岩波徹の視点
JIMTO2024開幕を直前に控えて
11 月5日に工作機械業界最大の展示会《JIMTOF2024》が始まる。会場の東京ビッグサイトは課題であった南展示棟の誘客策に苦心の跡がうかがえる。広い展示場を「WEST & SOUTH」と「EAST」の2つに分けて開会時間に差を設けた。前者は9時開館で後者は 10 時開館。しかし、閉館時間については明確な表現が見当たらない。普通に考えれば9時から始まれば5時終了で 10 時開館なら6時は閉館だと思うが、はっきりしない。
下の表は9月に米国シカゴで開催されたIMTSに関する日工会の報告者にあった世界の主要な工作機械展の開催データだ。東京ビッグサイトの展示面積は韓国のKINTEX(韓国国際展示場)をわずかに上回るくらいで、ドイツ・ハノーファーの展示場の約5分の1だ。南展示場を増設したのは、海外の国際展示場に比べて見劣りする、との心理が働いたからだが、会場の設計思想が後追いで、使いにくい会場になってしまった。できるなら「南展示棟」の横にある「有明西ふとう公園」の横に水上バスの発着場を作り、羽田空港から「水上高速バス」を運用したらどうだろうか。素人ながらそう考える。

今回の会場のレイアウトを見ると、まだ少し展示場が開いている、「申し込みたいがキャンセル待ちといわれた」という待機組は、今回はいないようだ。これからは規模の追求はやめて“中身”を追求して欲しい。
昔の話になるが、工業会の長老に「JIMTOF、IMTS、EMO」には、どのような取り組みで臨むのか」と質問した。「IMTSは会場に現金を持ってくるような来場者がいるので“即売会”的に取り組む。EMOは技術のコンペで最新技術をアピールする。判らないのがJIMTOFで、中途半端な取り組みになっている」と言われたことが記憶にある。そして出展企業が、持てる全てを展示しているわけでもないことも伺った。なんと持てる技術の2割も展示していないという。
1996 年、98 年、2000 年と3回だけだが、ホンダエンジニアリング(EG)がJIMTOFに参加した。当時のホンダは業績不振で、工作機械や金型などを内製する社内の工機部門であるEGは自社で考案した工作機械を、自力でグループ外に販売しようと参加した。EGのブースにはライバルとなる工作機械メーカが大挙して押し寄せ、小間内は人で溢れていた。しかし 2001 年に入るとEGから連絡が入り「JIMTOFにはもう出ない。日工会からも脱会する」と連絡があり、推進責任者の話を聞いた。「JIMTOFは誰のためにやっているのか?」と最初に言われ返答に窮した。「機能満載の機械ばかりで、うちで購入しても多分、1回も使わない。EGがJIMTOFに出たのは、クルマを作るには、このような機能の工作機械が必要だと思う、とEGが考え作ったマシンを展示した。たくさんの方々に見ていただいたが、専門の工作機械メーカさんはその後も変わらない。これ以上、手の内を見せるのを止めよう、と今回の結論になった」と。
私たちが使うスマホもパソコンも、機能満載でそのほとんどは使いこなせない。個人が私的に使うものならそれでも良いがJIMTOFに来る人は、生産設備として購入を検討している。設備を選択するには、いま必要な機能は何かをしっかり見極めて、会場を回りましょう。
また出展者は「販売」「技術PR」「存在アピール」「リクルート」なにが目的なのか、方針を決めること。販売促進活動の中でも展示会出展は、メディアに広告を出稿することに比べて、はるかに負担が大きい。「ヒト・モノ・カネ」を投入したのに得るものが少ない、となれば徒労感は大きい。展示会を取材して感じるのは「JIMTOFといっても展示会のひとつ」という“冷めた視線”だ。工作機械メーカが大きくなり「社員の中にも“JIMTOF”って何?という者がいる」と、宣伝部長が嘆いている会社も出てきた。
資料で確認を取れなかったが、以前のJIMTOFの開催期間は長かったという。昔の工作機械の動きは歯車とカムの組み合わせで実現していたので、会場ではカバーを外してメーカとユーザが侃々諤々と議論を重ねていたらしい。会期が長かったのは、一人のユーザとの接触時間が長くならざるを得なかったから。それをNCで制御するようになった、つまり動きがサーボ駆動になるとプログラムがポイントとなり、小間内で熱い議論は聞かれなくなった。だからと言って、会場を販売目的にして欲しくはない。来場目的は人によりバラバラで、数は少ないが「最先端の技術情報」を求める人がいる。出展者側の“最先端”ではなく、自動車・航空機業界の最先端だ。会社の仕事も大事だが、折角の機会だから技術部門からも人を出してほしい。工作機械を使う人の意見を聞く貴重な機会と思うからだ。
今回展では、南展示棟のAM(アディティブ・マニュファクチャリング)に関する企画が充実している。主要関連行事一覧表にも毎日のようにプログラムが用意されている。切削加工でも成形加工でもない新しい取り組みを集中的に勉強できる絶好の機会になっている。関連セミナーの聴講生となって、展示場よりもセミナー会場にいることになるだろう。
また制御軸数が増えてきた最近の傾向からも「5軸加工機」や「複合加工機」は見ておくべき。逆に機能を絞り込んだ機種にも注目している。また会場では「切削工具とその素材」にも注目している。
さらに普段では注意を払われることの少ない、周辺機器も忘れずに。いまは“お休み”状態だが「ことラボSTI」は、生産設備の“ハードウェア”とそれを動かす“ソフトウェア”のほかにも、製造現場には消耗材や汚れ拭きやミストや切りくず処理装置などの“サードウェア”も重要だと考えていて、それにも注目している。忙しい6日間になりそうだ。