最新の業界情報
日工会 新会長に芝浦機械の坂元繁友社長が就任
(一社)日本工作機械工業会は5月 30 日に第 16 回定時総会を開催し役員の改選が行われた。任期満了で退任する稲葉善治会長の後任に芝浦機械株式会社の代表取締役社長・坂元繁友氏を新会長に選任した。午後4時からの懇親会の前に開催された記者会見には、新旧会長に加えて4人の副会長も参加して記者会見が行われた。記者会見では稲葉善治・前会長が退任の挨拶を兼ね坂元新会長の露払いとして“場の空気”を和ませた。
稲葉善治・相談役の挨拶
さきほど無事、坂元新会長にバトンを渡しました。ふり返ると副会長をお引き受けしたのが 2005 年、会長として2期4年と、あっという間の 20 年間でした。その間、何とか任務をやり通せたのはひとえに副会長、理事始め関係者の皆様、日工会職員の皆さんの熱いご支援の賜物だと、この場をお借りして御礼申し上げます。
私の会長としての2期4年ですが、その間、DX、GXによる技術革新や需要構造の進化、通商環境の複雑化など産業界をとりまく環境は刻々と変動している。このような時期、4年間ですがよくもこれだけのいろいろなことが起きたなと、振り返ると思う。まず米中覇権争い、それから突然起こった新型コロナによるパンデミック、そしてロシアによるウクライナ侵攻、そして最後のとどめを刺したのが、あまりこんな言葉を使っちゃいかんな最後にまさかのトランプ大統領の二期目の政権と過激な関税政策が発出されてきた。世界中が不透明、不安定な時期に突入した。
そういう中で、日工会としては着実に、やるべきことをやる、と。まずは足元を固めるためにデジタル・グリーン・レジリエンスと、課題に対して粛々と進めてきた。おかげさまでこの項目に対してかなりの実績を上げることができたと思います。
また 2021 年には、当会の設立 70 周年の大きな節目を迎え記念式典を開催した。2020 年には戦略レポートである『工作機械産業ビジョン2030』、それから 70 周年記念誌『工作機械産業、未来への継承』も発刊することができた。またJIMTOF2024ではアカデミックエリアを設け学生や一般の方々に工作機械産業の魅力を大いに知っていただく試みも成功裏に収めることができた。
各副会長、各委員会を始め多くの会員の方々関係者のご尽力で、これらの事業が滞りなく推進された。大変ありがたいことと思っている。
そして坂元新会長にご無理をお願いするが、いま申し上げたように現時点で大変厳しい経済環境だが企業経営でのご経験を活用され、また業界を熟知されている。しっかりと日工会をけん引されていくと確信している。坂元新会長をご支援いただくよう、また当会に対して倍旧のご支援をいただくようによろしくお願いします。
稲葉前会長は相談役として役員の一翼を担うが、この後の「定時総会 懇親パーティー」では乾杯の音頭を取ったが、そこでは重責を果たし終えた安心感も手伝って、お人柄がにじみ出たスピーチとなった。ちなみに日工会の懇親パーティーは、ここ何年も会長の挨拶の後に来賓(主に経産省の製造産業局長)の挨拶が終わると懇談の時間になり乾杯の発声は行われていない。しかし今年は、相談役の最初の仕事として、稲葉相談役が登壇した。記者会見の時よりもさらに砕けたコメントで会場を沸かせた。
坂元繁友新会長の挨拶
このたび稲葉前会長からバトンを引き継ぎました芝浦機械の坂元です。いま前会長も申していたように大変変化の激しい、不透明・不確実・不安定の時代に会長職を拝命して身の引き締まる思いです。伝統ある会長職の重さを実感すると共に大きな使命感を感じている。
新しい人事を紹介したい。まず副会長の人事については、ヤマザキマザック株式会社・山﨑智久会長、オークマ株式会社・家城淳社長、株式会社岡本工作機械製作所・石井常路社長、ファナック株式会社・山口賢治社長の4名に、専務理事には柚原一夫氏、常務理事には長濱裕二氏に就任していただいた。さらに4年間、工業会を力強くリードして下さった稲葉善治前会長には当会相談役に就任していただいた。次に委員会構成については当会事業の円滑な継続と発展を図るために、従前の8委員会体制とした。
現状認識として、工作機械業界を巡る状況では米国の関税政策の動向や世界各地域における地政学的なリスクがあり、当工業会は難しいかじ取りを迫られる局面にあると実感している。このような環境にあって、製造業ではDX、GXを軸とする変化と進化のスピードを速めており、少子高齢化時代に適応した周辺機器類と融合した自動化技術も進展している。
日本の工作機械は、こうした時代の変化に柔軟に対応して、世界の製造業の発展に貢献していかねばならないと考えている。日工会としては各委員会の前年度活動結果をもとに作成した事業計画に沿って 2025 年度も、4月から事業を間断なく進めている。前期から取り組んでいるデジタル・グリーン・レジリエンスを中心とした調査・研究事業のほかに国際交流の推進、広報活動など幅広い事業につきましてコンプライアンスを重視しながら展開したいと考えている。」
ここで8つの委員会と委員長を紹介する。
1.総合企画委員会 委員長:石井常路(岡本工作機械製作所)
2.技術委員会 委員長:家城淳(オ-クマ)
3.経営委員会 委員長:五十棲丈二(FUJI)
4.市場調査委員会 委員長:武藤公明(浜井産業)
5.国際委員会 委員長:松浦勝俊(松浦機械)
6.環境委員会 委員長:宮崎正太郎(牧野フライス製作所)
7.見本市委員会 委員長:菅田雅夫(ホーコス)
8.輸出管理委員会 委員長:荒井義博(ジェイテクト)
記者会見は懇親パーティーが始まる 25 分前に開催され「質問があるか」と促されても質問は一人だけ。新会長と前会長に向けて問われたが、坂元新会長への期待を問われた稲葉相談役は「お人柄は皆さんもご存じだが、何しろ自社のコマーシャルに俳優の阿部寛を採用する頭の柔らかさがある」と評して会場を沸かせた。
この記者会見で思い出に残るのは 2011 年に会長に就任した横山元彦会長だ。記者会見の席で記者から工業会運営のビジョンを問われると「30 分前に会長になったばかりでそんなの判んないよ」とすらりとかわし笑いを誘った。このときは各副会長にも発言が求められ、牧野二郎・副会長が立ち上がり「東京にいる副会長の大事な仕事は日工会野球大会の始球式でボールを投げることです」とひょうひょうと語り会見場は大笑いとなった。懇親パーティー会場で真意を伺うと「事務局が堅苦しい進行をするから空気を変えたかった」とサラリと語った。
どちらかと言うと堅苦しい運営をする工業会事務局だが、この日稲葉相談役に乾杯を依頼して登壇の機会を設けたことは良い演出だったと思う。