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2025国際ロボット展 開催される
“ロボティックスがもたらす持続可能な社会“をテーマに《国際ロボット展・iREX2025》が 12 月3日から6日までの4日間、東京ビッグサイトで開催された。今年で 26 回目になるロボット産業最大の展示会だが、ロボットの持つ可能性の高さ、守備範囲の広さゆえの輪郭の曖昧さが原因と思われる“嬉しい悩み”の尽きない展示会と見受けた。

開会式でのテープカット
今回展の出展規模は、673 社・団体、3,334 小間(前回 654 社・団体 3,508 小間)だった。一時期、ロボットが注目され始めた 1980 年代には、米国でも欧州でも大掛かりなロボット展が開催されていたがいつのまにか消えたようだ。ロボットに対する距離感は、鉄腕アトムで育った日本人とキリスト教世界の先進国と異なるようだ。唯一絶対神が創造した世界を信じる宗教観を持つ人々には、機械すなわちモノであるロボットに「花子さん」とか「太郎君」とかの人格を与えるなど許されないことだった。しかしその先進国にも移民が増え、一つの宗教観が成り立たなくなり同時に産業内の競争が激化するとドラスティックな改革が進み、製造現場から人の排除が進んでいった。自動化と省人化は表裏一体となってロボットの利活用が進んでいった。その間、通信技術の進化、サーボモータの加減速特性の強化と繰り返し位置決め精度の向上で『ロボット元年』と言われた 1980 年とは比べ物にならない時代になった 。
しかし、多様な用途を持ち多彩な構造をもつロボットにどのように向き合うのかまだ正解に辿り着いていない。来年1月 21 日から 23 日まで東京ビッグサイトで開催される《ファクトリーイノベーションWeek》展(RXジャパン主催)の中にも《第 10 回ロボテックス~ロボット〔開発〕〔活用〕展》が開催される。そこでの分類が①工場向けロボット、②物流向けロボット、③サービスロボット、④ビジョンシステム、⑤ロボットハンド、⑥ロボット周辺機器となっている。この分類も“ファクトリー”のカテゴリーに留まるし、工場を出たところでは使えないだろう。

東ホール通路の来場者の盛況ぶり
ロボット工業会は新たな試みとして、従来の「産業用」「サービス用」との分類を「スマートプロダクションロボット」と「スマートコミュニティロボット」の二分野に分けた。前者は製造業・建設業・農林水産業を支え、活躍するロボットを対象とし、後者は地域および日常生活の中で健康かつ安全・安心な社会を支え、活躍するロボットと分類した。各分野の出展傾向を見ると、スマートプロダクションロボットでは、搬送・仕分け・ピッキングが最も多く、次いで組立、測定・検査となっていた。また、スマートコミュニティロボットでは、最多が配送分野で、続いて医療となる。トレンドとして、AIを活用したロボットやソリューションの展示も増加していた。
なお、ロボットに欠かせない要素技術の分野では、駆動・センサ・制御系の出展が最多だった。
会場内スナップ




それにしてもこの人だかりの中で、求める情報を得られるのだろうか。主催者は「スマートプロダクト」「スマートコミュニケーション」に分類しているが、まだ浸透していないし用語としてこなれていない。出展者によっては両方分野の製品を開発している。事務局情報では、企業単位の枠を取り外し分野毎の製品を集めて展示する案も出るそうだ。しかし、競合他社と共同展示することは好まれないという。「企業」の枠にとらわれない展示方法は取れないのだろうか。
ここでIMS(Intelligent Manufacturing System )の顛末を思い出す。それは「公共性」の問題だが、日本の産業界が新しいステージに上がるためには必要な議論だと思うので話を進める。
1980 年代に日本の製造業が花開き、怒涛のような対米輸出が続き反感を買った。先進国から“特許ただ乗り”と非難されたとき、東京大学工学部の吉川弘之教授(後に学長、名誉教授)が提唱したのがIMSだ。理化学の原理原則は人類共通の財産として共有されている。しかし工学の世界は、利益に直結するので秘密に包まれている。そこで吉川教授は基本的な生産技術は、人類共通の財産として共有できるのではないか、と世界に提案。日本は製造技術を出す。欧州はメカニカル技術を米国はソフトウェア技術を持ち寄り、みなで人類共通の財産として生産技術の共同研究をしましょう、と。製造科学技術センター(MSTC)に残る「20 周年記念誌」を見ると世界中のエクセレントカンパニーが参加していた。しかし 20 年も経過すると、通産省(現・経産省)の支援が打ち切られIMSセンターはドイツに移された。のちにその時の研究成果が「インダストリー4.0」として発表された。IMSセンターの元スタッフの中には、もう少し継続していれば、と悔しがる人もいる。しかし、中心企業の人からは「当時の技術では理念を実現するデバイスがなかったから仕方がない」と説明を受けた。
資本主義社会では各企業が利潤を上げようと頑張っている。同業他社が集まり組合や工業会を結成し、それを監督する官庁が生まれてひとつの国家の産業文化が形成される。そこで始まる産業行政が、どちらの方向を見ているかでその国の文化が生まれてくると思う。折角、各国の優良企業が集まって“人類のために”という崇高な理念で動いていても監督官庁が、興味を失い旗を降ろしてしまったら、社会の前進は望めない。あのとき将来の製造業の技術的萌芽を感じる行政官やエンジニアがいれば、インダストリー4.0などで慌てふためくことはなかった。
さてロボット産業の現状を見てみる。確かに自社のブースは自社製品で満たすべきだ。しかし、それを使うつもりの来場者には、同類の製品を広い会場の中で、多くの人をかき分けて探す意欲があるだろうか?
例えばロボットが作業をするロボットハンドは、ロボット本体とつなぎ合わせて使う。作業目的に合わせて最良のハンドを使うほうが作業効率は良いからだ。しかし現状では、このロボットハンドの繋ぎ部分は標準化されていない。A社とB社のロボットを使うときは、二通りのハンドを用意しないといけない。これは不便でユーザーは納得しないだろう。
中国が、国家権力で標準化を強制したらどうなるのだろう。「技術で勝ってビジネスで負ける日本」という本があるが、目先の利益に追われて大局を忘れると同じ“覆車の轍”を踏むことになる。狭い日本の産業界で、目先の利益だけしか頭にないと、大きなビジネスを失うことになることに気づいて欲しい。