ことラボ・レポート
天田財団 2025年度助成式典を開催
公益財団法人天田財団(磯部任理事長)は 11 月 29 日、2025 年度の助成式典を神奈川県伊勢原市の『AMADA HALL』で開催した。式典では主催者を代表して天田財団の磯部任代表理事が挨拶、続いて株式会社アマダの山梨貴昭代表取締役社長執行役員と文部科学省 科学技術・学術政策局の井上睦子 科学技術・学術総括官(ビデオメッセージ)が来賓祝辞を述べた。
また天田財団評議員の光石衛・東京大学名誉教授が今年度の総評をのべ助成金目録贈呈式を行い 94 名が登壇した。
その後招待講演会が行われたあと、会場を移動して交流会が開催された。

上掲のイラストは式典会場の背景に映し出された天田財団のビジョンをまとめたものだ。
会場で配布された「2025 年度 財団のご案内」にある“未来創造のビジョン”をこの助成式典のためにバージョンアップしたものと思われる。色と配置が異なり「未来」→「創る」、「人」→「育む」、「知」→「拓く」に変わり、矢印の向きが右回りから左回りになったのは何故だろうか気になる。天田財団は規模の大きな財団なので、こうしたアイキャッチ的なものにも隙のないものに仕上げて欲しい。
磯部理事長の挨拶
本日受賞される皆様にお祝い申し上げます。皆様の研究成果が社会に還元され皆さまが活躍されることを大いに期待します。アマダグループは長年にわたり創造と挑戦を続け、金属加工分野において進化を続けてきた。来年は創業 80 周年を迎える運びとなっている。天田財団はその精神を受け、1987 年に設立され本年で 38 年を迎えた。これまでに 2,473 件、総額 45 億 7,578 万円の助成を行ってきた。今年度は 114 件、総額2億 8,322 万円の助成を行う。ここに至るまでご支援をいただいた皆様のご協力に深く感謝する。

現在、日本の研究環境は大きな転換期を迎えている。技術は急速に進展し、国際競争は激しくなっているが研究テーマが直面する課題は複合的である。とくに重要だと考える課題を3つ挙げると、一つ目は研究資金。競争的資金特に科研費の獲得が難しくなり、若手が安定して挑戦できる環境が確保しにくくなっている。短期的な成果を求める風潮は、基礎的な探索や遠い将来に実を結ぶ研究を敬遠しかねない。二つ目は研究成果。とくに工学系や応用研究は、論文数や被引用数などの定量指数で評価されない面がある。現場志向の研究は社会実装までに時間と人的資源を要するために短期的指標に反映されにくいという構造的問題がある。三つ目は人材育成。日本は博士号取得後の進路が不安定だ。優秀な人材の流出やシーズの埋没に繋がっているのではないか。研究成果のシーズと現場のニーズの間にミスマッチが起きているのではないか。橋渡し機能の不足が社会実装の障害になっているのではないかと感じている。これらの問題は若手研究者の挑戦意欲を削ぐ原因になっているのではないか。
研究助成財団として、こうした構造的課題を踏まえて支援する必要があると考えている。
天田財団は単に研究資金を供与するだけではなく、次の3点を重視して審議している。第1に安定的な研究環境の提供。若手研究者が中長期的、安定的に研究できるように若手研究者枠を設けている。若手研究者が“試してみる”そして“深める”ことが出来る期間を確保することが重要だと考える。また重点および一般研究開発の助成期間を2年、3年と研究者の計画に柔軟に対応している。第二に実装志向の評価である。研究論文的な指標だけでなく社会実装の可能性、企業ニーズとの整合性、技能継承の観点を評価に組み込んでいる。実装までのプロセス。研究への成果を特に意識している。第三に産学協同の“場”の提供。産業現場と研究者を繋ぐ場、実証の場、技能と知の融合を促進する場、として毎年、助成成果研究発表会を開催している。研究室のシーズを『財団ニュース』として広く産業界に発信している。
また本日の『グローバル・イノベーション・センター』の見学や『板金技能フェア』への投票もその一環として位置付けている。
ここで助成を受けられた皆様に3つのお願いがある。ひとつは長期的な視点をもって研究に取り組んでいただきたい。短期指標だけでなく継続的な研究の課題を設定して深い成果を目指して欲しい。二つ目は、常に現場と対話して欲しい。とくに製造現場のニーズに耳を傾け技術の実装を意識した研究設計をして欲しい。三つ目は後進の育成に努めて欲しい。研究室内の機能や知見の検証を重視し次の世代に繋げて欲しい。
天田財団は皆さんの挑戦を全力で支援していく。ともに人を育て、知を拓き、未来を創りましょう。
来賓祝辞① ㈱アマダ代表取締役社長執行役員 山梨貴昭
天田財団は創立から 38 年の長きにわたり塑性加工とレーザプロセッシング分野の研究助成を行い社会へ大きく貢献してきた.
