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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・レポート

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《Grinding Technology Japan 2025》開催される

2025 年 04 月 09 日

会場全景

 2025 年3月5日(水)~3月7日(金)の3日間、千葉県幕張メッセで《Grinding Technology Japan 2025》が開催された。本展は、まだ馴染めないが“GTJ”と呼ぶらしい。2019 年にスタートした機械分野では最も新しい展示会のひとつだ。「《JIMTOF》には、人はたくさん来るけど、機械を見ても首をかしげる人も来る。しかしこの展示会には、具体的に加工について悩んでいる方が来るので中身は濃いと思っている」と出品者から聞いた。今回は4回目だが、新型コロナによるパンデミックに襲われるなど、事業環境は決して恵まれていたとは言えないが、主催者の真面目な取り組みがこのような声に繋がっているのだろう。
「ことラボSTI」はいま、展示会での販促活動は効果を上げているか、について考えている。かつて工作機械メーカーのトップから「《JIMTOF》には何のために出展しているか判らない」と言われたときの衝撃が忘れられないからだ。以来この問題を考え続けているが現段階では、流通機構が複雑に介在していることが遠因だと思っている。メーカーとしては機械を実際に使っているユーザーの声を聴きたい。しかし、展示会にはなかなかやってこない。ある工作機械メーカーが、ひと月に渡り各週末にプライベートショー(PS)を開催した。そのPSの主催者を、機械メーカー自身ではなく、大手代理店の卸商社に委任した。山善やユアサやジーネットなどだ。その理由を聞くと「流通機構が複雑で、卸の下に地場商社がいて、その下に地域のブローカがいる。エンドユーザーはブローカにとって“米びつ”で、会場に連れてくると手の内を明かすことになる。だから連れてこない」という。しかしそれは、エンドユーザーが来たくなるような仕掛けが、いまの展示会には不足しているのではないか、というのが今のところの結論だ。《JIMTOF》はいまのところ会期が6日間だから、代理店に振り分けて、エンドユーザーを会場に招待すると決めたらどうだろうか。

《SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)加工技術展2025

 4回目の今回は、《SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)加工技術展2025》を併催した。硬い素材の加工に研削・研磨技術が使われるので必然的な延長戦だと思うが、わざわざ謳うことだろうか、と疑問に思った。《GTJ》の柱を増やすほど展示会としては成長しているように思えない。
 会場の幕張メッセは、シンプルな長方形の展示場を切り分けて使っているが、前回は2ホールを使用していたのに今回は1ホールに留まり、しかも貴重な会場内には展示スペースの一部を出展者用のストックルームに使っている。これは出展者募集のパワー不足、営業の失態だ。
 さらに“グラインディング”という概念が曖昧だ。シンプルに“研削・研磨”と受け止められるが、初めから「研削盤」に力点が置かれ、砥石や砥石を使う工具再研磨業や研削専業者の参加が少なかった。さいわい、最初は様子見だった工具再研磨業からの来場も増えてきたようなので、まだ期待してよいと思っている。
 総論的な話に展開してきたのでさらに続けるが、業界で好評を博している展示会は、好評の理由がある。《JIMTOF》のように業界を挙げて開催されているもの、《MECT》のように自動車産業、工作機械産業、航空機産業が盛んな中部地方をバックグランドに擁しているもの、ロボット展は全国的な広がりがあり非製造業も守備範囲とするので東京を舞台にするのが良いだろう。などなど。
 《GTJ》の出展者からは、来場者からは具体的な案件を持ち込まれること、“冷やかし客”が少ない、など評判は良い。講演会やセミナーも充実しているし、工業会や大学とのコラボ企画もしっかりしている。コンパクトだが、いまひとつインパクトの感じられない展示会、という印象が強い。

チロリット・ジャパン(G=057
 一度耳にしたら忘れられない響きを持つ社名“チロリット”(TYROLIT)だが、オーストリアのチロル地方に本社を置く研削技術をコアコンピタンスとするグローバル企業だ。取材中に「チロリットが出展している」と教えてもらったときに“懐かしい”と思い小間に立ち寄った。小間では資料を回収するだけで終わったが、一度取材に行くと挨拶した(東京都品川区上大作3-14-37 JESCO目黒ビル)。日本の展示会に出展するのは今回が初めてという。帰宅してEMO展の総合カタログを見ると 2009 年のミラノEMOに出展しており、印象深い社名で覚えていたと気がついた。
 会場で配布していた『Corporate Brochure』によれば同社は「研削砥石とともに歩み」世界有数の研削とドレッシングの工具メーカーであり、同時に建設業界向けのシステムプロバイダーでもある、という。さらに別の資料によると『各種エンジン部品研削用砥石』とある。これは展示会場で伺う話ではなく、一度腰を据えて話を伺うべきテーマだ。

