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ー 科学と技術で産業を考える ー

ことラボ・コンテンツ

岩波徹の視点

展示会再考

2023 年 09 月 13 日

 新型コロナに対する規制が緩やかになり、街中に人が溢れている。「リモート開催」という苦肉の策で展示会を開催してきた各種団体やメディアなどの主催者は、一気に展示会ビジネスを加速させている。かつてはテーマがあり、関係する企業が出展していたが、最近はモワッとしたテーマのもとに、「ウチは該当している」と考えた企業が出展者になっている。中には地方公共団体が産業振興の補助金を餌に、管轄内のメーカーを集めて参加しているケースも多い。その時に使われる便利な言葉に「ものづくり」がある。「ものづくり」と言えば、あらゆるメーカーは何か作っているから、ふるって参加できる。でも、それでは目的をもって来場した客とめぐり合う確率はグンと低くなるだろう。
 販売促進策には、営業部隊の市場周り、メディアやSNSなどを利用した告知や広告活動、自社あるいは数社で開催するプライベートショー、多くの企業が参加する協賛展。各社の判断でその手法が選択されるが、コロナが明けて“おや?”と思ったことがある。
 7月に開催された《MF-Tokyo》で目に付いたのが実機の展示をしていない出展者が多かったことだ。JIMTOFで希望する規模の出展できない出展者の中で、プレス系は日本鍛圧機械工業会という、別の団体があり、欧米では「工作機械」とは別の展示会が開催されている。そこで 10 数年前にスタートした展示会だが、有力企業の中には協賛展にノウハウを明かすわけにはいかないと、鍛圧機械の専門展開催に反対するものもあった。理由は工作機械との違いだ。
 例えば、機械加工でできたある製品の価値を 10 とする。それを分解すると、工作機械で作ったモノなら工作機械=7、切削工具=2、素材=1くらいの寄与率だ。プレスで作るとプレス機=4、金型=4、素材=2くらいに分解される。これは私が言いだしたことだが、工機メーカーのトップからもプレスメーカーのトップからも「そんなもんだろう」とお墨付きを頂いていた。しかしそれから十年くらい経過して、同じことを言うと、プレスメーカーの社長からはプレス機の4は、3あるいは2に下がった、といわれて驚いた。それだけ金型の比重が高くなったという。しかも金型は、ユーザーがノウハウを盛り込んだ極秘扱いだ。
 一方で、IT技術を駆使してコロナ禍を乗り越えてきた産業界は、上記のような従来型の販促活動とは異なる道を見つけたのだろうか? 展示会に参加するときにコストに占める展示機の運送費やオペレータの人件費などが削減されれば経費削減にもなる。「機械」というハードよりも「情報」や「シミュレーション」などソフトのほうが有用な時代が来たのだろうか。この秋の展示会シーズンが答えを出してくれるだろう。