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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

最新の業界情報

日本工作機械工業会(2025年6月分)確報

2025 年 08 月 06 日

 (一社)日本工作機械工業会は、7月 23 日に6月分の受注額確報値を発表した。新会長の坂元繁友氏が初めて臨む記者会見で、前会長の稲葉善治相談役も同席していた。

【坂元会長のコメント】
 5月 30 日の定時総会で会長に選任されました、芝浦機械では企画や戦略施策に係わってきたが大学では機械工学で入社後の最初の配属は工作機械の設計部門でした。私には工作機械は大切な礎で強い思い入れがあります。会長に就任後、各方面から激励の言葉を頂き身の引き締まる思いです。これまでの経緯を活かしつつ会員各社のご支援ご協力をいただき全力を尽くしていきたいと思っております。
 業界活動では、具体的にはその時点でお話しさせていただくが、まずは稲葉前会長が設定されたデジタル、グリーン、レジリエンスの取り組みを順次実行し、具体的成果の確保を目指し、国内の老朽機の更新を強く促す政策・措置を会員企業やユーザーの目線に立って強く推進し、実現・実行を図ること、この2点を着実に進めていくことを強く思っている。
 また世界情勢が大きく変化しつつある中で、海外の動向についても様々な方法で情報を収集し、機敏に対応する必要があると思っている。国際、輸出管理などさまざまな委員会で取り組みつつあるが、私自身も9月下旬にドイツ・ハノーファーで開催されるEMOに赴き、各国工業会首脳との関係構築や海外メーカーの展示動向など知見を深めてまいります。
 さて7月に発表された経済指標をみると、中国では第二四半期の実質GDPの成長率が、前年同期比で+ 5.2 %と第一四半期の+ 5.4 %を下回った。またわが国の外務省が発表した6月の貿易統計では、自動車の対米輸出額が△ 26.7 %と減少し、米国の関税処置の影響が感じられる。関税措置の震源地である米国では、一律 10 %を足した相互関税の経過関税を7月末まで延長される一方で、8月1日から追加関税が各国別に示されている。我が国に対しては今朝がた、トランプ大統領がコメなどの農産物や自動車の市場開放、5,500 億ドルにのぼる対米投資などを条件に相互関税を 15 %にすると合意したと、自身のSNSで発表されており、両国政府からの正式なアナウンスに注目していきたい。今朝がた発表されたもので、内容を精査していないので、今後も注目していきたい。
 また本日より、日本とEUの首脳会談が東京で開かれるなど、大国の動きをけん制し連携の強化する外交も行われている。
 一方、各国の株式市場も推移しているが、わが国の長期金利については将来的な財源の扱いや関税措置の扱いが懸念されて、7月 15 日に 1.595 %と 17 年ぶりの高止まりが続いている。
 こうした中での6月の受注総額は以下のようになりました。

1.概況【6月受注】:
受注総額:
1,331.6 億円(前⽉⽐+3.5%(3カ⽉ぶり増加) 前年同⽉⽐△2.5%(9カ⽉ぶり減少)
受注総額は、4カ⽉連続の1,200億円超。1,100億円超えは52カ⽉連続。 前年同⽉⽐では9カ⽉ぶりの減少。
(1)内需 398.7億円(前⽉⽐+20.80% 前年同⽉⽐△2.3%)
3カ⽉ぶりの350億円超え。補助⾦の採択効果や、⼀般機械、⾃動⾞、 電気・精密機械での増加も、基調は横ばい圏内で推移。
(2)外需 932.9億円(前⽉⽐△2.5% 前年同⽉⽐+0.3%)
前⽉⽐で3カ⽉連続の減少も、900億円超えを維持。前年同⽉⽐では 伸び率で縮⼩も、9カ⽉連続の増加と堅調が持続。
⼯作機械受注の先⾏きは、⽶国の関税措置の影響が⾒通せない状況下、 内外需とも総じて様⼦⾒ながら堅調に推移すると⾒られる。

