岩波徹の視点
JIMTOFに思う
11月8日からJIMTOF(日本国際工作機械見本市)が東京ビッグサイトで開催される。2年に一度開催される日本の工作機械業界最大の展示会だ。しかし2年前には新型コロナ感染対策としてリモート開催となり、実際に工作機械などの出展製品が並ぶのは4年ぶりとなる。1962年に始まり今年は60年目の還暦を迎えるが、リモート方式を採用したのは前回が初めてだ。このようなことが繰り返されないことを願う。
Windows95が出たときに、展示会をリモートでやれるか議論した。画像があり音が聞こえれば、工作機械の販売に支障はない、と考える人がいたからだ。しかし工作機械は「家1軒分」と言われる価格で、その購入をリモートで得た情報だけで決断できるか疑問だった。そのときある社長から「実際に機械を見ないで買う人はいない」と言われた。それは加工中に発生する振動や音、発熱など画像では判らない要素が大事だからで、さらには低周波振動や臭い、全体の雰囲気までの総合的な判断が必要だからという。かれこれ四半世紀も前のことで、センシング技術などが発展した現代では判断は変わるかも知れないが…。
消費財と異なり一般の人の目に触れることが少ない「工作機械」を巡っては、いろいろなことが言われてきた。消費財のように多くの人に知られることが大事だ、と考える人は少なく「知る人ぞ知る」世界で構わない、という“開き直り”のような姿勢もあった。それにも拘らず「こうさく」という響きから農業の「耕作」と誤解されるから、別の言葉を考えようと真面目に議論する人もいた。「国際見本市」と名乗るほど海外メーカーは参加していないし欧米系企業の参加数も来場者も少ない。ひいてはEMOショー(欧州)やIMTS(米国)に比べて規模が小さ過ぎる、などとネガティブな評価が多かった。
だが日本の工作機械生産額は1982年に米国を抜いて世界一となり2009年に中国に抜かれるまで27年間にわたり世界一の座を維持していた。そこからJIMTOFがEMOやIMTSと並んで「世界3大工作機械展」だ、という表現はだんだん使われなくなったと思う。開催規模など初めから競っても無駄だからだ。しかも日本の工業製品は品質、価格、寿命などで世界水準を上回る実力を発揮して、日本は世界の産業社会の一翼を担う立場になった。
この頃からJIMTOFに変化が生じた。「出展者を集めて並べているだけ」(日工会若手スタッフ)との反省から、2004年の第22回JIMTOFから主催者による本格的な企画展示が始まった。さらに2008年からは“統一テーマ”が設定され、その姿勢は、工作機械への理解を深めた。次世代を担う学生を対象にした「工作機械トップセミナー」は工作機械業界が力を合わせて開催する未来への投資だ。2018年にはIoTプラットフォームを活用し会場内の72社、292台の展示機と企画ブースをつなぎ会場を一つの巨大な工場と見立てる取り組みも披露した。高く飛ぶために身を縮めるように、今年のJIMTOFは、4年分のエネルギーも含めて大きな飛躍ができる展示会にして欲しい。