ことラボ・レポート
マグネスケール 奈良事業所 半導体製造における基幹要素 レーザスケールの新工場が完成

マグネスケール奈良事業所
DMG森精機株式会社のグループ会社である株式会社マグネスケール(代表取締役社長・大野治)は、2026 年4月9日(木)、高精度 リニアエンコーダ「レーザスケール」の生産拠点として、奈良県大和郡山市に奈良事業所を開所した。
同社は神奈川県伊勢原鈴川に主力工場を持っているが、半導体製造における基幹要素であるレーザスケールの需要増加に伴う生産能力の拡大、そして事業継続計画(BCP)強化を目的として建設された。
開所式には大野社長はもとよりDMG森精機グループの代表取締役会長の森雅彦氏も参列した。来賓には山下真・奈良県知事や近畿経済産業局・武田家明局長などが来場した。挨拶に立った大野社長は、生成AIが多用されるためにデータセンタの建設が増えており、それに伴い半導体需要が急伸していること。さらに急務とされているのが 2011 年の東日本東北大震災以降に熊本、能登など日本全国で続いている震災から南海トラフや富士山噴火など予想される大災害にそなえる事業継続計画だ。神奈川県伊勢原市にある伊勢原事業所は、富士山噴火では厳しい状況に置かれる。富士山ろくに本社のあるファナックも栃木県壬町に筑西工場を建設した。

大野 治 代表取締役社長
続いて挨拶に立った森会長は歴史に触れて具体的なエピソードを紹介した。マグネスケールの母体はソニーで、ホンダと並び戦後に創業し日本を元気づけた同社は、テープレコーダが世界的なヒット商品だった。そこで使われる磁気テープの用途開発で誕生したのが“マグネスケール”だった。1965 年に“磁気式計測技術”が発表され 1969 年に磁気式計測器、マグネスケールの開発・設計・製造・販売を目的に設立されたのが『ソニーマグネスケール株式会社』だった。1990 年代に日本精密測定機器工業会が主催する測定機器の展示会《マイクロテック》展で同社が『ナノスケール』を発表したと記憶している。“ナノ”という単位を始めて知った経験だった。その後、『ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社』(1996 年)、『ソニーマニュファクチャリングシステムズ株式会社』(2004 年)と社名変更されたが 2010 年に森精機の傘下に入り『株式会社マグネスケール』となり今日に至っている。

森 雅彦 代表取締役会長
DMG森精機はJR奈良駅前に第2本社を開き奈良事業所を大幅に増改築し、サキコーポレーションやマグネスケールの奈良県下での事業環境強化を進めているばかりかボルダリング用体育館を作りJR近鉄戦・新堂駅構内に図書館を公開するなど、創業地・奈良県に積極的な関りを展開している。奈良地区の豊富な歴史的資産を意識して、最先端の生産システムの打ち合わせに来県したお客様が、週末には日本が誇る文化資産に触れていただければ、日本の歴史に触れることが出来るだろう、と挨拶をした。
磁気式計測技術をコア・コンピタンス(得意技)にしたマグネスケールだったが、もう一つの柱としてレーザ技術を使った『レーザスケールBS10』シリーズを 1988 年に販売開始した。

レーザスケールのイメージ
レーザスケールは、最先端の半導体製造装置に使用される高精度リニアエンコーダで、その検出ヘッドには、回折格子スケールからの回折光を利用して、回折格子の記録ピッチより細かい信号周期を得る『格子干渉計』という原理と、温度や気圧、湿度の変化の影響を光学的にキャンセルする独自の光学原理を兼ね備えることで、高分解能かつ高い安定性で位置検出を可能にした。
信号処理においては、検出ヘッドの干渉信号を高分解能で内挿し、最適な状態に波形補正することで、内挿誤差を極限まで小さくすることを可能にしている。スケールは、発売当初から一貫してホログラフィックに作る干渉露光法を採用することで、非常に優れたリニアリティを持っていることが特長だ。
伊勢原事業所と新設の奈良事業所を合わせて、年間6万軸の生産能力を確保するとともに、2030 年に売上 300 億円を目指す。 マグネスケール奈良事業所では、AGV(無人搬送車)と生産管理システムを連携させた自動搬送システムを導入することで、生産効率と品質の両立を目指している。部材から仕掛品に至るまで工程間搬送を自動化し、 最適なルートでの自律走行を実現することで、生産リードタイムの短縮と生産性の向上を推進する。 また、製造工程における環境負荷の低減を最重要課題の一つと捉えており、持続可能なエネルギー対策として、2026 年2月から工場屋根に大規模な太陽光発電パネルを設置し、再生可能エネルギーの供給を開始した。発電容量は約 491 kW、年間想定発電量は約 54 万kWhで、発電した電力の全量を本工場に供給 する。これにより、年間約 225 トンのCO₂排出量の削減を見込んでいる。工場内で使用する全ての空調と照明の電力を賄い、再生可能エネルギーを活用したサステナブルな生産を実現しる。
開所式典では来賓の挨拶に続いて祝電が披露された。「奈良県に有力な企業が立ち上がることは喜ばしく、発展を祈っている」と。発信人は奈良二区選出の「衆議院議員、自民党総理、内閣総理大臣、高市早苗」と読み上げられると、会場内には“オッ”という空気が流れた。
マグネスケール奈良事業所は、生産能力の増強を図ると同時に、クリーンエネルギーを活用した「次世代型 スマート工場」としての運用を目指し、最先端半導体市場の発展と進化に対して、技術と供給の両面から貢献していく。

乾杯の発声は日本精密測定機器工業会の吉田均会長
式典は鏡開きと日本精密測定機器工業会の吉田均会長による乾杯でお開きとなり、参加者は施設見学に回った。今回は建屋完成の式典で、生産設備の導入はこれからなので実際は最先端の生産設備にはお目にかかれなかったが、写真のようにこの日のためにわざわざ伊勢原からデモンストレーションのためにスタッフが実演していた。施設内のクリーン度はクラス6とクラス7を併用している。コンタミの障害を最小化するために工場内物流には上述のように、AGV(無人搬送車)と生産管理システムを連携させた自動搬送システムを導入する。部材から仕掛品に至るまで工程間搬送を自動化し、 生産リードタイムの短縮と生産性の向上を推進する。

クリーンルームでの組み立て作業
【株式会社マグネスケールの会社概要】
本社 :東京都江東区枝川3-1-4
代表:代表取締役社長 大野 治
創立:1969 年8月1日
資本金:10 億円
事業内容:レーザスケール、マグネスケール、デジタルゲージの開発・生産・販売
生産拠点:伊勢原事業所(神奈川県伊勢原市)、伊賀事業所(三重県伊賀市)、 奈良事業所(奈良県大和郡山市)
備考 :2010 年にソニーマニュファクチュアリングシステムズ社の計測機器事業を譲受け、 株式会社マグネスケールとしてDMG MORIの連結グループ化。
【株式会社マグネスケール 奈良事業所 概要】
住所 : 奈良県大和郡山市上三橋町355-1
開所日: 2026 年4月
敷地面積: 13,220 ㎡(3,999 坪)
延床面積: 17,622 ㎡ (5,331 坪)
投資額: 約 117 億円
建物 : 地上3階、地下1階