【ことラボSTIコメント】
 下のグラフを見るとかつての「1年王様、3年乞食」と言われていた時代は過去のものとなった、と判る。工作機械産業の“旦那”であった自動車産業の存在感の相対的な低下と先の見えないEV化論争で、指をくわえて成り行きを見ていると泥船になって沈んでいってしまう。
 150年前に近代化を急ぐあまりに、目の前にある近代的な生産システムを動かすことだけにまい進してきた日本社会だが、素材、加工法、メンテサンス、環境を統合的に考える良い機会が訪れてきた、と考えたらどうだろう。
 自動車が誕生したとき欧米社会は既に先行していた“馬車文明”に直面し、社会に向かって「自動車の有用性」を説いて回らなければならなかった。日工会は毎月配布する資料(工業機械主要統計)には、「受注」「受注残」「常用従業員数」など貴重な統計が掲載されている。
 ちなみに毎月の受注額をサッと見て「1250 億円」、従業員数を「26500 人」と置いて、受注額を従業員数で割ってみる。するとこの業界では一人当たり毎月 471 万円を売り上げていることになる。工場などの固定資産の減価償却費もあるので、単純には計算できないが、人々の生活を豊かにして社会を豊かにするための知恵出しをする時間くらいとれそうな気がする。昔は毎月 800 億円の受注があれば工作機械業界は回っていく、と言われていたことを考えると隔世の感がある。

.内需【6分】
(1)内需総額 398.7 億円(前⽉⽐+ 20.8 % 前年同⽉⽐△ 2.3 %)
・3カ⽉ぶりの 350 億円超え。前⽉⽐好調の要因を⾒ると、⼀般機械で 16.4 %、⾃動⾞で 44.7 %、電気・精密で 21.5 %とそれぞれ増加している。基調は横ばい圏内で 推移。
(2)業種別受注
・主要4業種
前⽉⽐:「一般機械」、「自働車」、「電機・精密」が増加
前年同⽉⽐:「一般機械」と「電機・精密」が増加
・全 11 業種中
前⽉⽐:増加8業種(「金属製品」「電気機械」「精密機械」等)
前年同⽉⽐:増加4業種(「⾦属製品」「電機機械」等)
(3)一般機械(産業機械等・金型)向け受注
・⼀般機械は前⽉⽐で3カ⽉ぶり、前年同⽉⽐で2カ⽉ぶりとそれぞれ増加。発電、掘削機などでまとまった規模の受注に起因
・建設機械は3カ⽉連続減少も、前年同⽉⽐では増加。
・⾦型は前⽉⽐で2カ⽉ぶりの増加も、12 カ⽉連続の 15 億円割れと低調。

【ことラボSTIコメント】
 このグラフで心配なのは、緑の折れ線グラフの「金型」部門の長期落ち込みだ。2021 年の前半でも低かったがこの時期は新型コロナで経済活動全般が不調だった。「2. 受注額の月別推移」グラフでもそれは判る。しかしそのグラフの青色(内需)が 300 億円から 500 億円を往き来しているのに比べて、「金型」は 2024 年1月から低空飛行が続いている。自動車業界の影響だ、と簡単に考える人もいるが、金型産業の海外シフトが着実に進んでいることも大きく関係している。“職人技の塊”のような金型だが、ハードウェアでは「熟練技術はいらない」といわれ、それを補完するソフトウェアも充実している。国の産業政策でも、金型産業の規模が小さく、その重要性にもかかわれず目が届いていないことを指摘しておきたい。

(4)自動車(自動車部品・完成車メーカー)向け受注
・⾃動⾞向けの設備投資は、2カ⽉ぶりに 50 億円超えとなり、前⽉⽐で+ 44.7 %、前年同⽉⽐ で△ 25.1 %となった。⽶国の関税措置や個社要因もあり、設備投資に慎重姿勢が⾊濃く表わ れている。
・⾃動⾞部品は前⽉⽐で+ 25.3 %となり、3カ⽉ぶりに 40 億円超え。

