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キャプテンインダストリーズ 渡辺 敏/【連載#3】「アメリカ市場開拓奮闘記」

2021 年 09 月 28 日

株式会社キャプテンインダストリーズ
取締役相談役
渡辺 敏 (わたなべ はやし)

1932 年 10 月1日生 東京都出身
1960 年 日立精機 入社
1966 年 ギブン インターナショナル入社
1974 年 キャプテンインダストリーズ 創業 代表取締役就任
2021 年 同社取締役相談役就任
1974 年の創業以来、工作機械商品や周辺装置部品などにおいて、世界の一流商品を輸入する工作機械のパイオニア商社。
米国、ヨーロッパ等 世界6カ国で名の知れた工作機械商品・部品メーカーと取引きがあり、国内では抜群の信頼関係を持ち、数千社の取引先がある。


《第 3 回》 アメリカ市場に向けた準備

歩み

 ニューヨークで私が最も驚いたのは、最先端のビジネスの本場で、エリート商社マンたちが、日本でやっているのと同じワーキングスタルで仕事をしていたことである。
 あえて彼らのために弁じるなら、アメリカの革靴は安く入手できても、小さな足の日本人にはフィットしなかったかもしれない。従って、高価な日本の靴を大事に履いていたのかもしれない。私は、少々サイズの大きな安いアメリカの革靴を数足持って喜んでいた。
 靴以上に私が驚き違和感を覚えたのは、摩天楼の高層に位置する事務所で、果たして工作機械のビジネスを遂行できるのかなということであった。「手を油で汚す」のが機械のビジネスの初歩と教えられた私には、摩天楼のオフィスで「手を油で汚す」ことが可能なのかということであった。工作機械のビジネスは地上で、油まみれでやるものである。

 J 氏の場合と同じく、私はこのことを本社に報告した。そして前回同様、役員会では揉めたのだが、最終的に私の意見は採用され、「全面的に私にアメリカ市場開拓の戦略を任せよう」という結論になり、私は勇躍ロスで事務所開設の準備をスタートさせた。

 アメリカ市場開拓を成功させ、私がその任務を遂行・成功させるための条件として、私はその前提条件として以下のことを本社に提案した。

  1. 即納体制を確保するため、現地に在庫を保有する。
  2. 市場価格の決定権を私に与える。
  3. 修理・メンテナンス対応のために、十分な部品の在庫を現地に保有する。
  4. サービスマンを駐在させる。

 以上の提案は、本社の全面的な承認とバックアップを得て、私は倉庫兼事務所の開設準備を開始した。その詳細な説明はここでは省略するが、1962 年1月 日立精機ロサンゼルス倉庫兼事務所は開設にこぎつけることができた。それは展示場も兼ねていた。日本の工作機械メーカーとして、アメリカにおける拠点第一号である。その建物は今も、ロサンゼルスのPico Blvd に現存している。

 1.の遂行にあたって、本社は委託販売での出荷を当時の通産省に申請し、認可された。
タレット旋盤とフライス盤併せて、数十台の工作機械を現地に保有したのである。このロジスティクスのバックアップのもと、私は市場開拓の実行動を開始した。


株式会社キャプテンインダストリーズ 会社情報
【沿革】
キャプテンインダストリーズの沿革
1974 年 資本金 50 万円、従業員4名で設立 摺動面ベアリング「ターカイトB」の輸入開始
1979 年 厚木営業所・名古屋営業所を開設
1980 年 油・空圧機器用等シールの輸入、販売開始
1982 年 工作機械などの電線、油空圧管等の保護管「キャップフレックス」の製造販売開始
1985 年 キャプテンインダストリーズ台湾支店を設立
1992 年 江戸川区に本社を移転
2002 年 「ローロンスライド」組立開始
2004 年 台湾支店を現地法人 克普典科技股份有限公司に改組
2006 年 本社社屋完成
2012年 堺工場開設 FPMS Fischer Preciseメンテナンスサービスを開始

World-wide Products with Global Support の標語のもと、海外の優れた商品を発掘し日本に輸入するばかりでなく、日本市場に向けた仕上げ・調整さらにメンテナンスも行う輸入商社。また東アジア市場への進出を検討する欧米メーカーの重要なパートナー役を果たしている。

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