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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・コンテンツ

岩波徹の視点

IT時代からCT時代へ

2022 年 10 月 07 日

 私が「ことづくりラボSTI」を起業したのは時代の変化をフォローしたいと思ったからです。中でも生産現場の情報武装が強化されていますが、「機械」と「情報」はあまり“仲が良い”とは思えないのです。親和性の低い者同士を力づくでくっつけたような印象です。
 私が情報処理企業から工作機械をメインフィールドにした出版社に転職したのが1980年代半ばだった。情報処理会社では、その頃登場した低価格のオフィスコンピュータ(オフコン)を使い、大企業はもとより多くの中小企業が、それまでの手書きの帳簿をオフコンに替え、プリンターが打ち出すLP用紙(プリント用紙)で確認すると帳簿のデータはメモリの中に半永久的に格納していくようになった。そこで私は某信託銀行の証券代行部の株主名簿書き換え業務を経験した。それまでひと月近くかかっていた決算期の名義書き換え作業を、新システムを使い一週間で処理するという離れ業も体験した。その数は140万件! コンピュータの破壊的な威力を体験した。
 転職した出版社は工作機械産業を主な取材先にしていたので初めは全く違う世界だと思っていた。しかし機械産業がコンピュータと融合し始めた絶好のタイミングでの転職だった。機械と電機を合わせた「メカトロニクス」という言葉が市民権を獲得しつつある時期だった。「ことラボSTI」のスタートに当たり小関智弘先生にご執筆いただいた『機械にニンベン(人偏)をつけて働くんだよ』は、工作機械にNC装置が付けられ始めた時代を紹介していただいた。ときは1970年代のこと。
 その後、コンピュータは経理事務だけではなく工場などの生産現場にも進出して工場の生産性は飛躍的に高まった。重要な情報を大量にストックして必要に応じて使う「データベース」が作られるようになり、さらに通信技術が進歩して重要なデータを、ネットワークを使って皆で利用する時代になった。それを世界中のどこでも使える「インターネット時代」が到来すると、「IT(Information Technology)時代」の到来だ。しかし現在進行形の世界を見ると社会は既にIT時代の先に進んでいることに気がつく。
 「情報」の流れは一方通行だ。発信元から受け手へ飛んでいくのが情報だ。しかし現在進行中の技術では、ビッグデータやAIの利用などで「機械」側からも情報が飛んでくる。つまり双方向の情報交換すなわち「Communicationの時代」になっている。そこでは「意思の疎通」が基礎となる。データベースの中から必要な情報を利用するなら「人」の主体性はあるから「責任」の所在も明らかだ。これからは「ディープラーニング」や「機械学習」などとのCommunicationで行動すると「責任」に対する考え方も新しくなる。自動運転もしかり。人の手先感覚で育て上げる機械工学の世界と異なりコンピュータの世界は、そのアルゴリズムを作った人しか理解できない。Communicationの技術(CT)の確立が急がれる。