【ことラボSTIコメント】
 今月も「自動車向け受注」グラフと次の「主要業種別構成の推移」で自動車業界の“元気の無さ”が視覚的に理解できる。
 先日の参議院選挙の選挙公報を見て暗然としたのだが、日本の産業界が置かれている状況を認識して国民に訴える政党はどこもなかった。全8頁の選挙公報で唯一「日本に長期経済成長を」「新産業・科学技術立国で所得を倍増」といっていたのは「チームみらい」だけだった。国家の大計の前には“産業”などどうでもよいのだ。以前、某財団法人の式典で、経産省の製造産業局長が、居並ぶ研究者を前にして「霞が関で経産省の立場など低いもので、国民の健康を担当する厚労省、国民教育を考える文科省、国土を整える国交省、国家予算を建てる財務省など皆大事です。われわれはせいぜい産業が相手ですからあまり期待しないでください」と、ご本人はウケ狙いだったのでしょうが私は考え込んでしまった。いま経産省の仕事は、補助金を配っているだけに見える。
 高度経済成長を実現したという“成功体験”を忘れてグランドデザインを練り直す賢人会議を開催しないといけないようだ。

(5)受注内需 主要業種別構成の推移

【ことラボSTIコメント】
 毎月のように上記の表を紹介しているが、緑色の「自動車部門」の推移を見て欲しい。内需 399 億円に占める自動車部門の割合は、6月度「17.4 %」だ。遡って 2021 年は年間を通して「22.6 %」あった。2022 年は「22.3 %」と少し下がり、2023 年は「21.1 %」に、2024 年は「20.6 %」と2割を割り込みそうになり、今年の上半期ではとうとう「18.8 %」に下がった。そして6月単月では「17.4 %」だ。5月などは「14.5 %」だったことを見ると、「長期低落傾向」は間違いないようだ。経産省が警鐘を鳴らしている「脱・一本足打法」は急務だ。自動車に依存するのではなくロボットなどユーザー業界を多角化する“八ヶ岳構造”を提唱している。しかし霞が関の“縄張り意識”は根が深く、医療ロボットに関しては「国民の健康を守るため」の厚労省が絡むだろうし、建設ロボットでは国土省の、教育分野に行けば文科省の縄張りである。参議院選の結果は、こうした展望の見えない産業界を再構築する絶好のチャンスに見えてくる。

3.外需【6月分】
(1)外需 932.9 億円(前⽉⽐△ 2.5 % 前年同⽉⽐+ 0.3 %
・前⽉⽐は3カ⽉連続減少も、前年同⽉⽐では9カ⽉連続増加し、10 カ⽉連続の 800 億円超え。
・世界経済の不透明感と重なり、外需の伸び率は低調に推移。

【ことラボSTIコメント】
 先月から掲載を始めた上のグラフだが、日本の工作機械がアジアに深くコミットしていることを視覚的に理解できると思う。1990 年代に入り、中国の製造業が動き出したとき、セイコー精機(現SII)の守友貞雄社長(故人)が「日本人がアメリカに頭が上がらないのは戦後の復興を手伝ってくれたくれたからで、必要な技術も無償で教えてくれた。いまアジアは産業社会が立ち上がろうとしているが、日本人はそれを商売と捉えている。これではアジアに友達はできない」と心配していた。そして日本は“疑似白人”のように振舞っている。
 ドイツでタクシーに乗ったとき運転手はイラク人だった。私が日本人と判ると「先進国会議(サミット)は唯一のアジア代表なのにどうしてアジア代表として発言しないんだ。日本に戻ったら安倍に良く言っとけ」と言われた。なぜそんなことを言われるのかと反論すると「自分は仕方なくドイツに来ているが世界のことはインターネットでチェックしている。日本がアジアの味方になって欲しい」と言われた。
 トランプさんの登場は、アジアの中に仲間を持たない日本の立場を不安定にした。世界の中でどのような枠周りを果たすのか期待されているのか、太平洋の向こうの国ばかり見ていると、国連の常任理事国になるどころか、世界に相手にされなくなる。