スリーエフ技研(G-070
 『世界にひとつ』の研磨材をお届けする、をキャッチフレーズで出展していたのが大阪・門真市の“オリジナル研磨材メーカー”のスリーエフ技研(代表取締役社長・札谷啓介)は、GTJに相応しい出展者だ。カスタマイズした研磨材製作に企業活動の重心を置いている。
 切削工具を使って加工する世界は、かなりデジタル化できた。工具情報、被削材データ、高精度な工作機械の総合力で曖昧さを極力排除してきたが、研削の世界は一筋縄ではいかない。
 そこでは“砥粒”とそれを砥石として固める“締結剤”さらに砥石間に存在する“気泡”というアナログ要素が関わっているのでデジタル化が進まない。2年前の《GTJ2023》では、岡本工作機械製作所の石井常路社長から「研削加工は砥石という自らも崩壊しながら加工する工具で、研削油をかけながらの研削加工をするので、加工状態を目で確認することができない。加工が終わったあとに目で研削面を見て推測するだけだ。しかし科学と技術が進化した現代は、これを視覚化・デジタル化してユーザーに示すことができるのではないか」とのコメントをいただいていた。その回答のひとつになる講演会が昨年3月 26 日に、日本工作機械工業会が主催した「第 56 回 産官学技術懇親会特別講演会」でテーマは「加工空間の熱流体工学的考察に基づく研削加工の高度化」だった。群馬大学を中心とした4人の講師による研究発表だが、判りやすく言うと、研削加工の「見える化」を目指す研究発表だった。しかし「研究途上だ」ということで内容は物足りなかったが、今後の研究で、研削加工の新時代への扉を開くかもしれない。《GTJ》でフォローが無かったのは残念だった。

エスアンドエフ(G-001
 昨年創業 25 周年を迎えたエスアンドエフ(代表取締役社長・白岡佳寿美 大田区)は、GTJには第1回から参加している。今年 70 周年を迎える歴史のある日本工作機械輸入協会の会員だがもともと老舗の工作機械商社が輸入機部門から撤退するときに独立して創業した歴史をもっており、輸入商社としての経験はベテランの域に達している。取り扱う商材は、ユニークな特徴をもち、信頼性が高く、自社で修理、メンテナンスまでできるものを輸入・販売するというポリシーを持っている。いまではスイス、イタリアを中心に 20 社以上を扱っている。
 今回はドイツの総合マグネットメーカーSAV GmbHの各種マグネットチャックを展示した。マグネットチャックは、研削盤用はもとより切削用、放電加工機用とカスタマイズされているだけでなく、用途に応じた特殊なマグネットチャックも製作している。

ブリンクマン・ポンプ・ジャパン
 ブリンクマン・ポンプ・ジャパン(藤沢市 代表取締役・森田源太)は、丈夫な工業製品を創るイメージが強いドイツの企業だ。工業用ポンプと言うのは廃液内に様々な物質が混在して化学特性も複雑でさらに温度も低温から高温まで、柔軟に対応しないといけない。さらに省エネ時代の要請に対応することも必要になった。
 それまでは廃液中に切りくずがゴロゴロ混ざっている場面で、苦もなくブレードを回しているイメージの同社のポンプだったがFKO「クーラントポンプ専用」プログラム付きインバータは、必要な時に効率よく使うことができることをアピールしていた。
 《GTJ》の来場者は、具体的な条件をまとめたメモなどを持参してきて、中身の濃い話ができる、と出展効果を説明してくれた。

牧野フライス精機
 牧野フライス精機(愛甲郡 取締役社長・清水大介)は、駆動方式にリニアモータを搭載した次世代高精密CNC極小径工具研削盤「DB1」、自動ワーク交換装置と砥石・研削液ノズル交換装置を標準搭載し、優れた生産性を実現した全自動機 高精密CNC工具研削盤「AGE30FX」などを出展した。また同社は近年、ソフトウェア部門を強化しており、昨年の《JIMTOF》で発表した第三世代ソフトウェアも紹介した。世界の工具研削盤の潮流は、ソフトウェアの充実にあり、牧野もこの部分への開発は目覚ましいものがある。一時期は欧米のライバル企業の後を追っていた印象だったが、いまでは十分に伍していける、と胸を張っている。

期待をこめて“喝!”

 工作機械分野で最も新しい展示会として応援している。しかし「大いに物足りない」と思う。展示会にはフロックで参加する出展者もいるが、一度参加したら継続的に出展を続けるというのが生産財分野の展示会だ。しかし前回の出展者の中には、今回顔の見えない企業もある。そもそも《GTJ》のコンセプトが判らない。主催者が明確なコンセプトを伝える努力をしていない。展示会の企画書には『工具製造技術と、研削加工技術に特化した展示会』と明記しているが、砥石メーカーの参加が少ない。さらに驚いたことに《JIMTOF》に恒常的に参加している砥石メーカーが会員名簿の中で見当たらない。つまり工業会に加入していない。出展していたニートレックス(G‐066)は会員だが他に見当たらなかった。さらに砥石工業会の会長会社(ニューレジストン)くらいは、意地でも引っ張ってこなければ“グラインディング”を名乗るのは恥ずかしいのではないか? 同社の山内憲司社長は、昨年秋の叙勲では「藍綬褒章」を受けており、いわば“時の人”だ。
 上述したように日工会の講演会で“研削加工の見える化”をとりあげていたことも見過ごしていた。主催者にお勧めするのはA4 1枚で《GTJの世界》を表現することだ。自分たちの考える展示会は、何をテーマにして誰のために企画して、産業界にどのような貢献をするのか。
 会場では「主催者は真面目だと思うが運営会社の動きが悪い」という声も耳にした。展示会事業と言うのは、手を抜こうとすればいくらでも手を抜ける。企画さえ当たれば、出展者が集まってくる。集まらなければ「都合により中止」とネットに掲示すればよい。しかし主催者が、信念をもって業界発展に尽くそうと思えば、いくらでも課題が見えてくるし成果は伸びていく。主催者の“熱”が伝わらないと、工作機械産業に生まれた新たなビジネスチャンスが消滅してしまう。