ことラボ・レポート
FA財団 2025年論文賞表彰式を開催

挨拶をする松野理事長
工場の生産技術向上を目指す製品(制御技術やロボットなど)を開発支援する財団である「一般財団法人 FA財団」の論文賞表彰式が 12 月5日都内霞が関の霞友会館で開催された。
同財団は、FA(ファクトリー・オートメーション)および産業用ロボット技術に関する研究業績の表彰等を行うことにより、工作機械および産業機械に関する自動化技術の向上を図り、それにより産業および経済の健全な発展に寄与することを目的として、平成元年(1989)3月に設立された。
歴史的に見ると、「財団法人 高度自動化技術振興財団」の名称でスタートしたが、平成 11 年(1999)11 月「財団法人 ファナックFAロボット財団」、平成 24 年(2012)4月「財団法人 FA財団」に改称され、平成 26 年(2014)4月に「一般財団法人」に移行した。同財団は名称変更を何度かしている。しかし最初の“高度自動化技術振興財団”時代に、ファナックが支援しているのだから“ファナック”の名前を明示するべきではないか。との意見が出て名称変更した。その背景には『金を出しているからそれでいいだろう』という企業姿勢ではいけない、という21世紀に相応しい財団に成長して行った。
現在のFA財団の“目的”はー―
「FA」および「産業用ロボット」、ならびに「これらに関する技術」に関する研究開発の奨励およびその進展、人材の育成を促進することを目的とします。
と明記されている」
その対象者は「その内容が独創性に優れ、かつ工業的価値が高いと認められる論文の著者で、大学、公的研究機関、および企業の研究者または技術者」(学会およびその他の表彰制度により既に表彰を受けた論文も対象となる)。
その審査は、①精密工学会、②日本機械学会、③日本ロボット学会、④計測自動制御学会、⑤電気学会、および平成27年度から追加された⑥砥粒加工学会、⑦プラスチック成形加工学会に、「FA」および「産業用ロボット」、ならびに「これらに関する技術」に関する優れた論文の推薦を依頼し、各学会より推薦された論文を本財団の審査委員会で審査し、選定する(従って、表彰候補論文は、これらの学会の論文集に掲載された論文となり、公募はしない)。
式典は松野理事長の挨拶に続いて経済産業省の伊吹文明製造産業局長の祝辞に続いて同財団の支援母体であるファナック株式会社の山口賢治取締役社長兼CEOが祝辞を述べた。
今回の論文賞には 18 件の応募があり、以下の8件に論文賞(副賞 100 万円)が贈られた。
また、初めて1件を審査委員会奨励賞(賞状のみ)が贈られた。
論文賞

審査委員会奨励賞


FA業界の公益財団法人
FA業界には、このFA財団を始めとしていくつかの財団法人がある。財団には、一般財団法人と公益財団法人がある。「一般財団法人」とは、一定の財産(最低 300 万円)を拠出し、その財産を維持・運用して事業を行う非営利法人で、事業内容に制限がなく、登記のみで設立可能~「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づく。人の集まりである「一般社団法人」と違い「財産」に法人格が与えられ、公益事業、共益事業、収益事業など何でもでき、得た利益は構成員に分配せず事業に再投資する。純資産が2期連続で 300 万円を下回ると解散となる注意点がある。
公益財団法人とは、一定の財産を基盤とし、内閣府や都道府県から「公益性」の認定を受けた民間の非営利法人で、教育・医療・文化・福祉・環境保護など、「社会全体の利益に資する公益目的事業を行う法人」をいう。一般財団法人として設立後、厳しい審査を経て公益認定されることで、「公益財団法人」の名称が使え、税制優遇などのメリットを受けられる反面、行政庁の監督下で事業報告義務が発生する。
各財団のホームページをみても似たような目的が多い。エンジニアリングの世界で見れば違いはあるのだろうが、重箱の隅を除いているような気になる。一方、近年の日本のノーベル賞受賞達が口をそろえて言うのが「最近の研究体制は資金不足だ」ということ。選考基準を明確にする必要があるが、各財団が合同して、より大きな研究支援をできないのだろうか。アディティブマニュファクチャリング(AM)や生成AIなどのような財団の設立された時代には影も形もなかった技術や固定された守備範囲を超えるような技術が登場してきた。ノーベル賞とは言わなくとも研究資金の不足を論文審査ではなく、加工技術の基礎研究のようなものにも研究支援ができるようにならないだろうか。
以下には財団名の略称:正式名称(設立年)の順で記載している。さらに財団の定款などから「目的」を抜き出している。通称の 50 音順で掲載している。
アマダ財団:公益財団天田財団(1987 年)
金属等の塑性を利用した加工およびエネルギー下での諸特性を利用した加工に関する研究に係る助成を通じて、金属等の加工に関する学術の振興を目指す。
FA財団:一般財団法人FA財団
当初は「財団法人 高度自動化技術振興財団」の名称でしたが、平成 11 年(1999)11 月「財団法人 ファナックFAロボット財団」、平成 24 年(2012)4月「財団法人 FA財団」に改称され、平成 26 年(2014)4月に「一般財団法人」に移行した。設立時にファナック株式会社より寄贈された基金(5億円)の利息等が、本財団の運用財産。
OSG㈱:公益財団法人大澤科学技術振興財団(1991 年)
「(目的) 第3条 この法人は、科学技術に関する独創的な研究開発、国際的な交流等に対する助成 を行うことにより、科学技術の振興を図り、もって社会経済の発展に寄与することを目的とする」
牧野財団:公益財団法人工作機械技術振興財団(1979 年)
「当財団は、工作機械の開発、生産、利用に関する基礎的、応用的な技術の開発に係る助成を通じて、工作機械の品質・性能の向上、生産および利用の改善や合理化にたずさわる研究者・技術者の養成に寄与することにより、機械産業の健全な発展に資し、もって国民経済の発展に寄与することを目的としています」
定款の附則によると「現金」と「投資有価証券」が基金になっている。
㈱ミツトヨ:公益財団法人三豊科学技術振興協会(2000 年)
「(公益目的事業)
第4条 この法人は、前条の公益目的を達成するため、次の事業を行う。
(1) 高度な加工・計測・制御に関する研究開発に対する助成
(2) 高度な加工・計測・制御に関する国際交流に対する助成
(3) 高度な加工・計測・制御等の科学技術に関する普及啓発
(4) その他公益目的を達成するために必要な事業
2 前項の事業については、日本全国において行うものとする」
ヤマザキマザック:公益財団法人マザック財団(1981 年)
「機械の生産において工作機械を中心とした高度生産システムに係わる研究開発、利用等に関する援助および助成を行うとともに、国際的技術交流を通じて、機械の生産技術の高度化を図り、わが国及び世界の機械産業の発展に寄与することを目的とする」
各財団を結集してもノーベル賞には適わないだろうが、固定化された研究対象、守備範囲を超える新技術の登場、細分化して行く研究対象、マンネリ化しつつある表彰対象など、今のままの財団の支援方式を見直すタイミングなのかもしれない。