(2)主要3極別受注
①アジア
アジアの受注額

アジア計は、3カ⽉連続の 500 億円割れ。前年同 ⽉⽐で 15 カ⽉ぶりの減少も、450 億円超と堅調を 持続
-東アジアは、3カ⽉連続の 400 億円割れ。
-中国は3カ⽉ぶりに前⽉⽐で増加、300 億円超えの レベルを維持。
-その他アジアは2カ⽉連続の 100 億円超え。
-インドは3カ⽉ぶりの 50 億円超えに回復。

アジアの業種別受注
・主要4業種は、前年同⽉⽐で「⾃動⾞」、「電気・精密」で増加。
・⼀般機械は、148 億円に回復し⾼⽔準を維持も、中国・インドの減少が響き前年同⽉⽐で 2割弱の減少。
・⾃動⾞は、前⽉⽐、前年同⽉⽐ともに増加、4カ⽉連続で 150 億円超えと⾼⽔準を推移。
・電気・精密は、ベトナムでの特需が⾒られるも、中国・インドでの減少が⾒られ4カ⽉ぶりの 90 億円割れ。

欧州
欧州の受注額
欧州計
は、2カ⽉連続の 150 億円超え。
-ドイツは、前⽉⽐、前年同⽉⽐減少も2カ⽉連続の 35 億円超え。
-イタリアは、前⽉⽐、前年同⽉⽐ともに減少も、4カ⽉連続 20 億円超え。

欧州の業種別受注
・主要4業種は、電気・精密を除き、前年同⽉⽐で増加も、概して低調に推移。
・⼀般機械は、2カ⽉連続の 50 億円を維持。
・⾃動⾞は、7カ⽉連続の 20 億円割れも、ドイツの⾃動⾞部品関連で回復に期待。
・電気・精密は、前⽉⽐、前年同⽉⽐とも減少で、2カ⽉ぶりの 20 億円割れ。
・航空・造船・輸送⽤機械は、防衛部⾨の伸⻑に依存する動きが続く。

北米
北米の受注額
北⽶計
は、前⽉⽐で減少も、5カ⽉連続の 250 億円超え。
-アメリカは、3カ⽉ぶりの 250 億円割れ。
-メキシコは前⽉⽐で減少も、前年同⽉⽐ 169.9 %増加 で、20 億円超え。

の業種別受注
・⼀般機械は、建機関連特需の剥落から、3カ⽉ぶりの 100 億円割れも、まずまずの⽔準を維持。
・⾃動⾞は、ICE関連投資の剥落から、8カ⽉ぶりの 30 億円割れ。
・電気・精密は、3カ⽉連続の 15 億円割れ。
・航空・造船・輸送⽤機械は、6カ⽉ぶりの 70 億円超え。

AMT事務局コメント(製造技術受注:3月分)
2025 年5⽉(P):3億 9,270 万ドル、前⽉⽐- 11.8 %前年同⽉⽐+ 2.7 %
 2025 年の5⽉までの暦年受注額の累計は、前年同期⽐+ 4.7 %と伸⻑した。これは「内燃機関向けのまとまった受注とデータセンタ向けの投資が続いたことによるもの」とした。更に「関税措置が経済の不安定化、不確実性を招いているが、政府より製造業に向けた減税などインセンティブが公表され、年後半の回復に期待している。」とコメントしている。

★次回、2025 年7月次の受注額の報告は、速報が 2025 年8月 13 日(水)15 時、確報値は 2025 年8月 21 日(木)15 時に発表。