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素材についてのマメ知識 回答済み

2021 年 12 月 01 日

 私は金属加工の工場に就職しました。いろいろな材料を工作機械で加工します。金属加工には、どんな材料があるのですか。

回答者:株式会社ことづくりラボSTI 代表 岩波 徹

 工作機械は、さまざまな素材を除去加工して目的の部品形状をつくるときに使われる機械です(板金加工は異なりますが)。最終製品や部品を作る「母なる機械」(マザーマシン)と言われる所以です。
 また、一口に工作機械と言っても、木工用、金属加工用など、材質によって異なります。今回は、金属加工を中心にお話させていただきます。
 一口に金属加工の材料といっても多種多様です。一番多いのが鉄鋼に分類される鋼材でしょう。
 鉄鉱石を原料として高温の炉で精錬してできるのが銑鉄です。銑鉄には4~5%前後の炭素などの不純物が入っています。これを元に、くず鉄などを加えて、精錬してできるのが鋼(はがね)です。それを熱して溶かし、型の中に流し込んで作るのが「鋳物」です。そうして使われる材料は鋳鉄(ちゅうてつ)と呼ばれます。
 金属加工でよく使われるのが「S45C」と呼ばれる「機械構造用炭素鋼」です。CはCarbon(炭素)を表しています。炭素の含有量が0.42~0.48%で、あいだをとって45です。加工性、研削性、溶接性がよく熱処理により強度を増すこともできます。この分野は「表面処理技術」として勉強が必要です。
 しかし、空を飛ぶ飛行機や燃費を良くしたい自動車などには、もっと軽い材料を使いたい、というニーズがあります。鉄の比重が7.85なのに比べて、アルミ(2.7)やチタン(4.5)や炭素繊維含有プラスチック(CFRP)は、炭素繊維を樹脂で固めたもので、金属ではないですが、比重は1.4~1.7と航空機に採用されています。各素材メーカーは材料の開発に勤しんでいます。もう数年前になりますが、ある工作機械メーカーを訪問した際に、外国から調査隊が来ていました。これから十数年後に航空機に使われるかもしれない新素材の切削性を調査している、と。すでに数社の工作機械メーカーを回っていて、一片の切りくずも残さず、すべてを持ち帰ったそうです。日本は素材開発でも強いと言われますが航空機に関しては、ライバルとなる強国はたくさんあります。
 マシナビリティという言葉があります。「削り易さ」を表す言葉です。常に新しい素材を探している航空機エンジン(ジェットエンジン)を作る企業の方に、米国企業の資料を見せてもらいました。それによると鉄を100とした場合、アルミは400、つまり鉄の4倍削り易い。チタン合金は55でニッケル合金が45。さらに単結晶合金はわずかに8、つまりほとんど削れないということです。1200℃を超えるジェットエンジン内部に使われています。曲線で構成されているタービンブレードは、まず鋳型に流し込み、砥石で成形していると聞きました。
 そのほかにも、特殊鋼という分類もあります。素材についての研究は、これからも続けていきます。