたAさんと利益が出ないBさんを見ることがあります。
この差は、道具を如何に上手く使いこなすかによります。
だから、機械でなく道具なのです。
この違いは、『どの様に加工するか』。
 例えば、主軸の回転数、送り速度、刃物の状態、加工物の取付方、加工工程等・・・・と
 作業者が決めなくてはならない項目が沢山あります。
それに反して、ミシンは「sewing machine」と呼びますが、これは機械です。
誰が使っても、ボタンを押せば、同じ様に縫うことができます。
上手い下手の差は出ないでしょう。」と。

 いかがでしょうか。工作機械を取り扱う人が感じている面白さに共感できませんか?
工作機械には人が関与する余地が残されています。一方でパソコンやスマホなどの情報機器には、使い手の関与する余地はありません。開発したメーカーが「このように使いなさい」と、細かなアルゴリズムが設定されていて、それに従うだけです。操作に慣れない人や開発者の意図を理解できない人には「さっぱり判らない」と放り出したくなります。こういうところにストレスを感じて、変な行動をする人が増えてきたのかもしれません。