私たちを取り巻く社会環境は地球規模での環境問題や急速な労働力不足、それを補うように加速するAIやロボットとの共生、デジタル技術による生活、ビジネススピードの加速など、直面する社会課題に対して様々な技術が生み出されている。それらの技術を取り入れながらも、ものづくりの世界においても持続可能な社会の実現に向けた変革が求められている。こうした状況を踏まえアマダグループは、お客様と共に発展するという経営理念のもと、グローバルな視点でものづくりの未来を共創していく。具体的にはここ伊勢原事業所にある『グローバル・イノベーション・センター』とその中のラボで、お客様とアマダの開発が最新の技術や素材・複合素材を用いた新たな加工技術を生み出している。また環境配慮は常に念頭に置き、省エネ・省資源を徹底して製品とサービスを通じてエコなものづくりを可能にしている。技術での社会課題の解決に努めている。
アマダは加工機械を提供するだけでなく、常に生産性向上、加工精度向上を考慮し環境負荷の低減そして高効率を重視した新商品の開発を進めるとともにDXやAIを駆使したサービス体制の強化、あらゆる場面でのものづくりへの支援ビジネスの展開などお客様のサポートする活動にこれまで以上に注力して行く。
しかしこのような展開は一企業では限界がある。そこに本日受賞される皆さんの研究成果が重要になる。皆さんが取り組まれている研究成果が革新的なブレークスルーを生み出し、社会の持続可能性を高めるための技術のシーズになることを期待している。
来賓祝辞②
文部科学省 科学技術・学術政策 科学技術・学術総括官 井上睦子(ビデオメッセージ)
※折角のビデオメッセージの音質が良くないためと声質のため多くが聞き取れなかった。しかし文科省は来年度から『科学技術イノベーション基本計画』を実施すること、その中で若手研究者の評価や海外への研究渡航を推進するという。ただ元都立大学の原島文雄学長は「国が出てくるとダメになる」と言っていた。金を配ることに注力することになるからだ。行政の多くは“文系官僚”が進めていて、科学や技術は素人だ。かつて「NC以来の革命だ」と技官が推薦した新技術があった。技官の推薦で開発資金の助成を申請したが落選した。技官が申請書類をチェックしたが問題はない。ただタイトルが難しすぎた。ひとこと「内容はそのままでタイトルに“超◎◎盤”とつけなさい」とアドバイスを受け、翌年、開発資金の援助がついた。もっと技術の判る役人が必要だ。
招待講演会①
講師 鳥取大学 工学部 機械物理系学科 教授 松野 崇
題目:「中Mn超高張力鋼のLüders変形時における局所応力の計測」(2021 年度重点研究開発助成)
招待講演会②
講師 産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域 製造基盤技術研究部門 主任研究員Serien Daniela(ゼリーン ダニエラ)
題目:「均質な脂質―タンパク質構造のハイスループット生産に向けたフェムト秒レーザプロセス開発」(2021 年度重点研究開発助成)
多くの財団法人がバブル期に設立された。そして論文審査による「研究助成」や「国際会議開催補助」などを行っているが運営を見ていると硬直しているように見える。それは“守備範囲”が決められて柔軟な運営が出来ないからだ。それは昔からで、例えば「レーザ技術」は切断、溶接、計測など用途は多様だ。そこは日工会なのか日鍛工なのか曖昧なまま数十年が経過している。3Dプリンタはどうなのか? 横断的なテーマを研究したくても、財団法人の管轄する総務省は、あいまいなことをすると税金逃れに使われるのではないか、と疑心暗鬼にある。また、こうした悪さに使う事例もあったようだ。羹に懲りて膾を吹いていないか。それにしても今回の招待講演は難解過ぎた。
下に掲げた票は高石内閣が“重点投資 17 分野”だ。こうした国の方向性も、研究開発の指標になるのではないか
