ことラボ・レポート
DMG MORI セーリングチーム ヴァンデ・グローブ2024に参戦
DMG森精機(森雅彦社長)は、10 月3日に都内のホテルで、4年に1度開催される単独無寄港で地球一周を目指すヨットレース『ヴァンデ・グローブ』に参加する白石康次郎氏の壮行会を開催した。
『ヴァンデ・グローブ:VENDEE GLOBE』は「単独無寄港無補給世界一周ヨットレース」と呼びならわされている、マリンスポーツの最高峰とされる。海に囲まれた日本だが、江戸時代の鎖国制度のためか、欧州が経験した「大航海時代」を未体験で“海”は遠い存在だった。明治維新後に“医療行為としての海水浴”を“お雇い医者”が提唱するまでは、日本海の海運を支えた北前船に従事する者以外の多くの日本人には日常の関心の外にあった。
今年のパリ五輪では混合 470 級で日本選手が銀メダルを獲得するなど、20 年ぶりのメダル獲得に国内は盛り上がったが、ヴァンデ・グローブはスケールが違う。
フランス西部のビスケー湾に面したレサーブルドロンヌ(les Sables- d’Olonne)の港をスタートして大西洋を南極に向けて南下。赤道を超えて南半球に入る。南極大陸をグルリと時計周りに一周すると今度は南米大陸の東側を北上して、 再び赤道を超えて北半球に入る。大西洋を大きく時計回りに回って出発点のレサーブルドロンヌに戻る、全行程 45,000 km(24,300 nm:ノーティカル・マイル・海里)に渡る距離を単独で無寄港・無補給で順位を争うという過酷なもの(写真の中の赤い線が航路)。約 100 日間に渡って行われる。1989 年に始まり3年後に2回目が開かれた後は4年ごとに開催されて 2024 年が第 10 回になる。観客総数は 225 万人に上る。今回の出場選手は 40 名、そのうち女性選手は6名、ハンディキャップを持つ2名の選手がいる。前回の完走率は 57 %すなわちゴールできるのは約半数という厳しいレースだ。
壮行会は大海原を滑走する競技に参加する『グローバルワン』号の映像を軽快な音楽で盛り上げる演出で始まった。


開会にあたり主催者でありセーリングチームのオーナーである森雅彦社長が『白石さんが歳をとった以外はすべて順調だ。白石さんを気持ちよく送り出す壮行会にしたい』とウィットに富んだ挨拶をした。
続いてレースに参戦する白石康次郎選手が挨拶にたった。氏は三崎高校在学中にBOCオーシャンレース クラスⅡに優勝した多田雄幸氏を訪ねて上京し、東京駅地下改札横の公衆電話で、電話帳で調べた多田氏のご自宅に電話をかけ多田氏に弟子入りした。修行を積み 1991 年にシドニー・伊豆松崎間太平洋単独縦断を達成するなどキャリアを積んできた。苦しいときには皆さんの笑顔が目に浮かぶ、と白石スキッパーの挨拶は続いた。
前回は“夢の新艇”で“夢のゴール”を実現したので思い残すことはない、と思ったのだが森オーナーに報告に行くと「次は8位を目指そう」と言われました。それまでの私は「人知を尽くして天命を待つ」ことを信条にしていたのですが今は「天命を知って人知を尽くそう」という心境です。いまでも船酔いはするし英語はうまく話せないけど頑張りますので、無事を祈っていてください。
胸を打たれる挨拶だった。

続いて鏡開きに移った。壇上に上がったのはスポンサーを中心にした皆さん。
テイケン株式会社/株式会社ゴールドウイン/三井純友ファイナンス&リース株式会社/八海醸造株式会社/SUZUKI France S.A,S/KDDI株式会社/株式会社光電製作所/レザーマンツールジャパン株式会社/株式会社美十
白石氏は会場内を隈なく回り、参加者と談笑していた。「南半球の海は北半球の海と違いますか?」「南半球に入ると波が高くなり、荒れた天気が続く」と、経験者ならでの感想を聞いた。
また出場する 40 艇のスポンサーで、DMG MORIのような製造業界の企業は何社くらいあるのか聞くと「全くない。欧州の食品大手や流通大手など消費者に向いている。VENDEE GLOBEに参加することのインパクトは欧米では、日本と比較にならないくらいに大きい。社員もデスクにロゴを張ったりして応援してくれている」と森社長。企業が社会の構成員として様々な活動を展開している欧米の産業社会のように、日本の産業社会の成長も期待している。
