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キャプテンインダストリーズ 渡辺 敏/【連載#2】「アメリカ市場開拓奮闘記」

2021 年 09 月 13 日

株式会社キャプテンインダストリーズ
取締役相談役
渡辺 敏 (わたなべ はやし)

1932 年 10 月1日生 東京都出身
1960 年 日立精機 入社
1966 年 ギブン インターナショナル入社
1974 年 キャプテンインダストリーズ 創業 代表取締役就任
2021 年 同社取締役相談役就任
1974 年の創業以来、工作機械商品や周辺装置部品などにおいて、世界の一流商品を輸入する工作機械のパイオニア商社。
米国、ヨーロッパ等 世界6カ国で名の知れた工作機械商品・部品メーカーと取引きがあり、国内では抜群の信頼関係を持ち、数千社の取引先がある。


《第 2 回》 アメリカ駐在

 当時、多くの日本企業は世界最大の市場であるアメリカ市場開拓に力を注いでおり、その先陣となる各商社がアメリカの主要都市に支店を展開していた。日立精機もご多聞に漏れずに同様の戦略を展開し、ニューヨークとロサンゼルスの日本商社に委託してアメリカ市場開拓を模索していたが、なかなか実を結ぶことができず、ロスのX社にアメリカ人の代理人の選定を依頼。その結果J氏を代理人に任命し、私はその補佐役としてロス駐在を命じられることとなった。


 実際に職務をスタートするにあたり、最大の問題は私自身がアメリカの機械市場について全く無知であるということだった。
 その時に感じていたことはただ一つ。
 戦勝国である米国の機械工業、特に工作機械には優れたものがあるに違いないということ。よって代理人のJ 氏を頼りに市場開拓することが当面の急務であると判断し、彼と打合せを重ねた。しかしその過程で、私は次第に彼の発言に疑問を感じ始めてしまうのである。
 英語に「take advantage of」という表現がある。これは「相手の弱みにつけこむ」という意味があるのだが、私はJ氏が我々の無知に付け込んで、自分を過大に売りこみ、高い代理人手数料をせしめようとしているのではないかと感じ始めた。


 当時、アメリカ市場に製品を販売したくて、必死にもがいていた日本企業は、その無知であるという弱みにつけ込まれたケースが実際に多かったのではないかと想像される。日立精機とJ氏の関係もこのようなケースではないかと感じていた。私は現地で、補佐役として彼と交渉する中で、初めてその実態を体感することになった。ちょうど広大なアメリカ市場を目の当たりにし、緊張の高まりを感じ始めた時でもあった。

 私はJ氏の件を本社に報告し、契約解除を提案した。当初、役員会ではアメリカ市場にまだ無知同然だった私の判断には否定の声が強かったようだが、私のアメリカ駐在を強く推していた役員が、「我々はまだアメリカのことを知らない。少なくとも渡辺は現地で、現地感覚で報告している。彼の報告を検討しようではないか」という一言があり、最終的に私の報告が採用され、J氏との契約は解除となった。かなり高額の手切れ金を支払ったことを記憶している。

 日立精機は、ニューヨークでは日本商社Y社に市場開拓を委嘱していた。私は、J氏との契約解除後、改めて自分の目でアメリカ市場を視ることを決断し、Y社を訪問するべくニューヨークに向かった。
 ウォール街の高層ビルの一角に支店を構えた同社を恐る恐る訪問した私の目に、最初に飛びこんできた驚くべき光景があった。働いている社員の皆さんがスリッパを履いて仕事をしていたのである。現在、GDP世界第三位の日本で仕事をしている人たちには想像が難しいかもしれない。60 年前までは革靴とは高価な商品で、サラリ-マンは仕事に出かけるのに履いていく革靴は会社に到着するとスリッパに履き替えて、仕事をしていた。端的に言えば、「靴底が減るのを極力最小限に抑えていた」のである。


株式会社キャプテンインダストリーズ 会社情報
【沿革】
キャプテンインダストリーズの沿革
1974 年 資本金 50 万円、従業員4名で設立 摺動面ベアリング「ターカイトB」の輸入開始
1979 年 厚木営業所・名古屋営業所を開設
1980 年 油・空圧機器用等シールの輸入、販売開始
1982 年 工作機械などの電線、油空圧管等の保護管「キャップフレックス」の製造販売開始
1985 年 キャプテンインダストリーズ台湾支店を設立
1992 年 江戸川区に本社を移転
2002 年 「ローロンスライド」組立開始
2004 年 台湾支店を現地法人 克普典科技股份有限公司に改組
2006 年 本社社屋完成
2012年 堺工場開設 FPMS Fischer Preciseメンテナンスサービスを開始

World-wide Products with Global Support の標語のもと、海外の優れた商品を発掘し日本に輸入するばかりでなく、日本市場に向けた仕上げ・調整さらにメンテナンスも行う輸入商社。また東アジア市場への進出を検討する欧米メーカーの重要なパートナー役を果たしている。

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